中期経営計画についてもう少しお話しさせてください
8月27日、ジェイテクトは第二期中期経営計画を発表いたしました。
前回の投稿では、第一期中計を振り返り、ジェイテクトの目指す姿を掲げたJTEKT Group 2030 Vision、そして2030年に向けた数値目標をご紹介しました。
今回は、第二期中計における各事業の戦略と、組織力を高める新たな仕掛けについてお話しいたします。
第二期中計における各事業の戦略
ジェイテクトは、自動車事業、産機・軸受事業、工作機械・システム事業、そしてお客様の製品ライフサイクルを支えるアフターマーケット事業を主な事業としています。第二期中計期間では、それぞれの事業で培ってきたコンピタンスを進化させ、それらを組み合わせることを推し進めていきます。これにより既存製品の価値を高め、さらには新たな価値を生み、社会の持続的発展に貢献していきたいと考えています。
自動車事業
世界ナンバーワンステアリングメーカーとして既存のコンピタンスにさらに磨きをかけ、安全で快適なモビリティ社会の実現に貢献していきます。
例えば、ハンドル操作が楽になり車室空間の自由度を広げる、ステアバイワイヤシステム「J-EPICS®」を開発し、国内外の自動車メーカー様に提案をしています。
また、自動運転システムとドライバーのハンドル操作をシームレスに調和する「Pairdriver®」は、自動運転に一層の安全・安心・快適をもたらすシステムです。こちらも自動運転時代に欠かさないソリューションとして、自動車メーカー様に提案し、世界中のドライバーに嬉しさを提供したいと考えています。
産機・軸受事業
ジェイテクトは、世界で初めて開発したセラミックボール軸受をはじめ、産業機械に使われる大型軸受など、さまざまな種類の軸受を開発してきました。第一期中計期間には、「eAxle」の小型軽量化に貢献する超幅狭軸受を開発するなど、事業の壁を越えた取り組みが実を結びました。
この第二期中計期間では、軸受材料や熱処理技術といったグループが持つコンピタンスを融合することで、これまでにない高付加価値軸受の開発にチャレンジし、半導体やロボットなど成長著しい産業への貢献を広げ、産機や市販ビジネスの拡大を目指していきます。
また、軸受事業で培った設計やモノづくりの知見を他の事業やグループ会社のコンピタンスとつなぎ、ソリューション提案をすることができる下地をつくっていきます。
工作機械・システム事業
ジェイテクトの円筒研削盤は、豊田工機時代から精度の高さで好評を博しています。第一期中計期間には、「JTEKT」ブランドとして小型円筒研削盤G1シリーズと中型円筒研削盤G3シリーズを発表しました。
今後、大型円筒研削盤G5シリーズの発表を予定しており、3つのラインアップでお客様の多種多様なニーズにお応えしていきたいと考えています。
さらに研削領域では、加工用砥石や制御技術などで、グループのシナジーを生かして半導体などさまざまな産業のモノづくりに貢献していきます。
また、クルマの電動化に伴い、電気自動車用の電池は大きな市場拡大が見込まれます。第二期中計期間には研削盤に加え、電池製造設備の生産体制を一層強化し、電動化が広がるモビリティにモノづくり設備で貢献していきます。
アフターマーケット事業
ジェイテクトは、製品を生み出すだけでなくアフターマーケット事業を通じて、世界中のお客様のプロダクトライフサイクルを支えたいと考えています。これまでも世界各地の販売ネットワークを生かし、軸受をはじめステアリングや駆動製品といった多様な商品ラインアップでサービスを拡充してきました。
第二期中計期間では、自動車補修部品を中心に取り扱い製品群をさらに拡大するとともに、アフリカや中央アジアなど新興市場を開拓することで、全世界に私たちのソリューションをお届けし、循環型社会に貢献したいと思います。
新規事業の展望
ジェイテクトでは、第一期中計期間に「将来の種まき」として進めてきた新規事業を、この第二期中計期間でしっかりと「育成」し、第三期での「刈り取りと飛躍」につなげたいと考えています。
高耐熱リチウムイオンキャパシタ「Libuddy🄬」
当初は、低温でも高温でも耐えられる電動パワーステアリングの補助電源が欲しいという自社のニーズに工作機械事業で積み上げた電池製造設備の知見という自社のコンピタンスが応える形で開発されました。
その高耐熱・高出力・長寿命といった特長から、今では多様な産業から関心が寄せられています。昨年末にはメンテナンスフリーの無停電電源装置に採用されました。
今後は、自動運転用バックアップ電源やドローンなどの新たなモビリティへのソリューションとしてお客様に提案していきます。
アシストスーツ「J-PAS」シリーズ
主力製品である電動パワーステアリングのアシスト制御技術を他領域の社会課題解決に生かせないかとの発想からアシストスーツを開発し、現在は介護施設向けに量産したり農業分野に参入したりしています。これからも、重労働負担でお困りの方々へのソリューションとして幅広く提案していきたいと考えています。
今後もジェイテクトは、既存事業のコンピタンスを生かした新規事業の創出にチャレンジし、アカルイミライづくりに貢献していきます。
組織力を高める新たな仕掛け
デジタルモノづくりとデジタル祭り
日本のモノづくりの勝ち筋はデジタルの有効活用です。デジタルを活用することで余力を生み、新たなチャレンジに力を注ぐことができるからです。
しかしながら、現時点でジェイテクトはデジタル化が遅れています。そこで、今年は「デジタル祭り」と銘打ち、社員全員がデジタルリテラシーを高める施策を用意しました。
デジタル祭りでデジタルリテラシーの底上げを行い、企画、設計から生産準備、生産までのエンジニアリングチェーンをつなぎ、ゆくゆくは一気通貫のデジタル流通基盤を構築し、意思決定の高度化と業務効率の向上を実現したいと思います。
人と現場中心の経営
私自身、仕事をするうえで大切にしていることは、人と現場を中心にした経営です。チャレンジが人を育て、人がまた新たなソリューションを生み出すからです。人中心の経営でサイクルを回す環境を整えることが大変重要であるということを、これまでの経験から実感しています。
一人一人の“will”を大切にし、全員が活躍できる環境を整えることが会社の目標達成につながると考えています。それができる仕組み、風土づくりをしっかり私自身リードしていきたいと考えています。
さらには、最も付加価値を生んでいるのは現場であるという考え方に基づき、メンバーが自ら判断し行動できる環境を整える。それが、私が理想とする現場中心の経営です。そのためには、何より元気あふれる職場づくりが不可欠です。私は常々、“Yes for All, by All! みんなのために、みんなでやろう”というメッセージをさまざまな場面で発信しています。仲間を思い、仲間を助け合う人づくり、職場づくり。これについてもしっかり推進していきたいと思います。
ジェイテクトグループは、モノづくりとモノづくり設備の両方を兼ね備える非常に稀有な企業グループです。そんな稀有な存在だからこそ生み出せるOnly Oneのソリューションで、社会やステークホルダーの皆さまに笑顔をお届けしていきたいと思います。
JOINT Technology。これからのジェイテクトにご期待ください。
次回予告
ジェイテクトは、第二期中計でさまざまなことにチャレンジします。しかし、チャレンジには失敗が付き物です。私もこれまでの仕事でたくさんの失敗をしてきました。95%くらいは失敗だったような気がします。
大切なのは、失敗を次にどう生かすのかを真剣に考え、行動に移すということです。
次回は、「失敗は気づきのドライバー」というテーマでお話をしたいと思います。