グアテマラ、国際コーヒー協定からの脱退を表明

元記事:Guatemala to Exit the International Coffee Agreement - Daily Coffee News [Nick Brown | July 7, 2020]


コーヒー価格危機が続く中、より公平なコーヒー貿易を促進し世界中の小規模農家を支援するという目的のもと、グアテマラ政府は2007年から加盟していた国際コーヒー協定からの脱退を正式に開始した。
この脱退により、グアテマラはこの協定に加盟していない唯一の主要なコーヒー生産国となる。 


90日の準備期間ののち、9月30日に正式な脱退の成立となるが、この脱退は協定の管理者である国際コーヒー機関( ICO、International Coffee Organization )の管理予算にも影響する。 ICO の予算は公表されていないが、年間のコーヒー取引量に基づく輸出入加盟国からの拠出金で賄われている。2019年のグアテマラは世界第10位のコーヒー生産量で、中米ではニカラグアに次ぐ2番目の生産国だった。国際コーヒー協定の1963年創立メンバーでもあるアメリカ合衆国が、トランプ政権の「自国第一主義」の影響により2018年に突如脱退した際、ICO は予算的に大打撃を受けた。興味深いことにアメリカはグアテマラコーヒーの最大の輸入国であるにも関わらず、グアテマラのコーヒーセクター、さらにコーヒーに収入を依存する何千もの小規模農家の生活を脅かす価格危機に、恥ずかしくも加担しているのである。


この記事を書いている時点で、商品市場でのアラビカコーヒー先物取引の基準価格(いわゆる「Cプライス」)は 1 ポンドあたり 1.000 米ドルという低価格である。 グアテマラのコーヒーは品質面で高い評価を得ているにもかかわらず、米国農務省 USDA の海外農業局における2020年のグアテマラコーヒー部門報告書によると、多くの小規模農家が赤字経営を続けているという。 

報告書は「グアテマラコーヒーの品質の高さは広く知られており、60kg 袋あたりの国際基準価格に対して平均30ドルのプレミアム価格を得ているものの、生産コストをカバーする分には足りていない」と記し、さらにグアテマラのコーヒー農家のうち96.8%が小規模農家だと推定されると付け加えた。

グアテマラコーヒー協会アナカフェ Anacafe の高官代表は先週ロイターに対し、現在進行中の価格危機において保障が不足していることが国際協定からの脱退の理由だと語った一方、Daily Coffee News が入手した脱退書簡(グアテマラのペドロ・ブロロ・ビラ外相が ICO に送ったもの)には脱退要請の理由は明記されていなかった。 


国際コーヒー協定は当初、世界のコーヒー市場の安定化を目的とした輸出割当規制を課していたが、1989 年に交渉が決裂し、その後米国が脱退したことで崩壊した。それ以来、自由市場時代において市場データや分析を収集して普及させ、政策決定に利用するために存在してきた。ICO は、伝統的なコーヒー生産国と輸出国、消費国と輸入国の両方が加盟している唯一の国際的な政府間組織であり、フォーラムの開催や定期的な価格データの収集・報告に加え、最近では、世界的な景気後退の影響、価格変動、各国代表者を対象としたセンチメント分析(注釈:心理状態を知るためのアンケート調査)など、コロナウイルスのパンデミックが世界中のコーヒー生産者に与える影響のレポートを発表している。

----------------------------------------------------------------------------


前回の記事でグアテマラのコーヒー農家が移住を強いられている…という記事を紹介しましたが、今回はグアテマラが国際コーヒー協定からの脱退を決めた…という内容です。

そもそも国際コーヒー協定というのは、かつて大規模生産→価格の暴落を何度も繰り返してきたという背景と、それを回避するための需要・供給の安定化を目的としてできた歴史があります。数年ごとに協定の内容は刷新され、近年ではその内容に生産者の支援、国際貿易の透明化、持続可能なコーヒー産業の発展も盛り込まれるようになっています。

今回グアテマラがこの協定から抜けたということは、この数年周期に改定される協定がコロナウイルスのパンデミックのような不測の事態に対応しきれておらず、また恐らく小規模農家の多いグアテマラのような生産環境ではブラジルなどの大規模な生産を行う国と比較してうまみを得られる機会が少ないからなのではないか、と推測しました(すみません、国際コーヒー協定の全文を読んでいないので、具体的に加盟国間でどのようなメリット・デメリットがあるのかを理解しきれているわけではありません)。今後どのような変化が起こるかは実際に時が過ぎてみないと分からない部分も多くあると思うので、注意深く情報を追っていきたいと思います。


----------------------------------------------------------------------------

ところで、皆さんは「Standart Japan」というコーヒーマガジンをご存知でしょうか?スペシャルティコーヒーの店などで売っている所を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。コーヒーやコーヒー業界の情報をその周辺含めて幅広く紹介するとても興味深い雑誌です。コーヒーのプロ、またプロを志している方なら読んでおいて損はないと思います。

その Standart Japan が毎週日曜日にコーヒーの情報を扱うメールマガジンを初めたようです。早速受信したメールマガジンを読みましたが、最近のコーヒーのニュースをはじめ、バリスタのおすすめレシピ、おすすめの本や音楽の紹介など面白かったのでこのページでも紹介しておこうかなと思いダイレクトマーケティングしてみました(回し者ではないです)。無料ですのでぜひ登録して読んでみて下さい。

junko