国際コーヒー機関(ICO)の予測2:コーヒー価格の変動率上昇へ警告

元記事:ICO Warns of Increased Coffee Price Volatility as Coronavirus Unfolds - Daily Coffee News [Nick Brown | May 20, 2020]


国際コーヒー機関(ICO)は先日、新型コロナウイルスが「需要と供給双方において前代未聞の衝撃」を与えていると述べ、 COVID-19 パンデミックがコーヒーセクターに与える影響を取りまとめた論文「コーヒーブレイク」シリーズの第二弾「変動する価格:COVID-19 パンデミックと市場原理」をアメリカ・ワシントン D.C. の国際食糧政策研究所(IFPRI)との連名で発表した。


世界的な景気後退がコーヒーの需要に与える影響をまとめた第一弾の「コーヒーブレイク」レポート(注釈:翻訳した記事はこちら)に続き、第二弾のレポートにおいても高級アラビカ種のコーヒー市場がCOVID-19 パンデミックによる消費の冷え込みと、生産者の品質の高いコーヒーを生産する能力の弱まりによってマイナス面の影響を受ける可能性があることを示唆している。
このレポートは、ICOが独自に作成したアラビカ種・カネフォラ(ロブスタ)種の商品市場価格に関するデータを元に作成され、比較的安定している他の様々な主食(穀物など)とは対象的に、コーヒー市場の価格の変動率はCOVID-19パンデミックにより悪化しているとまとめている。さらにコーヒーチェーン全体の関係者がそれぞれの時期に需要や供給の様々な影響を受け、特に影響を受けやすい人々(通常小規模農家とその労働者)が貧困や食糧不安の影響を受けることから、このような変動は今後も続くと見ている。


レポートの著者は「最終的な影響は、需要・供給における複数の要因の相互作用、これらにどう業界関係者が予測し反応するか、そして労働需要がピークに達する収穫期において各国のウイルス検出・封じ込め能力がどの程度かによって変わるだろう」と記した。

ウイルス拡散の防止目的で輸出倉庫や港が規制を敷くことで起こるコーヒー出荷の遅れなど「バリューチェーン下流」における影響は世界のコーヒーセクターの一部で既に出始めており、それはレポートの中でも指摘されているが、そのさらに「上流」つまり農園レベルでの影響も出始めている。


最近では、特にブラジルやコロンビアにおいてCOVID-19の影響が収穫期・出荷期と重なっており、多くのコーヒー生産者やバイヤーがすでに影響を感じ始めているという情報筋からの話も出ている。ICOレポートの著者が認識する影響の一部には、季節労働者、移民労働者へのコーヒー農園へのアクセス、ソーシャルディスタンスに関連する(注釈:「密」を避けるための)制限が多く、生産性の低下、クレジットへのアクセスの喪失、農園訪問やトレーニングなど技術支援等の機会喪失などが指摘されている。


これを受けて著者は、施策検討のために考慮すべきポイント3点を提示している。

1. 「パンデミックの影響緩和と組織能力が低い国への支援に関する緊急対応法」を確立する
2. 価格の変動や気候変動に対する耐性を高めて復興を進め、長期的な持続可能性を育む
3. 特に高級アラビカ種市場において、コーヒーへの一時的な減税を適用して増加するコーヒー需要を支える

これらのポイントの詳細、また価格変動に関するデータや通貨価値に関する見通しについてはICOの「コーヒーブレイク」レポートの全文で確認できる。


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国際コーヒー機関 ICO(International Coffee Organization)から、COVID-19パンデミックがコーヒーチェーンに与える影響に関してまとめたレポートの第二弾がリリースされました。Daily Coffee News が記事中で取り扱った内容以外に興味深かった点があります。

畑での収穫者の減少は収穫の遅れや収穫期間の延長を意味し、コーヒーの品質と生産者価格に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、労働力供給の減少により賃金水準の引き上げが必要になる可能性があり、労務費が増加し収益性に打撃を与えることになる。

これに関しては他の記事で何度か出てきたトピック(ブラジルコロンビア前編)ということもあり、やはり重要なポイントと言えそうです。

また、

内陸国(ルワンダ、ウガンダ、ブルンジなど海に面していない国)では、海上アクセスのある近隣諸国へと移動するためのトラックが国境を横断するのに時間がかかり、遅延が発生する

コーヒーを輸出するためには港に運ばなければなりません。それはブラジルでもコロンビアでもエチオピアでも同じです。そうなってくると、港へのアクセスは整っているか?という基本的な問題に立ち返る必要があります。

ブラジルやコロンビアなど元々国土が海に面している国では、国内でのインフラ整備さえしてしまえばよく、またエチオピアは主に中国から投資を受けており、内陸国であっても港への鉄道アクセスがありコーヒーの輸出に大きく役立っています(とはいえ、エチオピアは1991年まで海岸線を巡って隣国エリトリアと諍いを続けてきました。それくらい、海に面しているかということは経済発展にとても重要なのです)。

今回のようなパンデミックで国境を越える移動が厳しく制限された場合、内陸国にとっては港へのアクセスが非常に困難になるということは容易に想像できると思います。海に面しているブラジルでさえコンテナ船の出港が遅れるかもしれない事態に直面している状況で、では内陸国のコーヒー・スペシャルティコーヒーの生産と流通はどういった問題に直面しているのか?という側面も見過ごすことはできません。生産量自体は世界の総生産量のそれぞれ数%に過ぎませんが、それに生計を依存している人がいる、ということはやはりコーヒー業界に身を置く以上しっかりと考えていかなければと思った次第です(普通に自分の感想ですみません…)。

今日の記事からは以上です。

junko