うちの母
最近、家庭の問題って、やつで母と話すことが多い。
話終えた後、母が、
「まだお父さんと一緒だった頃ね」
離婚する前の話をしだした。
僕が子供の頃、父は商売をやっていたが徐々に資金繰りに困り、母が自分の名義で運転資金を借りようと消費者金融に行った。
母は大学を卒業後、就職したとこに妊娠しても辞めずに産休を取って勤め続けていた。
役職も付いていて、収入も当時の女性の平均よりかなり良い方だったらしい。
収入を証明する書類を提出し相手も「問題ない」と言ったのに提示された金額は希望融資金額の半分。
金額が違うと言うと、
「ああ、お姉さん、女だから」
と、言われたらしい。
『女だと半分なんですか?』
確認すると、
「うん。女はね」
『じゃあ、結構です』
事務所を出ようとすると「金要るんだろ」と、言われたらしいが
『融資条件満たしてるのに性別で融資額を制限するのなら結構です』
そう言って入り口に向かうと、窓口のお姉さんがドアの前に立ち、事務所の奥のドアが勢いよく開いて、いかにもな人が2人出てきて、
「姉さん、あんた、ウチから金は借りられないって、言う気か」
そう凄んできたらしい。
どうしたのか訊いたら、
『はいって、言って帰ってきた』
ドアの前に立つお姉さんに『どいて頂けます?』って、言ったら、すんなり、どいたと。
今も消費者金融。
悪質なとこはやばい人が絡んでいるのかもしれないけど、大昔は完全にヤが付く人のテリトリーだったんだろう。
対応した人は胡散臭いおじさんという感じだったけど、奥から出てきたのは本物っぽい人。とのことだった。
想像だけど、凄んで怯まない相手に粘っても意味がないと思われたのかも。
この話、他人が言ったら半信半疑だけど、うちの母は、
『マジで言ったんだろうな』
そう思わせることを経験してるので細部が異なる点はあっても、この話の大筋に嘘はないだろう。
母が言ったんだろうなと確信を持てる出来事はこれ↓
他にも子供の頃、一緒に花火大会を見に行った母の職場の人から、
「お母さんね、今は少し丸くなったけど昔は横柄な態度をとる役所の人に「公務員がそんなに偉いのか」って、頭からビールかけたことあるのよ」
まだ公務員が一般企業の人間から接待を受けることが許されてた時代に
「俺が許可を出さなかったら、お前らの事業なんて潰れるんだぞ」
と、のたまったある省庁の課長に先の言葉を言って瓶ビールの中身、丸々ぶっかけたと。
やったこともだが“ 今は少し ”という文言も気になった。
そのお役人さんは怒ったのかと思ったら、
「許可は出すから、あの女を俺に近づけないでくれ」
母の上司に電話で言ってきたそうで完全に母にビビって偉そうなことは言わなくなったらしい。
このことから10年近く経った後、その省庁の同じ部署の人に挨拶したら、
「存じ上げております。昔、うちの課長にビールをかけた方ですよね」
その部署で語り継がれる有名人になっていたらしい。
その課長は、部下からも嫌われてたので“ ありがとうございました ”と、お礼を言われたと。
母は強し。
とは、言うけど強すぎるのもな。
母の行動や言動を見てると、ちょくちょく思わされる。