児童労働撲滅に向けたネスプレッソの行動計画

元記事:Nespresso Releases Plan to Combat Child Labor Found in its Supply Chain - Daily Coffee News [Nick Brown | April 7, 2020]

今年の3月、イギリスのテレビ放送・チャンネル4は「Dispatches」リポートの中で、ネスレの子会社・ネスプレッソ社はその地域でコーヒーを調達している374の農園のうち3つの農園で、児童労働の国際基準とネスプレッソ独自のAAA持続可能認証プログラムの両方に違反していると指摘した(スターバックスコーヒーも同様に指摘されている)。

このリポートはアメリカとヨーロッパで大々的に報道されたが、これらのほとんどは「コーヒーの商業的な栽培と流通が行われている限り、児童労働や強制労働はコーヒーのサプライチェーンを通じてどこででも行われている」ということには触れていなかった。

これを受けて、ネスプレッソ社はグアテマラのフライハネスFraijanes地域における児童労働の実態調査の結果を発表し、コーヒーのサプライチェーンにおける児童労働への「ゼロ・トレランス」(=撲滅)へ向けた6段階の行動計画を策定した。
具体的な内容は以下の通りだ。

・グアテマラにおけるネスプレッソ社農学者の数を倍増
・収穫期間に備えて専任のソーシャルワーカーの雇用
・抜き打ちの農園訪問・チェック
・コーヒーピッカーへの待遇に関する情報収集の徹底
・コーヒー農園に「チャイルドフレンドリー」子どもに優しいスペースを作るプロジェクトの試験開始
・教育機会の提供、アウトリーチの強化
・労働問題を報告するためのホットラインの設置

ネスプレッソ社のCEO、Guillaume Le Cunff は計画発表の場で「子供たちを搾取から守ることは私たちにとって最重要だ。これは経済的・社会的・文化的な要因が複雑に絡み合って起こる問題で、単純な解決方法は存在しない。コーヒーの生産コミュニティと手を取り合い、調査するだけでなく、具体的に対応するための迅速な行動を続けている」と述べた。

ネスプレッソ社は労働基準違反を指摘された3つの農園からの購入を「状況が解決」し、国際労働機関(ILO)の児童保護要件に準拠していることを証明できるまで一時的に停止することを決定した。

もちろん児童労働問題の「解決」というのは不明瞭な概念だ。違法・非人道的な児童労働の排除を進めていくことはできるが、旧植民地を利用した富の搾取構造はコーヒーの世界的な取引において当たり前のようになっており、季節労働者とコーヒーピッカーの仕事を求める移民などが最も脆弱な集団を形成しているコーヒーサプライチェーンでは、リスクと極度の貧困はすみずみまで広がっている。

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最近はコロナウイルス関連の話題ばかりだったので少し軽い話題を…と記事を探していたのですが結果あまり軽くない話題に着地していました(?)

日本では、子供ながらにせっせとお手伝いしたり、働く姿を美談のように語りがちですが、本質的に重要なのは「子供には教育を受ける権利や経済的搾取を含むあらゆる搾取や暴力・虐待から保護される権利がある」ということで、これは有名な「子どもの権利条約」にて基本的人権として定義されています(Wikipediaの内容が充実していて面白かったのでリンク貼っておきます。あくまでも参考までに→児童労働

特に小規模の家族経営のコーヒー農園であれば、子供が小さい頃から仕事を手伝う、というのもありふれたことのような気がしてしまいます。遊びの延長とも言えるのでしょうか。もともと何世代も続いている農園であれば「大きくなったら農園を継いでもらって…」という考えになることも、一般的なんだろうと思います。そして今までは、それでなんとか続いてきたんだと思います。

前の職場にいたとき、「コロンビアでコーヒー農園が後継者不足で困っている。最近の若い世代は収入の安定しないコーヒー農家を継ぐより、都会に行って大学を出て、高い収入を得られる仕事に就きたがる」という話を聞いて、驚くとともに自分の無知を恥じた記憶があります。このあたりは国の教育予算、経済発展の度合い、政治情勢、など様々な要因が合わさっているのではっきりと断言することは難しいのですが、スペシャルティコーヒーが少しずつ市場を広げているとはいえ、まずは「コーヒー業界は旧植民地国からの搾取ありきで成り立っていることを自覚した上で、その構造を変革していかないとヤバい」というのをまずはきちんと周知していかないといけないなと思いこの記事を選んだ次第です。

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今回の記事を訳すにあたって意訳を多く含めました。原文のニュアンスから外れてしまった可能性もありますが、文章の読みやすさ、意味の通りを優先して記載しました。

junko