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ガザ:主食の小麦を食べれない人もいること

「手足を失って不自由になるくらいなら、命を奪ってほしい」

10月7日以降、ガザの友人Tさんとたまにやり取りをしている。
極限状況に、もう私が何を言っても、安くしか響かない。


パレスチナで、小麦粉は主食。

もちろん美味しいお米料理はたくさんあるけれど、
文化的にも宗教的にも、小麦は特別。

人々は古くなってカビの生えたパンさえ、野良猫や鳥が食べるといいゴミ箱には絶対に捨てない。
 
ガザで、粘土窯を使ってパンを焼く人、空腹をしのぐためにオイルとタイムの質素なパンを食べる子供たち。

小麦粉は命を繋いでる。

でも、小麦を食べれない人はどうしてるのだろう。

Tさんの夫は、3年前にパンを食べなくなった。体質に合わず、小麦粉断ちをした。

人為的に生み出された飢餓によって、ガザから食べるものがなくなっていく。

戦争2ヵ月後、彼女の夫は小麦を食べるしかなくなり、さらに体重が減った。

細い体の夫に「痩せすぎ」と冗談ぽく言うTさんに、夫は「しょうがない、これが人生だ」と笑って返す。


Tさんの家族はガザ地区中部に住んでいる。
食料を売る商店はもうない。

売り手は野菜やわずかに搬入された品々を、通常の何倍もの値段で売っている。
 
Tさんの息子は、肉よりもリンゴが好きな高校生。
成長期だからなおさら食べないといけないが、彼女の地域から食べ物が消え始めてから、偏食やストレスのせいもあり、体がものを受け付けない。

彼は2月下旬に15歳になった。彼の誕生日の日に、Tさんと電話で話した。

UNRWA(国連パレスチナ難民救済機関)から12月ごろに無償配布されていたビスケット一つを6シェケル(約240円)で購入したという。本当はケーキでも作ってあげたいけど、何もないよりはいいよねと笑っていた。

彼女はいつも電話で明るく取り持っている。


ある日、Tさんは僅かなパンくずを鳥にあげようといつものスポットに置いておいた。

鳥はパンを食べなかった。

鳥に向かって叫んでいる母の姿を見て、娘たちが笑う。

「私が鳥に餌をやっているのか、鳥が私に餌をやっているのか、もうわからない」と言って笑っていたけど、涙が出そうになった。 


ガザはもう生物の住める環境にない。

そこら中に転がっている死体の死臭、
溢れかえったゴミ、
白リンなどの化学兵器を含める爆撃で汚染された土地。

急性の肺炎が流行っている。
病気を媒介する蚊やハエも蔓延している。
少し前までテントの密集していたラファのある地域では、
しっぽがついた奇妙な幼虫も大量発生した(のちにアブの一種だということが分かった)。

8か月以上もの間、缶詰を食べ、その缶詰さえも底を尽きている状況だと聞いた。
塩分の高い水を飲み、滅多にお風呂にも入れない。

そして、何とかここまで生き延びたのに、次の日には爆撃で簡単に殺される。



こんな生活はいつまで続くんだろう。


夜に目が覚めて、私はTさんの顔を思い浮かべながら、ただただ祈る。


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