米国とEUの関税紛争と、とばっちりで25%の関税を課せられるドイツのコーヒー

元記事:Coffee Has Been Mercilessly Dragged Around in US/EU Aerospace Trade War - Daily Coffee News [Nick Brown | August 14, 2020]


この一年間、コーヒーは16 年にもわたって続く米国と欧州連合(EU)間の航空会社の補助金をめぐる論争に巻き込まれてきた。 今週になってようやく、コーヒーがこの貿易紛争から(ほとんど)解放されたように見えた。ただ一つ、ドイツから米国に輸入されるコーヒー豆、挽き豆(コーヒー粉)、ソリュブルコーヒー(インスタントコーヒー)には25%もの関税がかけられる、という例外を除いて。


ぜいたく品への平手打ち?

この紛争の中心にあるのは、世界の民間航空機の99%を製造している2つの企業、すなわちボーイング社とエアバス社への政府補助金の問題だ。

シアトルに本社を置くボーイング社が米国政府からの補助金に大きく依存しているのと同様、エアバス社も欧州連合(EU)加盟国からの補助金に依存している。 1992年以降、EU加盟国はエアバス社に約37億ユーロ(現在の為替レートで43億ドル)の補助金を支払い、返済金として約60億ユーロ(ロイヤルティの約40%)を受け取っているが、 米国は十数年もの間、これらの補助金は違法であり、ボーイング社と米国の航空宇宙産業に実害を与えていると主張してきた。

昨年10月、世界貿易機関(WTO)は米国に味方し、報復措置としてフランス、ドイツ、スペイン、英国の商品に75億ドルの関税を課した。 コーヒーは元々、関税25%を課す製品のリストには含まれていなかったが、それはDCNが “ぜいたく品への平手打ち” と呼んでいるもの(新しく関税をかける品目のリスト)に追加された。追加提案された品目には、トラックや機械、製菓用の砂糖、チョコレート、オリーブ、ジン、そしてコーヒーなどが含まれる。

コーヒーは開放された。…ほとんど。

水曜日に米国通商代表部(USTR)は関税対象品目のリストを修正し、米国、英国、フランス、スペインのコーヒー業界関係者たちにとって喜ばしいことに、慈悲深くもコーヒーをリストから除外したと発表した。
米国ナショナルコーヒー協会(NCA)の社長兼CEO、ビル・マレー氏 Bill Murray は「今日我々は、この有害な提案に異議を唱える我々業界のアクションによって米国通商代表部(USTR)の報復関税品目のリストからコーヒーが除外され、危機をほとんど回避できたことを発表できて喜ばしく思います。NCAを代表して、この有害な関税に反対の声をあげてくださったことを感謝します。いつも通り、私たちは状況を監視し続け、新しい動きがあれば最新の情報をお伝えします。」とNCAのメンバーへメッセージを送った。

しかしドイツにとっては期待はずれだ。何らかの理由で、ドイツのコーヒーは今、米国が輸入する際に 25 % の関税をかける唯一の国となった。この規則は焙煎したコーヒー、焙煎したデカフェ(カフェインレス)コーヒー、インスタントコーヒーに適用される。ドイツコーヒー協会のヨハネス・ハイエルシャー理事 Johannes Hielscher はロイター通信の文書で、米国が他の欧州諸国のコーヒー関税を断念したことに安堵の意を表する一方で、米国に対してドイツのコーヒーへの関税撤廃を要請した。

騒動は続く 

残念ながら、話はこれで終わらない。コーヒーは再び大西洋横断のドラマに引き戻されることになるかもしれないのだ。
WTOは、米国からボーイング社に適切に処理されていない違法な補助金が支払われたという判決を下しており、この判決に対する仲裁判決が近日中に下される見込みである。つまり、EUは米国製品に独自の報復関税を課す権利を持つ可能性があるということだ。
フィル・ホーガンEU貿易担当委員は最近の声明で、「和解が成立しない場合、EUは独自の制裁権を完全に行使する準備ができている。WTOはまもなく控訴審で、ボーイング社への違法な補助金に関する米国に対してのEUの並行訴訟について、米国がWTOの義務に違反しているかどうかの仲裁決定を下す予定だ」と述べた。
さて、我々はコーヒーが含まれていないことを期待しながら待つことにしよう。

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junko