「めんどくさい」ということ
私は子供のころからめんどくさいのがキライだった。なんでもかんでもめんどくさかった。ま、やりたくないことを「めんどくさい」部類に入れていたズボラなこどもだったのだけど。そんなわけでいつも母には叱られてばかりいた。
私は片付けることができない子供でもあった。学習机の上にはいつもノートや本がごちゃごちゃに置きっぱなしで、部屋も遊び道具やマンガ本が出しっぱなし、消しゴムや、鉛筆削りではけずれないほど短くなった鉛筆がそこらに転がっていた。
「片付けなさい!」「物を使い終わったらすぐ元に戻しなさい!」母からしょっちゅう言われていた言葉。今でも、この歳になってもどこからか聞こえてくるような気がする。
ある日、学校から帰って部屋に入ると机の上のごちゃごちゃはすべて下に落とされていた。そして、掃除する時以外はほとんど二階に上がってくることがない母がやって来て「あんたは!何回言うてもわからん!」と怒鳴り、私は殴られるのだった。その後は泣きながら片付けはじめるのだが、心の中ではやっぱり(めんどくさいなぁ~)と性懲りも無く思っているのだ。
それからも何度も何度も同じことが起こった。
「なんであんたはそんなにだらしないの!」と言われ続け、殴られた。
そんな私が気にすることがあった。
教室の机がきれいにまっすぐになっていないと気持ちがわるい。休み時間に次の授業の教科書、ノート、筆箱を重ねて机の端に揃えておくのだが、それが机の端とキッチリ平行になっていないと気持ちが悪かった。男子たちがふざけて教室を走り回り私の席にぶつかって、用意していた教科書やノートがゆがんでしまうと即座にキッチリと元にもどすのだ。
筆箱の中も、鉛筆の長さが順番にそろっていなかったら気持ちが悪かった。図書室の本も高さがそろっていた方が気持ちはよかったが、番号がふられている本が番号順に並んでいないことのほうが気持ちが悪かった。見つけると即座に並べ替える。
姉からはいつも「どーでもエエことばっかり気にして」と言われた。
母に叱られて泣いてたら、私の横を通るとき「アホちゃうか」と冷たく言われた。母に叱られて泣いてはいるけど、姉には心の中で(ちょっとはなぐさめろよ)と思っていた。
大事なことは、大抵めんどくさいもの。今ではわかる。
それにしても、やっぱり母は怖い。