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満州の若人たち
*キャプション
ろくでなし
威張った馬鹿息子の
絶頂時代
満州国(現在の、中華人民共和国の東北地方に当る。)に入ったら、いたる所で聞かされた、玉虫色のスローガン、曰く、王道楽土。曰く、五族協和(漢族、真族、蒙古民族、朝鮮民族、大和民族を含んでいる。)曰く、大東亜の盟主大日本帝国。しかし、東亜の盟主というきれいな言葉とはおおよそかけ離れていた日本人の若人の実態が随所にみられていた。
農作物のみのりも豊かで、儒教、仏教の思想を根底にした、心の豊かな民族の住んでいる植民地をもったすごい貧乏国日本、の先端をいく若人の姿が、随所でみられた。
身も心も、日本の国の武力が背景になっていることには気がつかず、自分が偉いと錯覚して、思い上った若い人は、生意気な姿で吉林駅より町の中央を通る大通り、「大馬路」※をかっ歩していた。
民衆の多数集まってにぎわう市場では、我がもの顔で買い物をしていた。
空しいことではあったが、これも、時代とともに生き、時代に流され、大陸に渡った若人の、ひとときの、淡い過ぎ去ってしまった夢の一つではなかったろうか。
※大馬路
日本人の経営している大きな店舗は、たいていこの通り筋にあったようだ。
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