父とメロン
北海道に旅行に行った時、朝市でメロンを試食した。
今まで食べたメロンの中で一番、美味しかったので大阪で暮らす父に送ることにした。
でも、メロンは2500円。送料が確か1200円くらい。
2500円のものを送るのに送料1200円はなんかな。と思い、
『2個買うからおまけして』
2個で5000円。送料込みにしてもらった。
1個買えば良いものを2個買ってるので、むしろ損。
お店が得しただけだけど、気持ちの問題。
メロン到着日と翌日が食べ頃になるよう送るので確実に受け取れる日を確認して欲しいとお店の人に言われ、電話したら父と一緒に暮らすお婆ちゃんが出たので都合の良い日を教えてもらい、その日を指定。
お婆ちゃんは「お金、使わんでええ」と言ってたけど、食べて欲しくて送った。
メロン到着日の夜、お婆ちゃんから電話がかかってきた。
「あんたが言うようにほんまに美味しかったわ。ありがとうな」
と。
その翌日、父からも電話がかかってきた。
お婆ちゃんと同じくお礼と
「お婆ちゃんと2人でメロン丸々2個は多いから、小学生の子供がいるお隣さんに1個お裾分けした。さっき、改めてお礼言われてな。親孝行な息子さんですね。と言われたよ」
父の声が嬉しそうだった。
普段、父は感情を表に出さない。
子供の頃、父から見て叔父にあたる人に
「男は感情を表に出すな」
と言われたのを律義に守ってると、お婆ちゃんに昔、教えられた。
そんな父でも人に息子を褒められるのは嬉しいのだろうか。
声だけで父の気持ちが分かったのは初めてだった。
父が感情を表に出したのは高1の時。
いつも同じシャツを着てる父に従姉妹と買い物に行ったついでにバイト代でシャツを何枚か買ってプレゼントした。
シャツを受け取った父は、
「バカだな。お前は。自分が欲しいものがあるからアルバイトしたんだろ?父さんの服に金を使う必要ないんだぞ」
父はそう言いながら、見たことないくらいの満面の笑みだった。
「おいちゃん、めっちゃ笑てるやん。そんな顔で言うたかて説得力無いわ」
従姉妹に突っ込まれ、
「嬉しいんやったら、素直にありがとうって、言えばええのに。あんたも素直やないな」
お婆ちゃんにも笑われながら言われていた。
特に何がどうということはない。
昨晩、友達と話していてメロンが話題に出て思い出した父とメロンの思い出。