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クラスメイトとネームプレート
今さらだけど三月。
卒業の時期。
今の子も卒業する先輩や同級生から第二ボタンをもらうって、ことをしているんだろうか?
うちの学校は学ランではなくブレザーだったので、第二ボタンにあたるものはブレザーの左胸に付けていたプラスチック製のネームプレートだった。
同じクラスに二人、イケメンがいて、どっちも下級生からの人気がすごく、ネームプレートどころかブレザー、ズボン、シャツ、上履き、体操着、柔道着と全て“ 予約 ”がされた完売状態。
対して、僕は部活をしてなかったので顔見知りの後輩はいないし、イケメンとは異なる陰キャ。
一度、違うクラスの友達が僕のことをよく自分のクラスで話すので話を聞いた女子がユリアンとは、どんな人間なのかとわざわざ見に来たらしく、
「ユリアン君、見てきた。カッコいいじゃん」
って、言ったことがあるそうだが友達含め男女、皆から
「あんた、どんな目と頭してるの?大丈夫?」
って、その子の間違いを正しといたと言われて、それは正しいと言えば悲しくなるし、間違っていると言うと勘違い野郎となるしで
『へー』
としか、言えなかった。
卒業式の日。
式を終えた後、教室で男友達と話してるとクラスメイトの女子が
「ユリアン、あんた、どうせ後輩から名札下さいとか言われてないんでしょ?可哀そうだからもらってあげる」
そう声を掛けてきた。
『別に憐れんでもらう必要ないよ』
と、言ったけど、
「いいから。いいから。女子に頼まれて名札あげたって、思い出作らせてあげる」
どこまでも上目線な物言い。
でも、ネームプレートをあげるにしてもブレザーにしっかり縫い付けられているものなので簡単には外れない。
ハサミやカッターも持ってない。
だから無理と、言うと、
「大丈夫。ほら」
その娘は小さなハサミを見せてきて、
「動くなよ」
って、言いながら縫い付けてある糸を切りネームプレートを取ると、
「じゃ、もらってあげる。ありがと」
そのまま、女子の輪に戻っていった。
たぶん、それがその娘との中学生活最後の会話だと思う。
ウチの中学と同じようなデザイン・色の制服を見かけて思い出したから書いたけど結局、あれは何だったんだろう。
同じクラスの女子の陰キャへの情けか。
恋的なものか。
あまりにも今さらな話だけど。
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