詩から描いてみる
「季節」
35×35cm
紙に水彩、インク、鉛筆
北海道余市町出身の詩人 左川ちかの詩から想を得て
描きました。
「季節」
晴れた日
馬は峠の道で煙草を一服吸ひたいと思ひました。
一針づつ雲を縫ひながら
鶯が啼いております。
それは自分に来ないで、自分を去つた幸福のやうに
かなしいひびきでありました。
深い緑の山々が静まりかへつて
行手をさえぎつてゐました。
彼はさびしいので一声たかく嘶きました。
枯草のやうに伸びた鬣が燃え
どこからか同じ叫びがきこえました。
今、馬はそば近く、温いものの気配を感じました。
そして遠い年月が一度に散つてしまふのを見ました。
左川ちか(1911-1936)
詩の再評価が高まり、最近全集や詩集が出版されています。