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荷ほどきと思い出と

引っ越しして3週間は経とうとしているのにまだ荷ほどきが済んでいない。

段ボールに入ったままのバッグの中を確認してたら、あるカードが出てきた。
ディズニーランドのビックサンダーマウンテン横にある200円で10発撃つことができる射的場で射撃後に出てくるスコアカード。

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ディズニーランドの楽しみ方は色々だと思うが僕はディズニーランドに行った時、必ず射的をする。
僕にとって、あの射的場がディズニーランドで最も楽しみな場所。

毎回、5,000円分くらいしている。
スコアカードには画像のように10発中何発命中したか表示されているので、全弾命中していることが表示されたこのカードをキャストに見せるとバッジがもらえる。

このスコアカードを持ち帰り、今回の命中率はどの程度か計算する。
仮に5,000円分プレーすると25回。250発。
毎回、94~96%ほどの命中率だが1度、88%だった時はものすごい落ち込んだ。

当時、付き合っていた彼女には、

「私からすれば、すごい数値なはずなのに落ち込む意味が分からない」

落ち込んでることと、そもそも計算して何が楽しいかも分からないと呆れられた。
こんな楽しみ方をしているのは僕だけだろうけど、僕が楽しいと思えればそれでいい。

このカードを手に入れ、キャストからバッジを受け取り出口を出ると、幼稚園くらいの男の子が大泣きしながら、

「パパのバカ!」

お父さんをディスっていた。
バッジが欲しかったのにお父さんが全弾命中できなかったんだろう。
お姉ちゃんが、

「しょうがないでしょ」

と、弟を叱っていた。

大泣きする男の子に『はい』と、バッジを差し出すと固まった。
知らない大人にいきなり声を掛けられて驚いたんだと思う。
『あげる』
もう一度、声を掛けるとバッジを見てお母さんを見て、またバッジを見てから、バッジを受け取って笑顔になった。

お姉ちゃんにもバッジを差し出した。
お姉ちゃんも固まったが『はい』と、もう一度、差し出すと弟の手前、我慢していたんだと思う。
すごい笑顔になって「ありがとう」と、言われた。

ご両親からもお礼を言われ、お姉ちゃんと弟君に手を振って、その場を離れようとしたら、隣にいた女子高生4人組が「いいなー」と、言うのが聞こえたので、その子たちにもバッジをあげた。

女子高生たちにも手を振って別れ、その場から離れると彼女が、

「今のさ、あの子たちにもあげる必要あった?」

彼女は笑顔から真顔になって、右太もも裏に膝蹴りをしてきた。
腕をつねるとかなら、
『妬いてるの?可愛いなぁ』
で、済むが歩行に支障が出る不意打ちの膝蹴りはそういうのじゃ済まない。

“ 沢山あるから、どうぞ ”って、意味で良かれと思ってしたことが仇になった。

引っ越しの荷物から出てきたディズニーランドのスコアカードは幼い姉弟の笑顔と太ももの痛みの記憶がつまっていた。

物には色々な思い出がつまっている。
忘れた方が良いものまで。


ジュースが飲みたいです('ω')ノ