sumikaの魅力後編

音と言葉と笑顔の魔法【sumika】

sumikaは「今最もライブのチケットが取れないバンド」と言われている。
実際僕もチケットが取れていない。悲しいが、ものすごくたくさんの人がsumikaを応援しているのが嬉しくもある。複雑。

どうしてsumikaのライブはこれほどまでに愛されるのか。
sumikaのライブもまた、曲と同じように「魔法」のような時間なのだ。

僕がはじめてsumikaの「魔法」にかかったのは、5月の野外フェスだった。
当時の僕は、sumikaにぞっこんというわけでもなく、有名でポップな曲を4〜5曲知っていただけだった。
そんなわけで、そこまで期待値が高かったわけではなかった。だからこそかもしれない。僕は4人のエンターテイナーに骨抜きにされてしまった。

夕方6時。一つ前のアーティストで騒ぎ疲れた僕は、sumikaが出てくるステージ近くの芝生で座って、「旅する氷結」を飲んでいた。
数十メートル先では、スタッフがせわしなくステージのスタンバイをしている。
開演10分前。一通り準備が終わり、スタッフがステージ裏に撤収した。
そろそろ場所取りに行くか、などと思っていると、何やらステージの方が騒がしくなり、歓声が聞こえてきた。
何事かと思って見てみると、楽しげな雰囲気を醸し出した男性が4人ステージに立っていた。
全員が楽器を持ったかと思うと、ボーカルの位置に立った男性が叫んだ。
「sumikaの本気のリハーサルいきまーす!」
言うや否や、sumikaのライブが始まった。
あっけにとられながらも、聞こえてくるキラキラしたサウンドに魅了された僕は、3分の1ほど残っていた「旅する氷結」を急いで流し込んで、ステージへ走って行った。
そこから2曲ほど、当時詳しくなかった僕でも聞いたことある2曲を演奏して、彼らはステージ裏へ戻っていった。

リハーサルがこんなに盛り上がるなら、本番はどれだけ楽しいんだろうか。
ついさっきとは打って変わって、僕のボルテージは既に最高潮だった。

数分後、ご機嫌なジングルと共に、4人が再びステージに上がった。
そこから先は、あっという間すぎて、あまり覚えていない。
ただ、一音目の「パッてなるから」に圧倒されたのは、鮮明に覚えている。
まるで、プレゼントの箱を開けたときの、胸が熱くなるような喜びと感動だった。

足を真横に上げる独特の煽りに合わせて、「ヘイ!」だとか「アイヤイヤイヤイ!」だとか叫び続ける。
後半落ち着いたした曲に移ったら、みんなで体を左右にゆっくり揺らす。
表情豊かに歌う片岡さん、楽しさを全身で表現する4人。
彼ら自身が発する輝きが、ステージの照明と、差し込む夕日と重なり、眩しい。

なぜだか分からないけれど涙が出そうになる、それぐらい幸福感に満たされた空間だった。
まさに彼らの合言葉「愛しかないしか」が実現した場所だった。

あっという間だった数十分。
最後の曲が終わり、4人が去っていく。
子供時代が終わってしまったような寂しさを感じていると、どこからともなく、アンコールの声が湧き上がった。
結局アンコールは演奏されなかったが、この日アンコールを求められたバンドは一つだけ。sumikaがどれだけ愛されているかを象徴するエピソードだろう。
気付いたら日も暮れ、サカナクションが活躍する時間帯になっていた。僕はしばらくその場で「魔法」の余韻に浸っていた……。

sumikaのライブには、彼らの愛が散りばめられている。
もちろんCDもなのだが、距離が近いライブでは、それが比べ物にならないぐらい強く感じられる。
僕の自意識過剰だろうか。いや、行ってみたら分かる。sumikaのライブは、確かに温かい空気で満たされているのだ。
今だって、あの日のことを思い出しながら、目頭が少しだけ熱くなっている。

sumikaは、これからも勢いを増していくだろう。そうなったら、もっとライブのチケットは取れなくなるかもしれない。
けど、彼らが音楽と笑顔でもっとたくさんの人に「魔法」をかけてくれるなら、彼らに憧れる者として、これほど幸せなことはないだろう。

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Tachibana
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