ベランダの小鳥

小鳥の死から10日が経った。小鳥がいた場所には、花が手向けられ、子どもが描いた絵が飾られている。ベランダには小鳥の眠るブルーベリーの鉢がある。

また寒くなった今日、ブルーベリーを日当たりのいい場所へうつし、ガラス戸を閉め、ロールカーテンを半分下ろした直後であった。

バン、という大きな音とともにガラス戸が揺れ、小さな羽がはらりと舞うのが見えたのだ。すぐに何が起きたかを理解した。

カーテンを上げ様子を見たが、ガラス戸にあたって落ちたものが見当たらない。気のせいであったならそれでいいのだ。しかしそれはいた。奇しくも、先ほど移動したばかりの小鳥の鉢の直ぐ側に。

どうしてだ。どうして我が家にまた小鳥の死がやってきたのだ。あんまりじゃないか。カーテンは閉めていたし、ついさっきまで人の出入りがあったのに。どうして小鳥は来てしまったのだ。私には小鳥を死なせてしまう何かがあるのだろうか。

しかしそこではっとした。まだ生きているかもしれないじゃないか。恐る恐るガラス戸を開け、小鳥の動きを確認した。目を凝らすと、痙攣しているように見えた。そのうち首を下に向けた。まだピクピクと動いている。

ガラスにあんなに大きな音を立ててぶつかったのだ。きっと頚椎を折りあと数分の命を持て余すことになってしまったのだろう。数日前に自らの手の中で小鳥を死なせてしまった私にとってはあまりに残酷な光景であった。

実は以前もこれと同じ小鳥が、隣家の外壁にぶつかり、目の前で落ち、力尽きるのを見てしまったことがあった。カラスに連れ去られるのを見たくないあまり、子どもたちと土に埋めた。そのときは小鳥の死を少し迷惑に思ったほどであった。

しかし今回はあの時とは全く違う心境である。数分おきに何度も小鳥の様子を見た。まだ動いている。子どもを迎えに行く時間になっても、まだ動いている。家を出、戻ってきたとき私の目に飛び込んだのはガラス戸にへばりつく糞であった。

大きさから、鳩やカラスではなく小鳥のものだと思う。あの小鳥は、とブルーベリーの鉢のまわりに目をやった。いない。飛び立ったのだ!首の骨など折れていなかった!

気絶していたのだろうか。はたまた体力の回復を待っていたのだろうか。とにかく小鳥は生きて飛んでいったに違いない。小鳥がいたのは植木鉢がたくさん並ぶ隙間であり、カラスなどが着地できるような場所ではないのだ。そう思いたい。

しかし不思議だ。ガラスに激しくぶつかっても生きていたなんて。違う。ガラスではなく網戸にぶつかっていたのだった。ああよかった、網戸をそちら側にしていて。ブルーベリーの鉢を移動させたときにそうしたのだった。

今日の小鳥は我が家の小鳥に助けられたのだと思おう。

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