四谷大塚の通信講座 進学くらぶを徹底解剖
中学受験勉強といえば塾通いが今でも王道ですが、通信教育で突破したという声もちらほら聞こえるようになりました。中学受験塾大手の四谷大塚も、進学くらぶという中学受験に向けた通信講座を出していて、難関校へも合格者を出しています。
ここでは、進学くらぶの特徴から費用までの情報と合格実績、さらには他のサービスとの比較や学習方法まで踏み込んで解説します。
我が家の兄(2022年終了組)は進学くらぶを中心とした自宅学習(細かくは今とちょっとサービス形態が違いますが)で中学受験し、難関校と言われる学校へ合格しました。そのため、経験談から語りたいことも多く、細かな内容や具体的な学習の進め方まで盛りだくさんの内容になっています。
進学くらぶを考えている人はもちろんですが、自宅学習で中学受験ができるのかという問いに対するカラクリも見えてくると思うので、ぜひご覧いただければと思います。(一部、広く公開したくない部分は有料とさせていただいています)
進学くらぶとは
進学くらぶとは、中学受験塾大手の四谷大塚が手がける通信講座です。次の2つのコースがあります。
学力向上コースの方は高校受験に向けて小学校+αの勉強をするコースとなっていて、中学受験コースとは別のカリキュラムで、別の動画授業・教材(PDFのプリント教材)、そして月1回の学力テストを受けるというものです。
このサイトでは中学受験を題材しているので、"進学くらぶ=中学受験コース"としてこの先は記事を進めていきます。
進学くらぶ(中学受験コース)の最大の特徴は、四谷大塚システム*1の塾と同じテキスト、同じカリキュラムで学習を進めることができるという点です。塾の授業が動画授業に変わり、テストを塾で受ける代わりに自宅で受ける、というかたちで、同一内容のまま学習の場が塾から自宅になったものとイメージするのが最もわかりやすいと思います。
進学くらぶの特徴
四谷大塚Webサイトに掲載されているポイントは9点ありますが、(主観で)特に着目したい点について取り上げます。
1. 予習シリーズ
中学受験のバイブルと言われることもあり、四谷大塚カリキュラムの中心となる予習シリーズですが、進学くらぶのメインテキストもこの教材となります。
2021〜2023年で改訂が行われやや難しくなったという評判もあり、中堅校の場合は取捨選択が必要な可能性もありますが、学習の中心として間違いのないテキストであると言えるでしょう。
2. 一週間単位の学習システム
他の通信教育との最大の違いはここかと思いますが、月単位ではなく週単位で学習カリキュラムが進捗します。キーになるのは単元学習の確認テストとなる週テストで、ここに向けて一週間の学習が進んでいくイメージになります。
予習シリーズは誰でも購入できるし市販本も多数あるので、別に塾のカリキュラムに乗らずとも中学受験を進めることも理屈上は可能ですが、こうして一週間で学習単位を区切って勉強しなければいけない状況に追い込むというのが、塾システムのある意味キモになる部分です。
進学くらぶは自宅学習でありながらこうした塾のシステムをそのまま利用できるので、塾生と同じような学習サイクルを作っていくことが可能となります。逆に言えば、自宅学習だからといって決して塾よりユルいわけではない(緩めれば成績もそれなりに落ちていく)ので、負担量が少ないわけではないという点には注意が必要かもしれません。
3. 予習ナビ
四谷大塚講師陣の動画授業をPCやタブレットで受講できます。ライブ配信ではなくいわゆる動画配信なので、巻き戻したり1.5倍速で見たりと、進度に合わせて調整ができます。
組分けテストの成績によるクラス分けで配信される動画が変わります。残念ながら数年前のように配信動画クラスを自分で選ぶことはできなくなりました。
動作環境はスマホ・タブレットは大体大丈夫そうですが、PCはMacに対応していないのでご注意を。詳細はこちら。
▶︎パソコン推奨環境
▶︎タブレット推奨環境
4. 週テスト
毎週の学習進捗を確認するテストです。一週間単位で学習を進めるためのペースメーカーとして利用できます。
月1回(5週に1回)の組分けテストで在籍コース(上からS→C→B→A)が決まり、その在籍コースごとに分けられた難易度別のテスト問題を解くことになります。(組分けテストは全員同一問題)
問題用紙・解答用紙は会員サイトからダウンロードして印刷し、テスト受験後は答案をPDFスキャンしてアップロードするという流れになります。そのため、プリンタや複合機を家庭に準備しておくことはほぼ必須になるかと思います。
問題配信の翌日(日曜日)14時までに答案送信すると、月曜正午に採点答案がWebで返却されます。成績管理への反映は全体の集計が終わり次第順次、ということになっています。
ちなみに公開組分けテストは、自宅受験のほかに会場受験を希望することもできます。会場の定員を超えた場合は自宅受験になることもありますが、組分けテストは会場受験にして周りから刺激を受ける、というやり方もできるということですね。
5. 復習ナビ
週テスト問題の解説授業動画です。週テストで間違えた問題の中で、重要な問題から順番におすすめされて解説授業を見ることができ、さらに問題演習画面で演習することもできるようになっています。ちなみに重要な問題とは正答率が高かった問題とのことです。
その他
その他、以下の特徴が挙げられています。(個人的にはあまり重視しなかったのでまとめて取り上げます)
6.高速基礎マスター:語彙力や計算力などをPC・タブレット等で鍛えるコンテンツです。アプリ形式が合う子は効果的に進められるかもしれません。
7.父母教室:学習のポイントについての親向け解説動画です。
8.成績管理:個人成績表・成績グラフなどをWebページを通して閲覧できます。
受講料
入会金:11,000円
*兄弟姉妹が進学くらぶ・リトルくらぶに在籍している場合のみ不要。再入会時は必要。
高速基礎マスター利用料:18,700円
*新規入会者は一度だけ支払いが必要。再入会時は不要。
受講料:
受講料に含まれているもの:
週テスト費用
以下の公開テスト費用
・新小学4年生…志望校判定テスト×1回・組分けテスト×9回・講習会判定テスト×4回
・新小学5年生…志望校判定テスト×2回・組分けテスト×9回・講習会判定テスト×4回
・新小学6年生…合不合判定テスト×6回・組分けテスト×4回・講習会判定テスト×3回予習ナビ(IT授業)
季節講習(春期講習・夏期講習・冬期講習のテキストとIT授業)
受講料に含まれていないもの:
教材費(予習シリーズをWebで購入、目安は半期で2〜3万円程度)
3年間トータルの費用
4〜6年生の3年間トータルでかかる費用は、562,980円+教材費となります。教材費は何を買うかで若干変わってきますが、多めに見積もっても総額で70万円程度でしょう。
これを通塾パターンとを比べたいところですがさすがにちょっとイヤラシイので、同様のグラフを出している塾比較の記事で見比べていただければと思います。ケタが違うのが一目瞭然です。
進学くらぶには各種公開テストと季節講習などが全て含まれているというのも大きいですね。実際にかかる費用の総額がこれ、ということになるので、比較対象が塾であればかなりのコスト競争力じゃないかと感じます。
合格実績
いくら費用が安いと言ったところで、そこに結果が付いてこなければ仕方がない、というところで合格実績を見てみます。
2023年から進学くらぶ単独での実績を開示しはじめたので、四谷大塚としても力を入れていこうとしているのかもしれません。
こういう合格実績はのべ人数で重複があるので、重複合格の発生しない2月1日校に絞ってリストにしてみると次の通りです。
ということで、少なくとも2023年は19人、2024年は14人の合格者は存在しているということになりますね。もちろん大手塾の数字からすれば1ケタも2ケタも違う数字ではありますが、難関校への合格ルートがあって、実際20名近い生徒が合格している、というところでは意味のある数字じゃないかと思います。
本当に進学くらぶだけで合格できた人の数字か?と言われれば、志望校別コースだけ塾に通っていたとかで他塾と重複している人ももちろんいるとは思いますが、進学くらぶは他のサービスと違って1科目単位での受講はできないので、単発受講ではなく学習のメインが進学くらぶだった、という可能性は高いと思います。
進学くらぶで中学受験するということ
次はもう一歩踏み込んで、他のサービスとの比較や具体的な学習スケジュールなどを解説していきます。
ここまでの内容で進学くらぶがどういうものかは見えてきたかと思いますが、一方で、本当に通信講座で中学受験までいけるのか、というところに疑問符を持つ人も多いと思います。巷の本では版で押したように"中学受験では塾が必須"と書かれていますし、合格実績を見ても塾通いがメジャーの様子だったり、以下の記事のように塾なしというのが驚きを持って受け取られるのが今の現実ではあります。
まあこういうところで取り上げられる人というのは本当にスゴい人(家庭)なんで、参考にすべき点は多々あっても、そのままを取り入れようとしても上手くいくかは未知数だと思います。
ということでここからは、価格面以外でのメリットやデメリット、我が家的取り入れ方、注意点などを、主観をたっぷり込めてお届けしようと思います。
メリットとデメリット
先に見てきた通り、進学くらぶは塾の内容そのままを自宅に持ち込んだもの、とまとめることができます。塾と通信講座の中間に位置するようなイメージです。なので、比較対象は塾にもなり、通信講座にもなります。
塾と比較した長所
時間や学習の自由度が高い
早寝早起きの習慣化や睡眠時間の確保が可
習い事をやめずに続けられる可能性がある
一律に出される宿題ではなく子供に合わせた調整も可
人間関係で悩まされる心配がない
勉強時間は同じとしたときに、塾に対するメリットを挙げるとすればこんな感じかと思います。
自由度が高いとは言っても、やるべき目標・課題は週単位で設定されているので、それをペースメーカーとして学習サイクルを作っていくことになります。塾通いの場合でも家庭学習は必須で、一週間の学習サイクルを作らないと伸びないという点では同じなので、塾からの指示がないという違いだけで、学習の中身はそれほど変わらないとは言えるでしょう。
そういう意味では、塾で学習サイクルが回らないからという理由で進学くらぶに変えても、結果は大して変わらないかもしれません。むしろ勉強量を調整する(減らす)と、その分だけ成績が下がる可能性の方が高い気もします。それよりは、塾で何とか一度学習サイクルを作ってから、より効率的にするために積極的に進学くらぶを選ぶという方が上手くいくのかなと思います。
あと、習い事をやめずに中学受験できるとは言っても、3つも4つも掛け持ちできるようなレベル感ではないでしょう。週1日や2日、塾だと時間が合わないけど自宅学習なら時間調整できる、といった程度で考えた方が良さそうです。学力は勉強時間に比例すると考えれば、塾でも自宅学習でも必要な勉強時間は変わらないはずです。
2点目は塾の長所の裏返しですが、塾では周囲の刺激を受けて頑張れるというメリットがある反面、激しい競争環境に疲弊してリタイアという話も少なくない頻度で聞きます。そのほか、成績や在籍クラスでのマウントやいじめによって精神的にやられてしまうといった類の話も聞きます。塾で上手く競争環境に乗れればそれで良いですが、そうでなかった場合の逃げ道として、意外に侮れないポイントではないかと思います。
続いてデメリットですが、これは概ねメリットの裏返しですね。
塾と比較した短所
親の負荷が高い
親が子供の生活時間をコントロールする必要がある
親が内容や量をある程度把握しコントロールする必要がある
受験情報は親が自ら集めてくる必要がある
周囲からの刺激が少ない
明確な目標やモチベーションがないとダレる可能性がある
自由度があるということは、裏を返せば自分で決めなければいけないということです。まあメリットのところでも書いた通り、学習内容をイチから全部決めなければいけないわけではないですが、生活リズムや学習サイクルを作るところは最低限の親の役割になるでしょう。
また、塾に行かせていれば親はその間自分の時間を手に入れられますが、子供が自宅にいるならばそんなに気を抜いてもいられないということになります。共働き家庭で家に親がいない場合、子供一人で本当に勉強できるのか、という問題もあると思います(Webカメラで会社等から見られるようにするという話も聞いたことがあります)。
この辺りは2点目にも絡んできますが、子供の性格(真面目さや素直さ?)やモチベーションによってだいぶ変わってくるところかと思います。中学受験をしたいという強い意志や、この学校に行きたいという目標があることは必須でしょうね。
本人のモチベーションが低い場合、親の焦りとの間での軋轢が大きくなり、親子関係に重大な影響を及ぼすことになるかもしれません。外部の人間関係に悩まされない代わりに親子関係で悩まされる、という可能性は大いにあるので、親子の関わり方は一番気にするべき点かと思います。
他の通信講座と比較した長所と短所
他社の通信教材(Z会や進研ゼミなどの中学受験講を想定)と比較すると次のような点が見えてきます。
塾と同じカリキュラムであるため、学習内容や進度についての不安感が少ない
一週間単位で単元が進むため学習サイクルが作りやすい
塾と同じことをやっていて塾生を含めた立ち位置もわかる、それによる安心感というのが最大のメリットかと思います。組分けテストの母集団には四谷大塚直営校だけでなく早稲田アカデミー生もいるので、中学受験生の大きな母集団の中でやれているというのは不安を緩和する大きな要因になるでしょう。
また、単元学習が月単位でなく週単位というのは、そのサイクルに乗ること自体が大変という面はありますが、乗せることさえできれば余計なことを考えなくてよいので楽、ということが言えます。
一方、デメリットは次の通りです。
部分的な受講は想定せず、あくまで学習のメインとして利用することが前提
一週間単位で進むため学習遅れのリカバリが難しい
1点目はデメリットと言えるのかは微妙ですが、基本的には塾の代わりに利用するもの、進学くらぶを中心に中学受験を進めるためのものだということです。他の通信教材は1科目だけ・苦手単元だけといったかたちで、塾にプラスアルファで受講することができるようになっていますが、進学くらぶではそういう受講の仕方は想定されていません。(まあ金銭的に余裕があれば全受講して一部だけやるとかも別にできるといえばできますが)
2点目の方が基本的にデメリットと言えますが、一般的な通信教育の一ヶ月サイクルに比べるとスケジュールに余裕はなく、苦手な単元で時間がかかったり風邪で休んだりということがあっても、週テストは待ってくれず翌週にはすぐ次の単元が始まってしまいます。下手をするとそこからズルズルと苦手分野が拡大して低迷していくという可能性も無きにしもあらずです(これは塾でも同じことが言えますが)。一般的な通信教育ではもう少し余裕があり時間の融通が効くと考えられます。
この部分は、組分け週に何とか取り返すか、遅くともカリキュラムの止まる長期休暇でリカバリすることなどを考える必要がありますね。それこそ、そこだけ他のサービスで補完するというのもありでしょうし、考え方としてはやはり塾に通っているのと同様だということになるでしょう。
具体的な学習の進め方
我が家で具体的に進めることを妄想してみます。ちなみに、通信だからといってゆる受験ではなく、難関校を目指すガチ受験を想定します。
必要最低限の機材
最低限、必要と思われる機材は次のものでしょう。
動画視聴用タブレット(iPad)
複合機(プリンタ&スキャナ)
。複合機についてはこちらでポイントをまとめているので、必要があればご覧ください。
テキストはどこまで買うべきか
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