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ケンカはハッタリ

19歳の夏、バイトを終え夜中の1時過ぎに自転車で家に帰る途中、後ろから追い抜いてきた自転車に前を塞がれ止められた。ブレーキの音がしたので振り向くと4人。計5人に囲まれた。

『お前、〇〇高か?』

リーダーっぽいのが言ってきた。何で出身校分かるんだろ?と思ったら、うちの高校は自転車の後輪泥はね除けに学校名が入ったシールを貼る決まりがあり卒業しても面倒で剥がしてなかった。それで高校生と思われたみたいだった。卒業していて剥がしてないだけと説明したが全員がニヤニヤしている。

『もしかしてカツアゲ?』

そう訊いてもニヤついてるだけ。普通ならビビるはずなんだけど、この時は全く怖くなかった。
リーダーっぽいのともう1人は見た目が少しゴツイけど、残りの3人が金魚の糞感が強く2人にくっついてるだけに見えたのと前後を塞がれて逃げようがないのが逆に冷静になれた。この時、思ったのは、

・助けを求める
・殴って突破口を開く

でも『助けて』と叫ぶのはアウト。『助けて』は助けを求めるストレートな表現だけど聞いた側は巻き込まれるリスクを恐れて誰も出てこない可能性がある。
『火事だ!』
と叫ぶ方がいい。火事だと他人事では済まなくなるので火元を確認するために外を見るか家から出てくるので助けを求めやすくなる。

もう一つの殴る。ケンカ慣れしてない人は血、特に仲間の血を見るとビビって戦意を失う。金魚の糞感バリバリの3人はケンカ慣れしてない感じが強かったので仲間の誰かが鼻血を出せばビビって動きを封じられるかもしれない。鼻血にワンチャン賭けるかと考えた。

どちらにするべきか考えてたら自転車から降りて目の前にある小さな公園に行くよう言われた。公園に公衆トイレがあったのであそこに押し込まれたら、叫んでも声が届かなくなるので押し込まれる前に叫ぶかと考えながら歩いてたら金魚の糞3人に“ 早く行け ”と、すごまれた。

『そんな怒るなよ』

って、笑いながら返した。もう完全に開き直っていた。
公園に行くと5人が話し出した。離れてるので内容は聞こえない。
ここから、どうするか…。考えてたら金魚の糞の1人と目が合った。
すぐに逸らされた。別の1人とも目が合ったけど、そいつもすぐ逸らした。
5vs1。圧倒的に有利なのにこっちが動じないので勝手に疑心暗鬼に陥っている気がした。

『話すのさ、俺との用事、終わらせてからじゃダメなの?』

一か八か、イラついてる振りをして言った。完全に賭けだった。
“ 黙ってろ ”と言われたが殴りかかってはこなかった。5人とも自転車に跨ったまま睨んでるだけ。話し合いの答えが出たようで戻ってくるよう言われ5人の元へ行くと、

『帰っていい。唾吐いて悪かった』

リーダーに謝られた。全身と自転車を調べ、“ 付いてないから大丈夫 ”と伝え、自転車に乗ると前を塞いでた自転車をどかしてくれたのでお礼を言って、その場をゆっくり離れ、角を曲がった瞬間、全力で立ち漕ぎした。
呼吸困難寸前になるまで全力で漕いだ。
次の日、起きたら太ももとふくらはぎが筋肉痛でパンパンだった。
以後、遅番の帰りはその道を使うのは止めた。

“ ケンカはハッタリ ”
読んでいたマンガにあった言葉。ケンカは腕っぷしより度胸が大事。
それを立証できた。この経験はケンカとはちょっと違うけど。
もう1つ、
“ 恐怖は伝染する ”
これも読んでいたマンガの言葉。
圧倒的に有利なのにこちらが動じないことで疑心暗鬼になり5人は有利な状況を手放した。恐怖が伝染した結果だと思ってる。

この時はたまたま運が良かっただけで予測が外れて相手がケンカ慣れしてたらひどい目に合っていたはず。
けど、この経験から不利な状況の打破に見栄を張るのも必要と学んだ。
十分すぎるほど、学ばせてもらったので2度と同じ経験はしたくない。

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ユリアン
ジュースが飲みたいです('ω')ノ