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愛(め)でる力

ここ長野にもようやく春がやってきました。
東京は新緑の初夏の気候だと思いますが、寒い長野は桜はだいたいGW前の今頃くらい。今年は少し早めです。

春の日差しがうららかな良いお天気だったので、たまには散歩するか!とちょっと散策しました。
ピクニックマットを敷いてすぐ寝ころびたいような気持ちよさ!

大きく背伸びと深呼吸して、太陽に向かって元気に咲く水仙と優しいピンク色の桜越しに見える遠くの北アルプスをぼーっと眺めていました。
家からほんとに一歩でるだけでこんな景色が拝めるなんて!
これからはもうちょっとまめに散歩しよ~っと思いながら、
iphoneで写真を撮りました。


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少し前から写真を撮るときに意識していることがあります。

それは、すぐ撮らずにワンクッション置くこと。

なぜかというと、だんだんと感じる力がなくなっている(いく)んだろうなーと自分なりに感じているからです。

そう思うようになったきっかけがあります。

もう7、8年前くらいかな。
京都で「アートアクアリウム」という展示会に行きました。

色々な大きさの水槽の中に色とりどりの金魚が泳いでいて、それを豪華なライティングや装飾で展示するその名の通りのアートな水族館。
ちょうどメディアで注目され始めたところで会場はかなり混んでいましたが、たまたま観光にいった時にやっていたのでのぞいてみました。

ライティングを使うので中は真っ暗。
その暗闇の中をキラキラゆらゆら~と金魚が美しく舞って、時を忘れるような幻想的な空間でした。

その時は夫といたのですが、私は美しさにテンションが上がって写真撮りまくり。(中はカメラのフラッシュはNGですが撮影はOK)
夢中になってふと気づくと夫がいない。

見渡すと、会場から少し離れたところで退屈そうにしてました。

「ちょっとちょっと!もう終わりなん?」というと、
「いや、自分全然実物見てないやん。てかみんな写真しかとってへんし、何しに来たん?(こんなに日本語しゃべれないのでかなり意訳してますw)」

その言葉にハッとして、ふとさっきまで自分がいた会場を見ました。

我先に写真を撮ろうとする人、
周りの迷惑を考えず場所取りする人、
我が子と金魚のベストショットをおさめるためにイライラしながら人が切れるタイミングを待っているお母さん、

みんな金魚に必死にカメラを向けて誰も自分の目で見ていません。
ついさっきまで私もその中の1人だったわけですが、その光景にぞっとしました。
私はここに何しに来たの?写真を撮りに来たの?

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「2度とないこの瞬間をカメラに残しておきたい!」
とは誰もが思うことです。

写真って何十年前のものでも、見ればその時の感情や出来事がぶわ~っと鮮やかに蘇りますよね。私はその瞬間が好きです。
私にももう会えない人とつなげてくれる宝物の写真がたくさんあります。
写真って本当にいいものだと思います。

だけど写真の素晴らしさは、
それは感じる力があってこそなのではないかなとも思います。
「あの時楽しかったな、きれいだったな、こう思った、感じた」など、
あの瞬間を彩る様々な感情・思考があるから宝物に思えるんじゃないでしょうか。
そうでないと写真がただの記録、日記になってしまう気がするんです。

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話が変わりますが、
私はあの登場人物の判別がほぼ不可能なことで有名な漫画
「あさきゆめみし」
が大好きなんですが、あの物語に出てくる人たちは日々愛でることしかしていませんw

女性を愛でる、自然を愛でる、衣装を愛でる、なんでも愛でる!

あの時代は娯楽がないので、それらを歌に詠んで楽しむという雅な世界✨
恋の駆け引きも当然歌、恋文です。
あの時代、男女が気軽に会う自由はなかったので、顔を合わせない文通期間が長く、なので歌が上手いというのは重要なモテ要素だったんですね。

昔の人々はこういった何気ない日常の中で、人の心や自然の機微を感じ取り、それを歌にして感受性を磨いてきたのだと思います。
物質的な豊かさのある現代の私たちよりも、当時の人々はずっと心が豊かだったんでしょうね。


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それから長い月日を経た現代でも
私たちがお花見やお月見、紅葉狩りなどを大切にしているのは、そういった昔の「愛でるDNA?」みたいなものが受け継がれているからかなーと思ったりします。

今はスマホのおかげで人と会わずに簡単にコミュニケーションがとれるし、カメラの性能も上がって誰でも簡単にプロ並みの写真が撮れるようになりました。

簡単便利になった現代だからこそそれに依存しすぎず、
先人から引き継がれた感じる力がさび付かないよう大事にしたいな、と桜を見ながら思う今日この頃でした🌸

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