「循環」「なりわい暮らし」を下ろし、「猫と本」を掲げる
7月はまず7日に「大家の学校」の2限がありました。「なぜ今、ネイバーフッドなのか」というテーマで、講師は豊島区の東長崎でMia Miaという喫茶店のオーナーのアリソン理恵さんと、校長の青木純さんとの共著『パブリックライフ』を書いた馬場未織さんです。
この日の予習は東長崎に行って、1階にアリソンさんの壱番館と「Mia Mia」を見学。壱番館は3階建てマンションの1階部分をリノベーションして、建築士のアリソンさんとグラフィックデザイナーさんの事務所として使用していて、週末はイベントなどでまちに開いているといいます。店の前には小さな畑があり、長椅子が設えている脇から奥に回るとコンポストもありました。
「Mia Mia」では店の内部が、スタッフとお客さんの動線が曖昧で、あえてどこからが厨房となっているかがよくわからないつくりになっていて、誰がスタッフで誰がお客さんか、あえて区別がつきにくいようにしているとのこと。見学した受講生の間では「こういうのって許可されるのかな?」といった話が出て、僕は「うちは猫のいるコワーキングをやりたいと思っているので、キッチンは完全に仕分けしないとダメなんですよ」なんて話もしました。
そして」、17日は「集中ゼミナール」の第2回、今回からリモート開催です。
事前に自分の計画を提出して、純さんと安藤さんからフィードバックをもらうという形式です。事前に提出した資料では、次のような課題や相談したい点を挙げていました。
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相続税対策としてスタートした「”なりわい暮らし”の現代風長屋」と「猫がいるコワーキング&一棚 ライブラリー」を建てることによって、社会にどのように貢献できるのか?
【アパート部分について】
1-1 そもそも「なりわい暮らし」のアパートが、この地域にふさわしいのか? 一つの会社や仕事にとらわれない働き方、生き方は、今後、より求められると思うので、「なりわ い暮らし」はいいと思うが、趣味的な小商いタイプと、若者のチャレンジを応援するタイプ(例:下 北沢BONUS TRACK)とでは、住む人も建物の作りも変わってくるのでは。 この地域の歴史も調べつつ検討したい。
1-2 「なりわい暮らし」と「サステナブルなエコ建築」(従来のコンセプト「つながり、循環する アパート」)は両立できるか? 手を広げすぎて、どっちつかずにならないか?
【コワーキング&一棚ライブラリーについて】
2 「猫がいるコワーキング&一棚ライブラリー」の「猫がいる」を実現させるにはどうすればいい か? 猫がいる場合、営利とみなされ「半年間の実務」が必須。また、夜間に猫を入れておくバックヤー ドのケージが必要など、間取りや運営面で課題が多い。
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各自の発表時間は5分、その後、フィードバックなどの時間と合わせて1人当たり20分を割り振られていました。ということで、事前に提出した資料を5分程度で説明するのかと思っていところ、冒頭で純さんから発表は資料を見てもいいし、見なくてもいいので、今考えていること、相談したいことなどを5分で話すようにと言われ、これは5分で言いたいことをまとめる練習でもある、ということでした。
その5分の発表の後、純さんと安藤さんが2人で話し合う5分、その後、それを受けて発表者も入れて10分というスケジュールでした。大体の人が、資料を見ずに順次、発表していき、集中ゼミナールの受講生はすでに事業を行っている人が多く、5分そらで話して上手くまとめていました。僕の順番は最後だったのですが、ただ画面に向かって散漫に話しているうちにあっという間に4分半くらい経っていて、今日、フィードバックしてもらいたいことを最後にちょこっと入れたら時間になってしまいました。こうした発表は全然したことがなく、またパソコン越しに誰に向けて話したらいいのかもうまく掴めず、壁に向かって話しているようになってしまいました。
それでも事前に資料は出していたので、それをもとにして純さんと安藤さんが話し合いました。その中で、「最初からこれは難しすぎる」「他の物件を管理することから始めてみたらいい」「循環は後でいい」「自分が夢中になれることから小さく実験してみては」といった話が出て、純さんから猫と本にエネルギーをさけると思うので、物件の名前も「猫と本」にしてはという提案がありました。さらに、純さんが「なりわい暮らし」は作ろうとするのではなく、本と猫が好きな人が結果的に「なりわい暮らし」をするような、「起こす」のではなくて「起きる」のが大事だとの話があり、安藤さんも同意で「なりわい暮らし」が起きる「余白」が大事とのことでした。
2人の話には納得するばかりで、翌日、以下のように「集中ゼミ」用のアプリに投稿しました。
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純さん、安藤さんはじめ事務局、受講生の皆さん、昨日はありがとうございました。
僕も思いつくままに感想を。
「なりわい暮らし」については、開校式後の懇親会で河邉さんから「なりわい暮らしはすごく大変だよ!」とはっきり言われていました。
それでも、僕が新卒で角川書店に入ったとき、研修で見城さん(その直後、幻冬舎創設)が「迷った時は氷の薄い方を選べ」と言っていたことを最近、よく思い出していて、リスクの高い方に行ってみようかと思っていました。
純さんの2冊の本を読んで、安藤さんの物件を見て、お二人が一朝一夕に現在の状況に到達しているわけではないことはわかっていたんですが、昨日、純さんから「大谷になろうとしても、それは難しい」と言われて、「そうか、僕が選んでいるのは氷の薄い方じゃなくて、氷すら張っていない水の中に落ちるんだな」と気づきました。
自分のまとめた資料でも、そもそも「なりわい暮らし」がふさわしいのか、「なりわい暮らし」の戸数を減らしてみようか、また、「循環」にしても「なんちゃって循環」にしかならないとも書いていて、その難しさは感じていたことでした。
それをずばっと指摘してもらえて、この半年、それなりに頑張ってきてそれでも難しそうだと壁を感じていたことについて、「自主管理もやっていない今の段階で、自分がそれをやるのは無謀」だと納得というか、ある意味、すっきりしました。
正直、ちょっとヘコんだところもなくはないのですが、思えば、この歳になったからか、正面切って、それはよくないとアドバイスしてくれる人や機会がほとんどなくなっているので、うれしいといえば変ですが、ありがたく貴重な機会でした。
これからは、「猫と本」を押し出してで進んでいこうと思います。
また、他の受講者へのフィードバックで、純さんのどっしり構えて大局を見ながら、具体的に進む道へと導いていく視点、安藤さんの時に正面から、時に脇道から受講者に気づきを促す話ぶり、とても感心しながら見ていました。
これからもよろしくお願いします。
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こうして、今回のプロジェクトで「なりわい暮らし」を掲げることはやめて、「循環」というコンセプトも降ろすことにしました。
この半年ほど、「なりわい暮らし」について考え、一つの仕事にとらわれない生き方についてもいろいろな本で読んだりして学んできましたが、それでも『「なりわい暮らし」のアパートがベストである!』との気持ちにまでは至りませんでした。
また、「循環」についても「エコ」「サステナブル」な暮らしがいいことだと頭ではわかっていました。20代の終わり頃、辻信一さんの『スロー·イズ·ビューティフル』という本を読んで感銘を受け、「100万人のキャンドルナイト」というイベントの本を出そうとしたこともありました。
それでも、これまでの人生で「リデュース·リユース·リサイクル」といった「循環」的な生活、言い換えれば「丁寧な暮らし」といえるような実践をしてこなかった自分に、「循環」を掲げるのはどうなんだろうといった疑問符が浮かんでいました。
自分の普段の暮らしの中で自分の手を動かしながら生活を紡ぎ上げる「丁寧な暮らし」をすることに時間を費やすよりも、本を読んだり映画を見たりといったことを優先していて、「循環」をコンセプトに掲げる住居をリードすることは難しいかなといった思いも正直、ありました。
それを、今回の集中ゼミではっきりと「循環は中途半端に掲げるものではない」と指摘され、ある意味、すっきりした気持ちで、これからは「猫と本」というコンセプトで、猫も人も幸せになる「猫共生アパート」の実現に向けて進んでいきたいと思いました。
こうして、昨年末から始まった賃貸アパートのプロジェクトは、「循環」や「なりわい暮らし」という、ちょっと自分としては一つ高いところを目指したコンセプトを削ぎ落として、「猫と本」に特化した物件とすることで一つ、方向性を見出すことができたかなと感じました。
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