【COVID-19】この数十年で最も過酷なコロンビアのコーヒー収穫期・後編

元記事:COVID-19 and the Most Complex Colombian Coffee Harvest in Decades - Daily Coffee News [Jennifer Poole | May 6, 2020]

注釈・昨日投稿した前編の続きです。

・スペシャルティコーヒーの今後
・価格の上昇はいつまで続くか?

・スペシャルティコーヒーの今後

他のコーヒー生産国と同様、ここ数年コロンビアのコーヒー農園は様々なスペシャルティ品種を栽培してきた。スペシャルティコーヒー市場の成長の下、収入の増加、価格の安定につながると考えたからだ。

今年の2月、コロンビア政府はコーヒー価格安定化基金を設立した。何千もの生産者がスペシャルティグレードのコーヒーを生産できるように投資するという目的だったが、このままコーヒーの価格が高値で推移する場合、スペシャルティコーヒーへの切り替えを考えていた生産者はそれを断念したり、スペシャルティコーヒーを生産していた生産者がコマーシャルコーヒーの生産に戻る可能性がある。収穫状況や先が見えない中で、売れるかも、いくらになるかもわからないスペシャルティコーヒーを生産するより、コマーシャルコーヒーとして政府の定めた金額で売るほうがはるかにリスクが少ないからだ。

スペシャルティコーヒーの生産者がもしコマーシャルコーヒーの生産に切り替えれば、サプライチェーンには即座に影響が及ぶだろう。アンティオキアのラ・シエラにある Proyecto Renacer のオーナー Cristian Raigosa は、「これはいくつかの契約解除につながりうる。特に生産者に契約の前払い金を払っていなかったり、生産者と十分な信頼関係のない小規模の輸入業者への供給に深刻な影響が出るだろう」と指摘した。

コロンビアのコーヒー業界にとって、コマーシャルグレードからスペシャルティグレードへの切り替えを進める生産者の割合が低下・逆転することは大きな打撃となる。
大多数の消費者の嗜好が低品質から高品質のコーヒーへと逆転する兆候はなく、生産者は短・中期的な利益のために長期的な経済的安定を捨てる可能性がある。スペシャルティコーヒーの長期的な供給減少は間違いなく、消費者は価格の上昇でそれを実感することになるだろう。

(注釈・ここでいうコマーシャルコーヒーとは、ロブスタ種のことだと考えられます。過去にコロンビアは気候変動に対応するためにロブスタ種の栽培を進めているというニュースがありました)

・価格の上昇はいつまで続くか?

生産者にとっては不運だが、ここ最近の価格上昇は必ずしも利益の上昇にはつながらない。価格上昇で増えたマージンは労働者に高い賃金を払うために使われるべきだが、人員不足による労働力の減少で必然的に収穫量は減り、チェリーは木に残されたまま腐っていくだろう。

この価格上昇がいつまで続くかというのはまた別の問題だ。伝統的に、収穫が始まると市場に供給があふれ始め、価格は下降しはじめる。多くの大規模生産者はこの価格がすぐに元通りになることを期待するが、このような状況では危険な賭けだ。3月上旬にコロンビアペソが価値を20%下落させたときは、原油価格の暴落が原因の一つだった。原油価格はすぐに回復するとは限らないため、コロンビアペソは長期的な価値低下が続くと考えられ、バイヤーのコロンビアコーヒーへの購買意欲を刺激するだろう。

しかし基本的に、需要と供給のバランスは今後しばらく売り手側に傾く可能性がある。パニック買いは落ち着いたものの、世界中で今年の収穫量が去年より縮小することは確実だ。多くのカフェが閉店したり営業を制限される中、小売部門の3月末のデータによると、スーパーマーケットでのコーヒーの売上は消費の遅れを補っている。今後、経済的な苦境がサプライチェーンに与える影響は不透明である。チャンピオン・ロジスティクスの Fernando Castro は「航空会社を含め多くの物流企業が倒産・廃業し、この危機を乗り越えるために提携や合併を迫られる企業が多く出てくるだろう」と述べた。

コロンビア、アンデスの山頂や高原に何千と点在するコーヒー生産者たちにとって、価格の上昇は少なくとも彼らが置かれていた重圧の一部を緩和した。もし2020年を通じて高い需要が続き価格が現在の水準に留まれば、パワーバランスは数十年ぶりに彼ら生産者の方にシフトすることになるだろう。

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今回の記事を訳すにあたって意訳を多く含めました。原文のニュアンス・意図からは少し外れてしまった可能性もありますが、文章の読みやすさ、意味の通りを優先して記載しました。

この記事はコロンビアのスペシャルティコーヒーサプライヤー Those Coffee People の共同創立者である Jennifer Poole 氏によって書かれました。この表現や見解は全て筆者のものであり、Daily Coffee News や私自身の意見や意思を必ずしも代弁するものではありません。

junko