意外と知らない労働法⑦ 退職・解雇のルール
退職のルール
退職は労働者の自由であり、「職業選択の自由」として憲法で保障されています(日本国憲法第22条1項)。
しかし、予告もなく突然会社に行かなくなる、いわゆる「バックレる」行為は社会人としてマナー違反であり、その後の転職活動においても多大なるマイナス影響を与えます。
もしも「バックレ」てしまった場合、使用者(企業)は「労働者が2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」、解雇予告なく労働者を即時解雇できる(厚生労働省通達、昭23年11月11日 基発第1637号)ため、解雇扱いとなる可能性が高いです。
退職理由は採用面接でほぼ間違いなく質問されますし、職務経歴書・履歴書にも解雇された旨を記載する必要があります。解雇された事実を隠せたとしても、後々になって採用面接での発言や応募書類の内容に虚偽があると判明した場合、内定取り消しや入社後に懲戒解雇となる可能性も否定できません。
「退職する場合は退職予定日の1ヶ月以上前に申し出ること」というように、就業規則には退職に関するルールが記載されています(就業規則に関してはこちらのnoteをご覧ください)。退職手続きを進める場合、まず初めに就業規則で退職に関するルールを確認し、定められた内容に沿って手続きを進めれば不要なトラブルは回避できるはずです。
民法には「退職の申し入れ(退職届の提出)から2週間経過すればいつでも退職できる」と定められていますが(民法第627条)、会社が退職交渉に応じない、何かしらの理由をつけて辞めさせてくれない、などの場合の最終手段だと認識しておいたほうが良いと思います。
解雇の制限事項
労働者からの退職の申し入れは自由である一方、労働者よりも強い立場にある使用者(企業)側からの労働契約解消の申し入れ(解雇)は法律によって制限されています。
解雇の制限事項は、雇用形態の違いによって異なり、期間の定めがない雇用形態(=正社員)に比べて、期間の定めがある雇用形態(=契約社員、嘱託社員など)のほうが厳しく制限されています。
1. 期間の定めがない場合
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効です(労働契約法第16条)。また、使用者(企業)は、就業規則に解雇事由を記載しておかなければなりません。
解雇理由として、
・労働者の勤務態度が悪い
・業務命令に違反した
などが考えられます。
しかしながら一度の失敗・違反ですぐに解雇が認められるわけではなく、
・労働者の落ち度の程度や行為の内容
・使用者側が被った損害額
・労働者の悪意や故意による行為なのか
これらのさまざまな事情が考慮されて、最終的には裁判所において解雇の正当性が判断されます。
そして、合理的な理由があったとしても、少なくとも30日前に解雇予告を行う必要があります。予告を行わない場合には、30日分以上の平均賃金(=解雇予告手当)を支払わなければなりません。
解雇日まで30日を切っている状態で解雇予告を行った場合には、その不足日数分の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります。例えば、解雇日の10日前に予告した場合、30-10=20で20日分の平均賃金を労働者に支払う必要があります(労働基準法第20条)。
さらに、労働者が解雇の理由について証明書を請求した場合には、使用者は遅滞なく証明書を交付することが義務付けられています(労働基準法第22条)。
この他にも一定の条件下における解雇について明示的に禁止している法律があります。以下に主な法律をご紹介します。
2. 期間の定めがある場合
契約社員や嘱託社員のように、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)についてはあらかじめ使用者(企業)と労働者が合意して契約期間を定めているため、使用者はやむを得ない事由がある場合を除き、契約期間の途中で労働者を解雇できません(労働契約法第17条)。
有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約は終了します。しかし、3回以上契約が更新されている場合や1年以上継続勤務している労働者については、契約を更新しない場合、契約期間満了日の30日前までに予告しなければならないとされています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」厚生労働省告示)。
さらに、これまで何度も契約更新したり、有期労働契約の更新が期待される状況においては、客観的に合理的な理由がなければ雇い止め(契約期間満了後、契約更新しないこと)は認められません(労働契約法第19条)。
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<こちらのnoteもお勧めです>
・労働法の基礎知識
・労働契約時に気をつけること
・就業規則と各種保険制度
・賃金に関するルール
・労働時間のルール
・休憩・休日のルール
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