新規事業も、起業家発掘も。JTBが仕掛ける本気の社内起業プロジェクト「Venture Builder」始動!
JTBのイノベーション創発プロジェクト「nextender(ネクステンダー)」の一環として、新しく、起業人財輩出プログラム「Venture Builder(ベンチャービルダー)」がスタート。その第1ステージとして、書類選考を経て集まった13人とともに新事業のアイデアを作り上げる「Boot Camp」を開催しました。
今回はこのVenture BuilderのBoot Campに参加したJTBの山田と堀江、プログラムの伴走役である株式会社quantum 山守さんとで、Venture Builderへの応募のきっかけやBoot Campの日々について語り合ってもらいました。
JTBの起業人財輩出プログラム「Venture Builder」
山守:おつかれさまです。先日のBoot Campでは、伴走者とはいえビシバシと厳しくツッコミを入れてすみませんでした。
堀江:いいえ。それが山守さんの役割ですから。
山田:そうですよ。すごく助けられました。
山守:私たちquantumでは、さまざまな企業の事業開発を支援したり、一緒に事業創出に取り組んだりしています。JTBさんから「グループの新たな柱となりうる事業創出と、起業人財輩出を実現するプログラムを新設する」とのお話を受け、Venture Builder挑戦者の皆さんを強力に支援する仲間として、ご一緒させていただくことになりました。山田さんと堀江さんはどういった理由でVenture Builderに応募したのですか?
山田:これまでも、社内のビジネスコンテストに毎年応募し続けていました。直近では、私の所属している名古屋事業部で行われている「ONE NAGOYA」という制度で、新規事業開発や他企業との協創活動を検討する機会があり、その場で、ある事業案をプレゼンしたところ、上司から「この案はウチの事業部の外でやるのがいいんじゃないか」という意見をもらって。そして今回、アイデア創発や事業検証をしながら本気で社内起業を目指すVenture Builderが立ち上がったと聞いて、飛びつきました。
山守:そうですか。山田さんにとってすごく良いタイミングだったんですね。実はJTBさんからお話いただいたときに、よくある事業開発の座学の研修プログラムでなく、本気の事業開発ができるように設計したいと強い要望がありました。堀江さんはどういった動機で応募したんですか?
堀江:事業開発の研修プログラムはもう何度も受けていたのですが、座学とか、いつか役立つ学びとか、研修の域を出ないものが多いなと感じていたんです。「研修ではなく、事業開発を経験して力をつけたい」。そう思っていたときに本気度の高いVenture Builderの公募があったので、すごく胸に刺さって応募しました。
山守:Venture Builderには、単なるビジネスコンテストや事業開発研修ではなく、本気で次の柱になる事業、収益を生み出す事業をつくるという目的がありますよね。それゆえ、私も皆さんに事業開発のイロハを研修のように教えたり、優しくフォローしたりできなかったんですよ(笑)。
山田:山守さんはさまざまな企業に伴走していると思うのですが、Venture Builderは他企業のプログラムと比べ、どのような特徴があると感じますか?
山守:Venture Builderは、人財公募→Boot Camp(アイディエーション)→コンセプト検証→MVP検証→MSP検証→事業化&グロースと大きく6つのステップで進みます。このプロセス自体は事業開発において王道のステップであり、他企業と類似しています。
特徴的な点としては、やはり人財育成や風土醸成等ではなく、事業創発へのコミットを強く置いていることと、起業家候補を見出すことを非常に重視していることの2点です。社内ベンチャーとしての事業化、成長までを見据えた内容になっています。だから第1ステージとして先日開催したBoot Campでも一切座学はやらず、やってもワークショップ的なことだけを実施しました。
新事業のアイデアを探る「Boot Camp」
山守:今回、Venture Builderの第1ステージであるBoot Campでは大きく2つのことをやりました。1つ目は 0→1 のアイデアを出すこと。そしてもう1つは、その精度をいかに高めていくかということです。率直にどうでしたか?
堀江:正直大変でした。ただ一方で、本当に面白かったですね。私たちの出したアイデアに真剣に厳しい意見をいただいたので。
山田:私も、第一声としては「正直しんどかった」ですね。特に山守さんや事務局にはオンラインの壁打ちで徹底的になぜ?と問いかけられ、思考の深さが求められました。
山守:オンライン・オフラインあわせて合計10回程度、壁打ちやメンタリングをやりましたもんね。みなさんと壁打ちした弊社のメンバーは、新規事業開発のプロたちです。なかには1000件近くの事業案に携わっている猛者もいて、内容を1、2秒見たら即座にウイークポイントが見えてしまうという人もいます。そのメンバーたちから厳しい指摘やアドバイスを受け続けた。そうとう厳しい2か月間を経て、事業案の発表日を迎えたと思います。
「シニア人財」と「生きがい」をテーマにした事業案に挑戦(堀江)
山守:堀江さんは、「シニア人財」や「生きがい」を扱った事業を提案されましたね。
堀江:そうですね。Venture Builderに参加できることになって、あらかじめ考えていた事業案です。
山守:初期はアイデアが山盛りでしたね。事業案って足し算志向になりがちですが、このまま足し算を続けていっても納得できる内容には絶対なりません。徹底的に価値を絞り込んで削ぎ落としましょうと話しましたね。
堀江:自分としても「そりゃそうだよな」という指摘は非常に多かったですね。でも、ご指摘を踏まえて、自分自身に本当に実現したいことは何なのか、と問い続け、絞り込んでいくなかで、どんどん自分のアイデアが形になって磨かれていくことを、肌で感じました。
山守:当初は大きく2つの要素があって、1つはBtoBの職業に関すること、もう1つはスポーツだとか楽器などの個人の趣味に関することがありましたね。
堀江:最初に本当にやりたいと思っていたのは、個人の趣味の領域に関わるものでした。
山守:そう聞いていたので、シニアの趣味に関するビジネスが出てくると思ったら、BtoB向けの事業案になっていました。どんな思考から、翻意したのでしょうか?
堀江:アイデアの絞り込みを検討するプロセスで、本当に自分がやりたいことに向き合い続けたときに、シニアが生き生きと暮らせる社会を実現したい、という想いに行きついて。シニアになっても生き生きと働ける社会って素敵だな、と。さらに、最終的にはしっかり収益化しないといけない。そう考えたときにBtoBの路線で進めることにしました。
山守:シニアの生きがいを軸に置いたときに、趣味に関する事業案か、職業に関する事業案かを選ぶ必要がある。やりたいことの本質と向き合った上で、収益化を見据えて「職業」にフォーカスするというドラスティックな意思決定をするのは、起業家としての非常に重要な資質の1つですし、印象的な選択でしたね。そして見事に、第1ステップとなるBoot Campの通過者になりました。
堀江:おかげさまで、通過できました。ありがとうございます。しんどかったけど、Boot Camp中は他の参加者の頑張りも見える化されていて刺激になりました。他の参加者の案がブラッシュアップされていくのを見て、「自分も手を抜けないな」と、いい緊張感で過ごせました。非常に価値のある日々を過ごすことができました。
「空き家問題」を解決するビジネスを目指して(山田)
山田:私はBoot Camp中、迷走し尽くしてアイデアが4つポシャって、5つ目の案で最終ピッチに臨みました。大変でしたけど勘とか、思い込みとかを排除して、考え抜いた事業アイデアを発表できたのではないかという気持ちでいます。
山守:山田さんは迷走したと言いますが、「空き家問題」に関する事業アイデアという軸はブレていなかったと思います。ブラしたくない芯はしっかり持って、変えてもいい打ち手は様々なパターンを考えに考えて、最後までやり抜いた。本当に迷走する人は、大事な芯がどこかへいってしまって、自分は何をやりたかったんだと迷子になる人もいますからね。
山田:いろいろなデータを見て、自問自答を繰り返して紆余曲折がありました。
山守 :足を使ってヒアリングもしてきたそうですね?
山田:もともと不動産業界の友人や、その影響で宅建(宅地建物取引士)の勉強をしていて、いろいろ話を聞ける相手がいましたので、実際に空き家を扱う不動産会社にどんなニーズがあるのか、難しい点はなにか、などの話を聞きに和歌山まで行きました。
山守:やっぱり山田さんはテーマに対してのコミットメントがすごかった。そこは絶対にブレないぞ、最後まで貫くぞという姿勢が非常にポジティブに働いたと思っています。
山田:ありがとうございます。
山守:検討を重ねるなかで、お二人ともソリューションの部分は、常に柔軟に変化させていった。最終発表でプレゼンテーションした事業アイデアもさることながら、人柄やマインドセットも含めて評価され見事、Boot Campを通過できました。
山田:最終発表でもモヤモヤしていてあまり手ごたえがなかったのですが、Boot Campを通過できて、ひとまず嬉しいです。堀江さんや他のメンバーにも恵まれて本当に感謝しています。
事業開発のモヤモヤ、その先に待つ喜びとは
山田:Boot Campに取り組んで思ったのは、 起業や事業創出は答えのない世界だということです。努力だけではちょっと難しいところもある。そういう世界で事業アイデア創発や深掘りするということをやっていると、不安や悩みが尽きません。このモヤモヤはいつ晴れますか?
山守:事業開発で何が辛いかというと、一生懸命議論して立てた仮説がけっこう簡単に崩れるということです。
山田:たくさん議論しましたが、まだあくまで仮説ですもんね。
山守:特にこの後、第2ステージであるコンセプト検証に入っていくと仮説をガラッと覆すような事実もどんどん出てくると思います。では仮説が外れた時にどうするのか?ただ悲観するのではなくて、でも、こういう声はあったから、実はこっちに金脈があるかもしれないって、常にポジティブな攻めの姿勢を取っていくことが大事です。
山田:軸はブラさず、それ以外を柔軟に変化させていくということですね。
山守:とにかく失敗を失敗と捉えないこと。JTBはそれこそ業界大手で、みなさんは大企業に長年勤められてきた方々。大手企業は王者の戦略と言いますか、何をやっても正解になるように負けない座組で事業を展開していたりします。でも、イントレプレナーとして社内起業する、しかも既存事業ではないマーケットに挑戦するとなると、間違いや、失敗を避けては通れない世界に潜り込んでいくことになります。ダメと言われたらもうダメ、というようなマインドセットだと、そこで試合終了になってしまいます。
山田:曇りを曇りとも捉えずに、どんな結果が出ても絶対に光や糧があると。
山守:そうです。想定ターゲットや関連会社はこう言っている。マーケットがこう言っている。そういったファクトを踏まえ、会社としてなぜこの金脈に挑戦しないのか?と戦っていく気持ちも重要になると思います。イイ子ちゃんだけでは良い事業は作れない。ぜひそういう意識を持っていただきたいなという風に思っています。何が学べたかを次の糧にすることを徹底したいですね。
山守:堀江さんの事業アイデアは「シニア人財」「生きがい」をテーマにした、社会課題としても非常に大きなテーマです。 逆に言うと、すでに既存プレーヤーもかなり多い世界になってくる。調査ヒアリングをかけていくとおそらく打ちのめされると思います。
堀江:はい。覚悟しています。
山守:「もうやっている」という事実に打ちのめされつつも、あるケースでは手が行き届いてない領域とか、利用企業や登録ユーザーからの、「こういうところは全然フォローがないから、あったらいいな」とか、本当に小さな可能性をつまんで、小さなタネを集めていくことになると思います。
その小さなタネを拾い集めて、ぎゅっと凝縮してサービスにしてみる。するとユーザーから、「これ絶対欲しいです」、「どこで買えるのか」、と言われることがあります。この言葉がでると、その瞬間、それまでのしんどいことが全部ぶっ飛ぶぐらいの感動と出会えると思います。このとき出る脳内物質がクセになるんですよね。
堀江:自分もぜひ、そういった瞬間を引き寄せたいですね。そういうリアルな声や小さなタネをヒアリングで聞き取ってこられるよう、たくさん行動して、仮説検証を積み重ねていきます!
さらなる事業検証プロセスへ。その意気込み
山守:今後、さらにハードな検証プロセスに入っていきますが、今どんな意気込みでいますか?
山田:「やりたいことができる」という一方で、相当ハードなチャレンジになることも覚悟しています。改めて、真剣勝負で本気の覚悟が必要だと感じています。これから先の検証フェーズで、ユーザーの意見をたくさん聞きたいですね。仮説や課題が合っているか、本当にニーズがあるか。自ら足を使って徹底的に検証して、深掘りをしていきたいです。
堀江:今まで以上に本気でやらないといけないと、責任を感じています。プログラムに参加して、サポートの充実度はものすごいし、会社としての本気度が伝わってきます。Venture Builderで、事業開発のステップを具体的に踏んでいけば事業化が見えてくる。新規事業を0から作ったという実績と自信をつけるためにも、徹底してこの機会を使い倒して、みなさんとやっていきたいと思っています。
山守:私たちも、Venture Builderの事務局とともに、ときに厳しく、ときに優しく、しっかり伴走させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。今日はありがとうございました。