意外と知らない労働法③ 就業規則と各種保険制度
就業規則を見たことありますか?
とある企業で働くときの労働条件は、その企業に所属する人全てに共通する場合が多いですが、そのような共有のルールは「就業規則」にまとめられています。常時10人以上の労働者を雇用している使用者(※)は、就業規則の作成と労働基準監督署長への届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。
※人数は企業単位ではなく事業場単位で計算し、従業員が10人以上在籍していても事業場単位で10人を下回る場合は条件に該当しません
就業規則は掲示や配布するなどして、労働者がいつでも内容を確認できる状態にしておかなければならない、と定められています(労働基準法第106条)。
就業規則には、必ず記載しなければいけない事項(絶対的必要記載事項)と、絶対的必要記載事項に含まれないが定める場合には記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。
まずは、絶対的必要記載事項から。
続いて、相対的必要記載事項です。
就業規則の作成・変更をする際には必ず労働者側の意見を聴く必要があること(労働基準法第90条)、就業規則の内容は法令や労働協約に反してはならない(労働基準法第92条、労働契約法第13条)ことも定められています。
就業規則をきちんと確認した経験が無い!なんて方は、一度は目を通しておきましょう。もしかしたらご自身が知らない内容が記載されているかもしれません。
各種保険について
求人票で「各種保険完備」という表現を見た経験があると思います。「各種保険完備」とは、雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険に加入しており、従業員にはそれらの制度が適用されることを意味しています。それぞれの制度を細かく見ていきましょう。
(1)雇用保険
雇用保険は、労働者が失業した場合などに失業等給付を行う保険制度です。
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上の雇用見込がある
以上の条件を満たす労働者を1人でも雇用している事業者(企業)には、雇用保険の加入が義務付けられています。もし事業者が義務を怠った場合、懲役6ヶ月以下または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります(雇用保険法第83条1項)。
なお、保険料は労働者と事業者(企業)の双方が負担し、雇用保険料率は事業者の事業内容によって異なります。
(2)労災保険
労災保険は、業務中の怪我・病気・死亡(業務災害)、または通勤中の怪我・病気・死亡など(通勤災害)の場合に、保険給付を行う制度です。
労働法では、業務中に発生した怪我や病気について、事業者(企業)が療養費を負担し、療養のために労働ができない場合には休業補償の支払いを義務付けています(労働基準法第75条、第76条)。
しかし、企業の経営状況の悪化や、想定を超える大事故など、十分な補償ができないケースも考えられます。そのような場合でも労働者が確実な補償を受けられるように労災保険制度が設けられています。
労働者を1人でも雇用している事業者は、業種・規模の如何を問わず労働保険に加入する必要があり(農林水産の一部事業を除く)、加入義務を怠っていた期間に労災事故が発生した場合、未加入期間を遡って保険料を徴収すると共に、労災保険給付額の100%又は40%を事業者から徴収する規定があります。
保険料は全額事業者(企業)負担です。
(3)健康保険
健康保険は、労働者やその家族が、病気や怪我、出産、死亡したときなどに、生活を安定させる目的で、必要額の医療給付や手当金を支給する制度です。
以下のいずれかの条件を満たす場合は強制適用となっています。
・国、地方公共団体または法人の事業者
・一定の業種(※)であり常時5人以上を雇用する個人事業者
※製造業、土木建築業、鉱業、電気ガス事業、運送業、清掃業、物品販売業、金融保険業、保管賃貸業、媒介周旋業、集金案内広告業、教育研究調査業、医療保健業、通信報道業など
健康保険に未加入の事業者は、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
保険料は労働者と事業者(企業)が半々で負担します。
(4)厚生年金保険
厚生年金保険は、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉向上に寄与する目的で、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行う制度です。
厚生年金保険の適用事業所は健康保険と同様、以下のいずれかの条件を満たす場合は強制適用となります。
・国、地方公共団体または法人の事業者
・一定の業種であり常時5人以上を雇用する個人事業者
未加入時も同様に、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
保険料は労働者と事業者(企業)が半々で負担します。
各種保険の比較表
最後に、各種保険制度の強制適用条件・未加入時のペナルティ・保険料の負担比率について表にまとめました。
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