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身の丈に合うもの

役員の方が帰り際に

「これ、捨てといてもらっていい?」

そう言って後輩に何かを渡していた。
珍しい光景じゃないので、その横を通り他の同僚と仕事の進捗を確認。
確認を終え席に戻るため振り向くと、後輩がさっきいた場所に立ったまま動かずに下を向いている。

どうかしたのか訊くと、少し呆けた感じで、

「私が知ってるのと0の数が違うんです」

との返答。
意味が分からず訊くと、後輩は役員に渡されたパンフレットを見せてきた。

都内の一等地にあるタワーマンションのパンフレット。
後輩の言葉の意味が分かった。
一番、安い部屋で2億4800万円。6億を超える物件もあった。

「こんな物件が実在するなんて…」
そう思いながら皆でパンフレットに見入った。
建物の設備や間取りに驚いてると一緒に見ていた、いつもの後輩が、

「この部屋、玄関どこですか?」

と、言い出す。
『ここでしょ』と、指差すと「Ent…?」
“ エントランス ”の略と言うと、
「エント…ランス…?」
エントランスというワードを人生で初めて聞きました。な反応。

他の後輩は、

「power roomって、何ですか?トレーニング用の部屋?」
『powder room。化粧室だね』

部屋の表記が英語だったので見間違えていた。
その後輩は他にも“ bed room ”を家族の個室と思っていて子供が多い人向けの物件と思っていたので、部屋の使い方は自由だから趣味の部屋。客間とかに使っても。と、言うと、

「客間って、何ですか?」

との質問。

「お客さんが来た時に通す部屋。応接間と同じ感じかな?のび太君の家の玄関入って、すぐ左の部屋」

そう答えると、エントランスの後輩に

「ドラえもんマニアじゃないと、そんな部屋あること知らないでしょ」

『そこはマニアじゃなくてファンだろ。エントランス初耳のヤツに言われたくないわ』

部屋の意味の説明から脱線して言い合ってると、

「間取り図からでも、あなた達って、ケンカにもっていけるのね」

僕と後輩の会話をいつも“ アホな兄妹の会話 ”と言ってる先輩に待ってました的に楽しそうに言われた。

後輩とのくだりはともかく、

玄関がどこにあるのか分からない。
記載されてる名称を正しく読めないレベルのうちらに億を軽く超える物件は身の丈に合ってないんだなと思った今日この頃。

ジュースが飲みたいです('ω')ノ