プレミアム・ノンアル・スパークリングってサステナブルですか?~わこさんのワイン片手の経済視点
(第十一回)LVMHがノンアル・スパークリングに出資、ってどうでしょう?
言行不一致ですが、忘れそうなので
前回書いた通り、一週お休みしようと思ったのですが、忘れる前にどうしても書いておきたいので短めになりますが書きます。すみません。
LVMHがフレンチ・ブルーム社に出資
10月2日にモエ・ヘネシーがフレンチ・ブルームという会社に出資することを発表しました。モエ・ヘネシーは高級ブランドのコングロマリットであるLVMH(日本語だとなぜかモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のワイン&スピリッツ部門子会社です。LVMHが出資する、ということは、高級ブランド商品のラインナップの一つとして認知された(あるいはされる可能性がある)と考えるのが普通でしょう。
ノンアル・スパークリングがラグジュアリー商品に?
で、そのフレンチ・ブルームという会社は、ノンアルコール・スパークリングワインのメーカーです。ノンアル・スパークリングワインがラグジュアリー商品になる?ということです。実際、この会社は、今年ミレジム(特定の年の最良のブドウから作った高級なものという位置づけになりますので、相当力入ってるはずです)のスパークリングを発売していて、昨年ワールド・スパークリングワインのノンアル部門で一位になったと誇ってます。
試してみないと何とも言えないので
酒飲みとしては、ただでさえノンアル・ワインとか手は出さないのですが、やっぱりLVMHが出資した、ということがドーシテモ気になる。なので、ミレジム(トライアルするにしては高いんです)ではなく、その下のクラスのロゼワインをポチッとしてみました(お値段は後程)。
ノンアル・ワインはWSETも正式に認めたワインの一分野
テイスティングコメントの前に、ノンアル・ワインについて。
今年の改訂版から、WSETのLevel4 Diplomaの栽培・醸造(D1)の科目の中に、ノンアルコール・ローアルコール・ワインの製法という一章が追加されました。ワインの一分野としてWSETが認めた、つまりビジネスも含んだワイン産業を考えるうえできちんと知ってなきゃいけない、ということです。今後の受験生はちゃんと勉強しなきゃいけなくなりました。
ワインからアルコールを抜く工程が入る
発酵過程で、糖分は食べるけどアルコールを生産しない酵母菌を使うというやり方もあります。しかし、基本的には、普通にワインを作って、そこからアルコールを抜く、という工程が入ります。アルコールを抜くやり方は、逆浸透膜方式、減圧蒸留方式、スピニングコーン方式という3種類があります。説明してもいいんですが、ここはワイン教室ではないので、詳しく知りたい人はググってください。
抜けたものを補って調整する必要があります
ただ、アルコールを抜くだけじゃなくて、その過程でアロマ成分だとかが抜けます。また、アルコールはワインの飲み口(いわゆるボディ、ってやつです)の重要な要素ですから、アルコールがなくなると飲んだ時に飲みごたえが弱くなります。この辺りを調整して、単なるぶどうジュースではなく、ワイン感のあるノンアル・ワインを仕立て上げるわけです。しかもそれのプレミアム、ってどういうことでしょう?
原理はわかってもいろいろな疑問が渦巻く
スパークリングでも原理は同じはずですが、泡はどうするんでしょう?ワインができた後、瓶かタンクでいわゆる二次発酵という過程を経て、液体の中に二酸化炭素を溶かしこんでグラスに注いだ時に泡になるようにするわけですが、そこはどうするのかな。いろいろな「?」を頭の中にグルグルしながらテイスティングです。
さわやかな酸味のローズ・ウォーターですが、ワイン感がある
注いだ時の泡立ちはまあまあ細かくて、安物のスパークリングにある、後から炭酸ガスを注入したような形には見えません。香りはバラ、クランベリー、桃、レモン、イチジクのようなフレッシュなフルーツの香りが前面に出ていて、さわやかな印象です。ビスケットやパンのようないわゆるイースト・オートリシスの感じはしません。二次発酵してない?あるいはしていてもタンク?ですね。飲んでみると、酸味のさわやかなローズ・ウォーターです。気持ちよく飲めます。面白いことに、ノンアルなのにワイン感があります(単なるぶどうジュースじゃないということです)。アロマやフレーバーの調整が上手なんでしょうね。後味はクリアカットで伸びる感じはあまりないです。
低アルコールだと騙されそうな良い出来
食事に合わせるのであれば、これはこれでアリです。言わなければ低アルコールだと騙される人もいるんじゃないでしょうか。よくできてると思います。
このくらいだったら、上級ランクのミレジムにトライしてもよかったかな、という思いがよぎったりもしました。
裏ラベル見ると…表示はワインじゃないけどワイン感
ここまできて、ボトルの裏ラベルを見ました。裏ラベルの重要性は、私のNoteご愛読いただいている皆さんには言うまでもないですよね。
名称:有機炭酸食料水(果汁50%、炭酸入り)
原材料名:フランスジャンサック産炭酸水、有機ブドウ果汁、有機ワイン、有機レモン果汁
オーガニック栽培ブドウ使用のワインということですが、原材料表示の順番が日本の食品表示基準に従って成分比率の順番だとすると、一番多いのは炭酸水ということです。ワインじゃないやん!!
それにしてはワインだよね、というのが正直な感想。繰り返しですが、よくできてます。
ワイン好きでも、最初の乾杯用であればOKでしょう
皆さんが酔っ払ってなくて、のどが渇いているときに何人かで最初の一杯、であればアルコールダメな人も含めて、揃ってカンパーイ!!ですね。流行りのインクルーシブ(笑)
ただし、やっぱり泡は弱いです。
飲み残しを次の日に飲んだら、泡はほぼなくなっていて、フレーバーのついたレモン水になってます。泡は酸味の補強をするという意味合いもありますから、泡が弱い分ベースワインの酸味を高めている、ということでしょうか?いろんな企業秘密はありそうです。
LVMHのラインナップに入るというのは理解できる
ライトなワインへの選好が強まっているという消費のトレンドも踏まえると、このスパークリングをLVMHがラインナップに入れようとすることは理解できます。肝臓のサステナビリティにも貢献してくれそうです。
お値段が…
最大の問題は、お値段。これ、サイト上の参考上代7452円。上級ランクのミレジム(La Cuvee Vintage 2022)は18144円。いかがでしょう?きっとおいしいですが、お財布開きますか?
プレミアム・ノンアルがここからどう進化するかには注目
セレブ様のお飲み物、ということであれば、止めません。どんどん行って下さい。これが5000円以下とかいうのであれば、「買い」でも良いですが、LVMHのラインナップに入ったということは、値段を下げる方向よりはもっとプレミアムな、シャンパーニュとかを目指す方向に行くんですかね。アルコールの力なしでどこまで口当たりや旨味を出せるようになるか、今後の進化に注目はしておきたいと思います。
お財布をサステナブルにしたい立場としては。ね
ただ、限りあるお財布をサステナブルにしたい立場としては、死ぬまでに飲んでおきたいワインがまだまだありますんで(笑)。
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