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何者にもなれなかった「私」のキャリア戦略

「あなたを一言で表してみてください」

就活の時にこの質問を面接官に投げかけられ、自分を正しく一言で答えられた人ってどれくらいいるのでしょうか?

きっと無理やりなキャッチコピーを必死に考えて、体裁は良いけど本来の自分とはかけ離れた一言を答えていた人がほとんどですよね?

いや、そう思いたい。私がそうだったから。

大学3年生の頃、個人がやっている就活塾に行っていました。その就活塾ではOB・OGが面接官をして面接の練習をする「模擬面接」が定期的に開催されていたのですが、そこで冒頭の質問を何度も答えさせられました。

しかし、模擬面接のフィードバックで毎回「あなたのことがよくわからない」と言われる始末。実際に自分でも納得のいく言葉がまったく出てこない。

なんだかんだで3社から内定を頂けましたが、結局、自分のことを最後まで正しく一言で表すことができませんでした。

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世の中、一言で表せる「私」、何者かである「私」を強く求められがちです。

SNSでは強いキャラクターや特徴がないと存在感を示すことが難しいため、なかなかフォロワーも増えません。そのためアカウント名に「無理してるな…」と感じるキャッチコピーをつけてる人を見かけたりもします。

私も一時期「プロ何でも屋さん」と名乗ってた時期がありましたが、しっくり来なくて、すぐ変えました。

新卒の頃の私は「早く何者かにならないと」と焦っていて、何者かになれる気がして勉強会やイベントに出向き、1000人を超える人たちと名刺交換をしていた時代もありましたが、今でも関係が続いている人は10人もいません。

無駄とまでは言いませんが効率の悪いやり方を全力でやってました。

仕事を必死でしていたら何か専門性が身につくのではないかと淡い期待を抱いていたのですが、ベンチャー企業を渡り歩いていたので何でもやる働き方になってしまい、キャリアに特徴が出ませんでした。

正直に言えば、2018年末までは何者にもなれていない自分に絶望していたほどです。

どこかのWeb記事で読んだ、名プロデューサーである秋元康さんの「記憶に残る幕の内弁当はない」なんて言葉が頭にこびりついて離れない日々。何をやっても70点。でも120点のものしか印象に残せない。このままで良いのだろうか。もがき苦しんでました。

しかし今年になって、何者にもなれない私をむしろありのままに肯定することができるようになりました。

周りから見ても変化はあったようで、昔から私を見てくれているある人からは「坂口さんから良い意味でガムシャラ感が無くなった」と言っていただいたほどです。

そんな内面の変化をしたうえで周りを見てみると「何者にもなれない」と生き方に悩む人が私の他にもたくさんいたことに気づきました。

そこで私が過ごした10年間の社会人経験を統括する意味でも、実践してきた仕事におけるキャリアへの考え方をまとめれば、悩む人の助けになるのではないかと思い、このnoteを書き始めました。

ちまたにあるカッコいい成功者のエピソードではなく、むしろ小っ恥ずかしい話のほうが多いのですが、きっと誰かの役に立つと信じて公開してみようと思います。

1:うちはうち、よそはよそ

SNSでは日々「成功者」の発言やニュースが流れてきて、意識をしていなくてもどこか奥底に劣等感や敗北感を蓄えてしまってないでしょうか。

そんな「成功者」からは私の劣等感を逆手に取ったかのように「うまくいく人はこうあるべきだ」と強い語尾で言いきったポジショントークが展開され、自分もそんな言説にいちいち流されていた時期がありました。

しかし「うちはうち、よそはよそ」なのです。そもそもその人たちが成功したやり方が自分の置かれた状況で再現するかといえば結構怪しい。

私の今年の気づきの1つとして「前提条件への意識」があります。

ビジネス書を読んだ時にふと「この話はうちにそのままは転用できない」と気づきました。なぜなら前提条件が違うから。それまでは本に書かれている「やり方」をそのままやろうとしていたんですね。

たしかに、「成功者」の発言やエピソードは理想的だし正論です。ただ、現実では前提条件が異なるために、なかなかうまくいきません。

でも理想論って直感的な正しさが邪魔をして、反論が難しい。なのでうまくいかなくても「できない自分が悪い」と自己嫌悪しがちなんですよね。

だから自己嫌悪の谷に落ちないためにも派手な話には目をくれず、自分の置かれている状況の中で最大限成果を出していく。

あの人と私の前提条件は違うのだから、まずは目の前のことを誠実に取り組んでいきましょう。


2:仲間をつくる

誠実に取り組んでいくと、だんだんと仲間ができてきます。

多くの人に成功者として認められる必要ってそんなにありません。むしろ一緒に過ごしている仲間に認められるだけで、生きていくには十分だったりします。

「何者でもない人」って一言で魅力を表しづらいのですが、少なくともポジティブに自分を表現してくれる仲間がいることは3つの意味で心強いです。

まず、自分を認めてくれる人がいると安心しますし自信につながります。何者にもなれない人ほど自己肯定感が低かったりするので、自信を得るための手段を持つと人生を生きぬく時に有利です。

あと、リアルな話だと転職の時にリファレンスチェックをされたとしても、仲間がポジティブな説明をしてくれることでスムーズに物事が進みます。

また、そんな仲間が自分の次のキャリアや生き方を運んできてくれる可能性も高まります。

私はこの1年で特にそんな仲間が増え、今までやったことない「ラジオ」だったり「スナック」といったチャレンジをしています。そもそも今の会社への転職も新卒の時の上司がキッカケでした。

ありのままの自分を受け入れてくれる仲間を作れば、新しい挑戦をする精神的な支えにもなります。

このあと説明するのですが、何者にもなれない人は何者でもないからこそ、新しい挑戦をし続けて自分の領域を広げでいくことが有効だったりします。

名刺交換を1000人以上としまくった話をしましたが、そこで仲間は作れませんでした。接点の数よりも深さを重視したコミュニケーションをしていくべきなのです。

その深さのあるコミュニケーションには自己開示が欠かせません。素性のわからない人とは仲良くなれないですよね?それは相手も同じです。

自己開示においてSNSは有効です。広く自分を知らしめるために使うこともできますが、たいていの人にとってはSNSのタイムラインで自己開示をして、仲間を見つけるためのツールとして活用したほうが有効だと私は考えています。

別に不格好でもいい。文章がうまくなくたっていい。自分の素直な気持ちを表せば仲間ができますし、認めてくれる人が現れるはずです。

ただ、SNSだけ頑張ると言うよりも、リアルイベントにも参加して、名刺交換ではなくTwitterアカウント交換をすると理想的な仲間が見つけやすいです。

実際に会ったことある人の相互フォローは、会ったことない人よりも体験が付加されてるので深くつながりやすい。それに相手を深く知ることができる。そんなツールとしてSNSを活用するほうが健全です。

とにかく「仲間をつくる」意識を常に持っていきましょう。決してたくさんつくる必要はありません。数人できたら十分です。

3:新しいことに挑戦し続ける

何者にもなれない人は、逆にいうとプロのジェネラリストです。なので、何か1つの道を極めるのではなく、広い範囲を押さえていることが多いです。

となると、新しい領域に挑戦をし続けて、できることを広げ続けたほうがうまくいきます。

といっても、挑戦はリスクが高いですし、精神的なストレスも大きいです。

解決策としては、個人的には先ほどの「仲間をつくる」が1つなのですが、もう1つは「軸をズラす」のがおすすめです。

そうすれば、ある程度自信があるスキルをベースに新しい領域に挑戦ができるのでリスクが少なくなります。

私の場合はWEBディレクターを長年やっていたのですが、このディレクションスキルを軸に少しずつズラしてキャリアを作ってきました。

具体的には広告ディレクター→サービスディレクター→工場の生産管理、とキャリアを積んできました。

生産管理はリアル業界の職能なのでズラすだけでいけるのか?と思われる方がいるかもしれませんが、生産のディレクションと捉えると理解しやすいかもしれません。

もちろん、その業界特有の知識は必要です。が、ディレクションの素地がある上で必死にやれば、2,3ヶ月くらいで致命的な支障が出ない程度には習得できるはずです。

もしそこで習得がうまくできない場合は、なぜ習得ができないのかを分析して自分のスキルをより緻密に把握することができるので、いずれにしてもポジティブな効果が生まれます。

このように軸をずらしてスキルを増やしていくと、それぞれのスキルとのかけ算で人材価値として希少価値が生まれます。

これは私が好きな「100万分の1理論」です。1/100のスキルを3つ持っていると、それがかけ合わさって「1/100 x 1/100 x 1/100=1/100万」の人材になれる。そこを目指すのも1つの戦略なのかなと考えています。


4:ブランド名を使うのも手段

「うちはうち、よそはよそ」と言いつつも、会社のブランド名を活用するのは有効な手段なのであえて避ける必要はないかなと考えています。

私は1社目がYahoo!JAPANだったのですが、この看板があることで普通なら会えない人に会えたり、見れない景色を見れました。

また、このブランドがあったからこそ転職がうまくいった部分も正直あったと思います。良くも悪くもですが「坂口は元ヤフーだから優秀だ」と言われたことも実際ありました。

何者にもなれないと嘆いている時はブランド名に頼ってるかのような状況が恥ずかしくてたまらなかったのですが、今振り返ってみると、ブランド名のおかげでできたことがたくさんあると気づけました。

決してブランドだけを追い求めるのは違います。そうすると看板ばかり大事にしてしまって、仲間を作れなくなりますから。

しっかりと仕事や私生活を丁寧に過ごす。周りの信頼を得る。そこをやった上で、戦略的にブランドを得ていくのはアリだなぁと今なら思えます。

ちなみにブランドはある程度「有名」である必要はありますが、「大手」である必要はないかなと考えています。

要はみんなにそのブランドをどういう存在だと思われているのか?が重要です。その知名度やイメージが自分の人生にポジティブに働くブランドを狙っていくと良いのではないでしょうか。絶対ブランドを狙えとは言いませんが、おすすめです。

素直で誠実に、こつこつと

SNSで有象無象の情報が入り乱れて流れてくるので、自分のキャリアはこのままで良いのだろうかと不安になる気持ちは十分にわかります。

でもだからこそ、目の前のことを努力する→仲間ができる→新しいことに挑戦する・・・これをくり返していくことで、自分のキャリアがより希少性が高く、面白くなっていくのです。

改めていいますが、一般ウケをする必要はありません。自分だけのキャリアを築いていったほうが良い。

万人にウケる分かりやすいキャッチコピーも素晴らしいですが、自分の名前がキャッチコピーになるのも素敵なんじゃないか。

私はまだそこまで到達できていませんが、そんな気持ちでキャリアを考えています。

悩める人の参考になれば幸いです。

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坂口淳一
だいたいスターバックスで、あえてホットティーを飲みながらnoteを書いているので、ホットティー1杯くらいのサポートを頂けたら、こんなにうれしいことはありません。