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#86 【映画】『敵』を観て

長塚京三さんについて


長塚さんといえば、『われら動物家族』1981年11月〜1982年3月に放送された中村雅俊さん主演のドラマに登場した長塚京三さんが私の中で最も古い記憶です。

http://www.tvdrama-db.com/drama_info/p/id-19045

引用元の記載で、長塚さんのことを「ちょいキモ・キャラ」と表現されています。われら動物家族の役は、ちょっと嫌味なキャラだったと記憶していますが、その後、素敵なお父さんキャラになる前は、役柄も微妙で、好印象は持っていませんでした。

ソルボンヌ大学に留学されていたり、JR東海の「そうだ京都へ行こう」キャンペーンCMのナレーションを務められたりと、私も成人し、長塚さんの魅力が徐々にわかってきました。

なぜ『敵』を観たか


YouTubeで偶然、本作品の日本記者クラブでの記者会見の模様を拝見しました。日本記者クラブでは、外国語で挨拶をすることが慣例ということで、と長塚さんがご自身で書かれらフランス語の原稿を読み上げてくださったことで、作品に興味を持ちました。本作品の長塚さんの役柄は、フランス近代演劇史を専門とする元教授です。


奥様亡き後20年、自炊の独り暮らし。預貯金の残高と年金収入から後何年生きれるか、と計算しながら、こだわりを持った生活を重ねつつ、敵の登場に・・・作品のサイトに詳細なストーリーが掲載されているので、こちらもご紹介します。


左利き

お箸やペンは右で持たれていますが、左利きのようです。なんとなく、お箸の扱いがぎこちなく映り気になりました。最初に気づいた時がどの場面か失念しましたが、ところどころ、左手を使われており、左利きの方のようにお見受けしました。私の世代くらいまでは、左利きでもお箸やペンを右で使う様に躾けられている方が多く、長塚さんもそうだったのかも。

食への拘り

最初の自炊メニューは、白米と焼き鮭。素麺を茹でたり、韓国食材のお店で手に入れたキムチを入れた冷麺、牛乳で臭みを取る下処理をしたレバーとねぎまの焼き鳥には焼酎、パスタや肉料理には赤ワイン。品数は多くないものの、毎食、拘りの料理を作って満足そうに食べる姿が印象的です。最後の日に向けた計算をしつつも、美味しいものを食べることに拘るところには、非常に共感。

住居への拘り

受け継いだ家に改修することなく住まい、床掃除はほうき。死後は遠縁の親族に寄贈。ただ、寄贈するだけではなく、どのようにして欲しいかを明瞭に遺言に記載。住居にただ拘る、という以上に、受け継いだものを受け継ぐ、というような生き方への拘りが、住居の面を通しでも伝わってきた。

夫婦関係への拘り


亡霊?幽霊?として登場する亡き夫人。教え子や行きつけのお店で知り合った女子大生との淡い関係を持ちつつも、奥様第一である点も一度決めたら最後まで、という拘り。

人生への拘り

生活保護を頼りにすることを良しとせず、決めた一線以下に値切ってまで講演料収入を求めず、高価ではないものの安売り品でもない拘りの食材で調理した料理を食し、古いけれども大切に手入れをした家で綺麗に体を洗い、太陽の元で干した清潔な衣服を纏い、丁寧過ぎることなく満足のいく暮らしを死の直前まで続ける。私の望む暮らしと似ている様な気がする。


筒井康隆さんの原作で、後半SF的。SF的な作品は好みでない、というよりも、良く分からない。ただ、その点は私にとってどうでも良く、日本映画で、日本が舞台で、登場人物全員日本人であるにも関わらず、フランス映画の様でありながら、日本映画的で、鑑賞後は総会な気分になれた。観て良かった作品。

以上です。



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