私とジェイテクトグループのご縁
ジェイテクトの社長はまたトヨタから来た人なんだ、そう思われる方がいらっしゃるかもしれません。
それは間違いのない事実ですが、私のキャリアとジェイテクトグループには深い縁があるのです。若い頃お世話になった会社、色々なことを教えてくださった人生の先輩方への恩返しとしても、ジェイテクトの社長を勤め上げたいと思っています。
もっと良い歯車を。豊精密とのつながり
トヨタ自動車に入社して間もない頃、私は自動車の駆動部品であるデファレンシャルギヤの生産技術を担当していました。デファレンシャルギヤはデフとも呼ばれ、自動車の左右輪に回転差を生じさせクルマの曲がるに貢献する部品ですが、これは歯車の塊なのです。
このデフに使用する歯車を生産していたのが豊精密、現在のジェイテクトギヤシステムです。豊精密は、海外の歯車メーカーGleason社に負けない日本の歯車メーカーになろうという思いで誕生した会社です。トヨタ自動車は豊精密と一緒にもっと良いデフをつくるために歯車の加工機を開発しており、当時若手だった私は、豊精密の皆さんと昼夜問わず濃い時間を過ごしていました。
先日ジェイテクトギヤシステムの工場を視察したのですが、当時私が携わっていた機械がまだ現役で活躍しており、懐かしく、また感慨深いものがありました。
モノづくりを支える、豊田工機とのつながり
ジェイテクトの前身企業の一つである豊田工機にも大変お世話になりました。
豊田工機といえば工作機械のエルメス、ポルシェともいわれるほどブランド力のある研削盤が代表的製品です。研削盤とは砥石を用いて加工物を研磨する高い加工精度が求められる工作機械で、豊田工機の研削盤は初号機の開発当時から現在までNo.1&Only One製品と言えます。
この研削盤をはじめ、トランスファマシンなど自動車のエンジンやドライブトレーンの生産に欠かせない工作機械で、豊田工機には大変お世話になりました。
ただ、本当にお世話になったのは、機械の供給ということではありません。この加工を実現するためにはどうしたら良いか、もっと加工時間を短くするために何をすべきかというような課題に対して、その解決策を提案してくださったのも豊田工機の方々です。そして、豊田工機の皆さんからは、設備に対しての向き合い方や新しい生産設備をつくる意義などを教わることもあり、自分自身の生産技術に対する考え方の根幹をつくっていただいたことを大変感謝しています。
2024年1月にジェイテクトの顧問に就任して以来、その当時お世話になった方々にも再会することができたのは、大変嬉しく感慨深いものがありました。
というわけで、ジェイテクトグループは私にとって、36年前の新人時代から縁のある会社なのです。
人に歴史あり、会社に歴史あり、人と会社のつながりに歴史あり
Gleason社に対抗しようと生まれた豊精密は、縁あって現在ではジェイテクトグループの一員、ジェイテクトギヤシステムとなりました。一方で、ジェイテクトはGleason社の歯車技術を原点とするTORSEN®という製品を持っています。歴史の中でライバル関係にあった会社の製品が、一つの会社の下に集うこともある。会社の歴史と縁というのは面白いものです。
人に歴史あり、会社に歴史あり、人と会社のつながりに歴史あり、と感じるところに趣があります。
次回予告
「近藤はジェイテクトのもう一つの前身企業である光洋精工との縁はあるのか?」と思われる方がいるかもしれません。これまた、デフとベアリングにまつわる濃いエピソードがあるのです。次回はそのお話を紹介したいと思います。