『最長片道切符の旅』を旅する day10 紅葉丼という奇跡
三連休を利用して『最長片道切符の旅』を再開、その二日目。乗り鉄にはハードルが高い山田線で宮古へ。宮古では「紅葉(もみじ)丼」という奇跡に出会い、宿泊先の一ノ関では「もち膳」という郷土食をいただく。グルメ指数が高い一日であった。
北上から盛岡へ戻り、ここから『最長片道切符の旅』を再開。一日四本の山田線快速リアス直通列車で宮古へ、そのまま山田線で釜石、釜石から遠野を通って釜石線で花巻、昨日通った北上経由で東北本線・一ノ関へ。
(北上 1006ー)1056 盛岡 1106ー1312 宮古 1413ー1538 釜石 1553ー1804 花巻 1851ー1943 一ノ関
時間もあるので普通列車で盛岡へ向かう。東北本線のロングシート電車。ありとあらゆる階層、年齢層の客で混雑。立ち客も出る賑わいだ。三連休なので街へ出るんだな。
盛岡 1106発の山田線快速リアスは30%ほどの乗車率。40代、50代の鉄道おやじ多し。沿線は紅葉が始まっている。きれいな川沿いに山を登って行く。
山を登ると肌寒くなってきた。車掌が座席下の暖房コックを開けに来た。みちのくはもう冬に入るのだな。
山田線沿いに整備された国道が通っている。交通量も多い。山田線はこの国道を走るバスに負けたのだ。鉄道は盛岡ー宮古間を2時間2000円で一日4本走る。一方、バスは盛岡ー宮古間を2時間2000円で1時間おきのスケジュールで走る。これでは鉄道は太刀打ち出来ない。
ちなみに山田線の直通普通列車で日中走るのは夕方の一本だけで、これに乗ると宮古で一泊しなければならない。乗り鉄にもハードルが高い路線なのだ。(今回は先のスケジュールがあるので快速に乗った。で、後日、「乗りつぶし」のためにまたこの一日一本の普通列車に乗りに来たのだった)
窓の外は白樺が多いが葉はまだ落ちておらず、紅葉の中の白樺の木がきれいだ。区界(くざかい)は高原に開けた北海道を思わせる気持ちのいい駅だった。
宮古で1時間の乗り換え時間があるのでお昼にする。町を歩いていると食堂の前に「紅葉丼始めました」の貼り紙。紅葉(もみじ)丼というのは聞いたことがない。なんだろ。
食堂に入って聞いてみると、紅葉漬けというのは宮古地方に伝わる鮭とイクラの親子漬けで11月上旬から12月中旬までしか出来ないという。三陸沖で獲れた新鮮な鮭を使い醤油ダレに丁寧につけ込んで作る。漬けてから三日目ぐらいが食べ頃で一週間は持たないという。
いいですなあ、早速いただきました。紅葉丼と言うだけあって鮭のハラミとイクラの鮮やかな朱色が真っ白なご飯に映えて見た目も美しい。ちょうどよく熟れたハラミにねっとりイクラが絡んで丼もおいしかった。地方発送もしますというので、というので自宅用に配達も頼んでしまった。
(後日談)東日本大震災後、お店はどうなっただろうとお見舞いの葉書を出したところ、丁寧に「店は大丈夫だったがとてもお店を開く状態ではない。しかし紅葉漬けの季節頃までにはなんとか店を再開したい」という葉書が来た。よかった、よかった。また季節になったらお願いしたい。
宮古から釜石まで山田線(三陸鉄道リアス線)が続く。車内の会話採録。
(車内のじいさん)「浄土ヶ浜(宮古)の宿に泊まったんだけどョ、出てくるもんが全部魚でよ。野菜も肉もないのさ。鍋も魚、味噌汁も魚、イカと秋刀魚(さんま)の刺身はうまかったナ。けんど、朝飯も魚ョ(笑)」
(車内のばあさん)「私しゃこの辺(織笠)の生まれでネ、そりゃきれいな所なんですよ。天気がよけりゃねえ、いい所なんですよ」
(女子高生)電子辞書で英語の宿題。「あー、終わんねーよお。今朝落ち込んでてよお、ラーメン食べてきた」「あんた、なんでラーメンなん」
(車内のおばあさん)「ここらの子はね、出来のいい子は宮古高校、私は釜石の商業高校へ通いました。蒸気機関車でね、40分かかりました。煤(すす)で目が真っ赤になってね、制服の白いマフラーが帰りには真っ黒になっとるのよ」
釜石から釜石線で花巻へ。二輌ワンマン編成。駅名には賢治由来の恥ずかしいエスペラント語の名前が付いている。遠野はFolkloro(フォルクローロ)。だが、ずっと聞いていると妙に耳に馴染んでくるのが不思議だ。
遠野を過ぎた辺りで壮大な夕焼け。綾織(あやおり)辺りは空が大きくて、住むにはよさそうな所だな。
花巻から一ノ関まで昨日も乗った東北本線。駅前のビジネスホテルに宿泊。ホテルは少年サッカーの一団で大混雑。
夕食はホテル近くの「ふじせい」へ。ここはお餅が有名らしい。一関では婚礼でも祭礼でもお盆でも何かあるとすぐお餅なんだそうだ。頼んだのは「もち膳」。八種類の一口お餅と雑煮。先ずは「あんこもち」から。真ん中は甘酸っぱい大根おろしで口直しに。いや、どれもうまかった。