んなアホな
午後、お母さんと一緒にやってきた小学生になったかならないかくらいの姉妹。
お母さんと一緒にイスに座って順番を待っていた。
今日は暇だったし、寝不足もあるのでボンヤリとフロアーを見ていたら、お姉ちゃんが足をパタパタさせながら持っていた本を読み出した。
本は桃太郎。
何となくお姉ちゃんの音読を聞いていたら、
「昔々、おじいさんとおばあさんがいました。
おじいさんは山へ芝刈りに。おばあさんは川へ洗濯にいきました。
おばあさんが洗濯していると、大きな大きな桃がなんでかなぁなんでかなぁと、流れてきました」
聞いた瞬間、吹き出した。
同僚もタイムラグがあったけど、笑ったり堪えてたり。
視界に入っていたお客さんの何人かも「え?」って、感じで、その娘を見て驚いてたり笑っていたり。
お客さんの前だし平静を装うとしたけど、
“ なんで稲川淳二風なの ”
って、思ったら笑いが込み上げてきて無理だった。
下を向いて顔を見せないようしてたけど、電話応対を終えた後輩に叩かれて、
「肩、震えすぎ。こっち笑えないんだから」
タメ口で怒られた。
でも、あんなん堪えるの無理。
後輩も笑ってたし。
女の子も言葉もパンチがあったけど、目を見開いて驚いた表情で我が子を見るお母さんの姿に申し訳ないけど笑ってしまった。
「どんぶらこでしょ。なんでそんなこと言うの」
「おじいちゃんが言ってた」
「パパの?ママの?」
「ママのー」
お母さんの怒りを抑制するような口調に無邪気な子供の声。
「そう。おじいちゃんが言ってても書かれている通りに読まないとダメなの」
絶対、ブチぎれてるよ。この人。としか思えないお母さんの目と口調。
何もかも面白かった。
いつまでも笑っているわけにもいかないので落ち着きを取り戻したけど、そのお客さんのお会計時に後輩が、
「すいません、ユリアンさん、代わってください。私、無理です」
後輩が声を震わせて言ってきた。
その状態じゃ無理だわなとレジを代わったがお母さんは最後まで目は合わせなかった。
おじいちゃんと同居なのか家が近いのか知らないけど自分の親なら、あのお母さん容赦なくブチぎれるだろうな。
今日、日本のどこかで娘にキレられる父親がいる。
でも、同情の余地が無いのでしゃーない。
ジュースが飲みたいです('ω')ノ