それじゃ無理
1.それじゃ無理
僕はR指定を見てラッパーに憧れた。いろいろなバトルをみた。いろいろな音源を聴いた。1人でいろいろな韻を探し、友達とバトルもどきやサイファーもどきをしていた。この曲のRのバースで僕はラッパーを目指すことをやめた。その昔呂布カルマがFORKをみて韻を武器にすることをやめたように、僕はラッパー自体を諦めた。
この曲はテークエムfeat.R-指定,NORIKIYO,AKLOであるが今回Rのバースだけ抜粋している。
2.歌詞解説
aiで踏み過ぎてて訳わからないので「」で強調している。
Verse2 R-指定
怖いもん「なし」ですか? 10「代」のラップスター
覚えて間も「ない」?そのチュー「ハイ」にバッツや
「10代」と「チューハイ」、「ラップスター」と「バッツや」。「怖い」、「もんなし」と「もない」。この時点で踏みまくり。10代って何も怖くないなと今振り返ると思う。草や酒のことを自慢げに語る10代に対してこれである。しかもこれ高校生ラップ選手権の審査員が言ってる。ヤバイよね。
「ファッシ」ョン感覚か?シュアの「マイ」クは
「歌詞」もUSの10「倍」希釈
多少強引だが「ファッション」と「歌詞も」、さらに「チューハ(イ)」と「シュア」おまけに「のチューハイにバッツ」と「の10倍希釈」。ここからケツの方まで「チューハイ」と「バッツ」が出てくる。ここもファッション感覚でUSの真似事してる奴に対して痛烈なDisである。
注釈いらずでも「注射器」「はい」りますか?
三途の川のほとりスー「サイ」ドスクワッド
漢字が全く一緒の「釈」と「釈」、音で聴くとよくわかる「注釈い」と「注射器」、固すぎる「ハイにバッツや」と「はいりますか」に加え「チューハイ」と「スーサイ」、「注射」。なんぼ踏むねん。最後にほぼ踏んでいる「10代のラップスター」と「スーサイドスクワッド」。文字起こししてて韻が合ってるのか疑心暗鬼になってくる。スーサイドスクワッドを直訳すると自殺隊になる。
「賽」の河(原で)順「番に」待つ
そんな集「団自」殺者の救「済」企画
ここからaeの音も頻繁に出てくる。aeは()でわかりやすくしているつもりである。「スーサイ」と「順番に」、「サイド」と「賽の」、「倍希釈」と「(順)番に待つ」、「順番に待つ」と「集団自殺」、「チューハイにバッツ」と「順番に待つ」、「救済企画」、「はいります(か)」と「(救)済企画」。よくもまぁこんなポンポンとでるもんだ。ここで踏んでないとした「河原で」は綺麗に踏んでいるところがないだけで「ちゃダメ」とか音なら踏んでいる。あとの「そんな」と「者の」なんて腐るほど該当する部分があるからあえてあげなかった。
賽の河原というのは、三途の川のほとりの別名である。ここには親より早く死んだ子供が行くとされ、くる日もくる日も石を積み上げては鬼に壊されていくらしい。このことから無駄な努力という意味もある。Rはいまのシーンを草、酒、女、地元、仲間、過去のみで乗り切ろうとするFakeな若手にとっての「賽の河原」と考えて、そこに入ってくる者は「スーサイドスクワッド」であり、「集団自殺者」なのである。そいつらに対する救済企画が「それじゃ無理」と言ってやることなのである。僕も息子がラッパーで食ってくとか言い出したら嫌だ。
「才」能があるかは空(欄で)(返)すけど
お(前)のそれはヒュー(マンエ)ラー
「賽の河原」と「才能があるか」、「がある」と「かは空」、「空欄でか」と「ヒューマンエラー」、「チューハイ」と「空欄」くらいか。母音と子音に分解して判明する韻もあるのだが、子音踏みとかされるとたまったもんじゃない。「賽の河原」と「才能があるか」聴くと似てるんだけど、文字起こしすると少し違う。フロウで響きを近づけている。歌詞の解釈としては「お前にはもしかすると才能があるかもしれへん。けど人の真似事してる、それを武器にするのはミスやぞ」ってところだろうか。
「快」楽に目が(眩んで)まう?
か、楽に「財」布が膨(らんで)まう?
「目」と「財布」以外全踏み、「いらず」と「(か)いらく」、「(集)団自殺」と「快楽」、「(そ)れはヒューマンエラー」と「目が眩んでま(う)」、「マイク」と「財布」、「ヒューマンエラー」と「膨らんでま」くらいか。長い韻でも踏んできてる。快楽に目が眩んで流されるのか、誰かのパクリで金を稼ぐのか。それを揶揄した部分である。
被「害」者不「在」のう「まい」「話」に
(歪め)(られ)た有「害」(電波)
「に財(布)」と「被害」、「快楽」と「(被)害者不(在)」、「チューハイ」と「不在」、「うまい」、「有害」それと「ヒューマンエラー」と「有害電波」、「眩んでま(う)」と「歪めら(れた)」そして「有害電波」だろうか。1つの文のほとんど韻で固められている。
Hiphopにはサンプリングという文化がある以上、過去を重んじるのはわかる。けど誰かがこのスタイルで売れたから、これが流行っているからと真似するのは違うということだろうか。たしかに誰かのスタイルを真似したところで被害者は誰もいない。
「殺菌」消毒中ク「ラミ」ジア
「アイ」ツらと俺を比べちゃ(ダメ)
「才能」と「殺菌消」、「チューハイにバ(ッツ)」と「クラミジア」、「マイク」と「アイツ」、「眩んでま(う)」と「比べちゃ」。母音で探すとこんな漢字である。「クラミジア」と「比べちゃダメ」もほぼ踏んでいる。まぁここは解釈もクソもないと思う。歌詞そのままだ。
「明」ら「かに」都合いい 「成り」上「がり」ストーリー
「歌詞」の「中身」ドーピング ろくに原稿用紙
「明らかに都合いい」と「成り上がりストーリー」と「歌詞(の)中身ドーピング」、「(う)まいはなし」と「明らかに」などと「(ス)トーリー」と「用紙」。ここ群を抜いて固すぎる。ちょっとでもバックボーンがあればそれを広げて、有名になろうとする若手を「明らかに都合いい 成り上がりストーリー」と揶揄している。Hiphopが純粋に好きでラップを始めたR指定からすれば、奴らは都合の良い成り上がりだし、ろくに歌詞も考えてないドーピング野郎だと言いたいのだろう。
1つ真っ黒に 染めれ「ない」やつが
テメェの「髪」を染めて「紙」でローリン
「才能」と「1つ」、「ストーリー」と「(真っ)黒に」、「染めれ」と「てめぇ」と「染めて」、「ないやつ」と「快楽」、「ないやつが」と「(チュー)ハイにバッツや」、「(ま)もないその」と「の髪を染」、「(有)害電(波)」と「紙で」、「用紙」と「ローリン」。いまだに「チューハイにバッツや」で踏んでるよ。キモ。ローリンとは贅沢に過ごす様子みたいなスラングである。ここででてくる紙は紙幣のことだと思う。解釈としては原稿用紙1枚すら真っ黒に染められないのになに髪染めて、金稼いでんねんという感じだろうか。
召集かける エントリー用紙は赤「紙」
飾れ引退の「花道 」勝利の女「神」との契約は白紙
「消毒」と「招集」?、「原稿用紙」と「エントリー用紙」、「うまい話」と「赤紙」、「ちゃダメ」と「飾れ」、「被害」と「引退」、「話に」と「花道」、「ろくに」と「勝利」、「楽に」と「白紙」こんなもんだろうか。まず言いたいのが赤紙→赤髪、花道である。赤髪の花道といえばスラムダンクの桜木花道である。さすがスラムダンク大好き野上恭平である。あと特筆すべきはkamiが紙、髪、神と色々変化している点だろうか。最後10代大好き勝利の女神で落としてるのも一興である。解釈はバトルなどに出るためのエントリー用紙が赤紙=召集令状であり、そこでラッパーとして殺す。つまり引退させるから最後くらい飾れよってとこだろうか。個人的に原稿用紙が白紙だから女神との契約も白紙なのではないだろうかと思う。しかもここの部分でてくる色が紅白と、本来縁起の良い色でありfakeラッパーの引退を喜んでいる様に思える。
3.まとめ
感想としては「素でエグい」。絶え間なくずーっと韻を踏んでいる。正直気持ち悪い。realかfakeかという議論はずっとある。呂布カルマがイカレテロで「誰かの真似しなきゃみんな本物 なのにfakeがほとんど」と言ってた様に、オリジナリティというのはラッパーにおいてアイデンティティになるものである。それを持たないモノマネ野郎に対するDisがこの曲を通してのテーマである。Rのバースもテーマは同じなのだが、他の3人とすこし違う解釈ができる。それは「お前才能あるかもしれんから誰かの真似せんと頑張りや」というRなりのエールというものだ。タイトルも「それじゃ」無理だから「それ」=「fakeのまま」という考えられる。もう1つあるのだが、賽の河原の件から考えたドラ息子だったRなりの忠告である。若いうちからこんなことしないでまともに働けというものである。僕はR-指定じゃないし、野上恭平の考えは分からないが少なくともこの3種類の考え方はできると思う。まぁ普通に「みんな違ってみんないい」んだから誰かの真似しないでやれよって捉え方でいいと思う。けどこれを売れに売れたcreepy nutsのR-指定達が言うから重みがでてくる。なにを言うかは言わずもがなだが、誰が言うかも結構大事であると最近思う。
それはそうと是非この曲を一度聴いてほしい。RはもちろんテークエムもNORIKIYOもAKLOもトラックのBACHLOGIC全員がやばい。これがYouTubeで26万回再生なのもヤバイ。全員二酸化炭素くらいパンチライン吐いてる。エグい。