東大卒アスペが考える、発達障害と会社の飲み会
会社の飲み会は発達障害にとっては辛い。
マルチタスクが要求される上、その場の空気に合った適切な発言が要求されるためである。場の空気を読み取り、適切な発言を繰り返すという一連の作業は発達障害が最も苦手とするものの1つである。正直普段の仕事よりも遥かにサラリーマン能力が要求されると言っても差し支えない。
一応名称は「飲み会」なのであるが、本当の役割は楽しく飲むことではなく、相互の理解を深めたり、相手のことを審議する場である。名目的には業務外なのだが、本当は業務時間よりも濃密な業務の時間である。
筆者はこれまでに会社の飲み会というのは限られた回数しか行ったことがない。
配属された部署が特殊であったのと、筆者自身が回避してきたこと、コロナ禍が要因としてはある。
だが最近は世の中の正常化に伴い、徐々に飲み会が復活しつつある。正直飲み会の復活は辛い。マスクは辛いが、出来ればずっとコロナ禍であってくれ、なんて思ったこともある。
お酒はあまり好きでない上、眠剤と相性がよくないのでなるべく避けたいというのもある。
前置きが長くなってしまったが、今回は発達障害の筆者がどのようにして会社の飲み会に対処してきたのか、その一部を紹介したい。
1.そもそも飲み会は強制参加のもの以外は参加しない、1次会で終わらせる
会社にはどうしても強制参加の飲み会が存在する。部署単位やチー厶単位で行われるもので、異動等を契機に実施されることが多い。
こういったものに参加しないとさすがに角が立つので、筆者も参加するようにはしている。最近は会社の規定により1次会で強制終了する場合も多いが、そうでないケースも稀に存在する。そのような場合には、筆者は何とか理由をつけて1次会で帰宅するようにしている。
発達障害にとって一番つらいのは普段の生活リズムを乱されることである。
飲み会の存在は、間違いなく日常とは異なるイベントであり、生活を掻き乱してくるものである。仕事と異なり、酔いが入ってしまっているため、いきなりスイッチを切り替えることが出来ない点が辛い。
1次会で帰れば遅くとも22時くらいまでには帰宅出来るため、睡眠時間も確保できる。
強制参加の飲み会は基本的に参加し、角が立たないようにし、1次会で帰宅し、睡眠時間を確保するのが筆者の中でのマイルールである。
2.飲み会中のアルコールは1杯まで
これはそもそもアルコールがそこまで好きでないというのと、アルコールが回りすぎると自分自身の意識が朦朧としてきて、失言するリスクが出てくるためである。
やはり一番怖いのは失言したり、誰かを傷つけるような発言をついうっかりしてしまうことである。そもそもシラフでもそんなに上手く話せないので、酔いが回ると尚更厳しい。とかく自分自身の言動に気を付ける必要があるのが会社の飲み会である。
また1杯目をどこまで長く保たせるかというのも重要なポイントである。
1杯目が無くなると、2杯目はどうかと促されるためである。そのため筆者はバレない範囲でお酒はゆっくりと飲むようにしている。
またゆっくりとアルコールを摂取することで、酔いを回さないようにするというのもポイントではある。
3.なるべく自分の話をせず、相手の話を傾聴する
これは自分自身に自信が無く、あまり人に自分の話をしたくないからというのが理由である。
一方昔からではあるが、筆者は相手の話を聞くのが得意らしい。恐らく昔から話下手であったので、相手の話を聴くことがメインであったからだと思う。
そのため、筆者は基本的に相手の話を可能な限り聞くようにしている。きちんと相手の目を見て、適切なタイミングで相槌を入れ、時々質問することで話している人が気持ちよく自分の話を出来るようにしている。こうすることで時間稼ぎと自分の話をしなくて良くなるので一石二鳥だと考えている。特に年配の方は自分の話を聞いてほしい人が多いので、意外とこの作戦が結構刺さったりする。
4.1対1で話せる機会を伺う
筆者は1対1の会話であればそこまで苦労しない。
むしろ1対1の会話は自分のペースに持っていきやすいというのもあるので、別にそこまで辛くない。
発達障害あるあるではあると思われるが、問題になるのは複数人の会話、具体的には4〜5人以上の会話になった時である。3人くらいまでなら何とかなるが、4人を超えるともう会話についていくのは不可能になる。
思い返せば、就活の時のグループワークやグループディスカッションはかなり苦戦した記憶がある。
複数人の会話になると、今周囲が何の話をしているか分からなくなるので適切な発言を適切なタイミングで入れることが出来なくなる。たまに発言出来たとしても場違いな発言になることが多いので、こういう時は適当に相槌を打っておき、とりあえず減点は避けるというのが筆者流の最適解である。正直一番辛い時間であるのだが、しばしば飲み会ではこのような局面になりやすい。何とか時が過ぎるのを待つのみである。
可能であれば、隣の人が大人し目女性や前述したようなおじさんであればその人の話を聞くというのが一番無難である。普段なかなか話すこともないので、どうでも良い表面的な会話でも十分に間は保つし、何より大勢と話す必要が無くなるのがよい。
5.大勢の前では表面的な会話に留める
前述した通りで筆者はあまり飲み会の場やそもそも会社では個人的な話はしたくない。
自己開示が得意でないし、自分という存在に負い目があるので、可能な限り回避したい話題である。勿論出身地とかそれくらいなら全然良いがそれ以上の深い話はしたくないというのが本音としてはある。
時間稼ぎとして、筆者はプロ野球やメジャーリーグ等のスポーツの話をするようにしている。これであれば、誰かを傷付けることもないし、失言する恐れもない。また結構プロ野球は大衆受けするし、盛り上がるので飲み会をうまく乗り切りたいのであれば、欠かせない話題の一つではあると思う。
6.人の噂話には加担しない
これは結構重要なポイントであると思う。
人の噂話というのは飲み会のネタの1つになりやすい。それくらい逆に言うと、皆話す内容に困っているのである。
誰かの噂話をすることで、その場にいる人が傷つくことは無いし、またそのようなパーソナルな話をすることで当事者同士の団結が強まるという効果があるのではないかと考えている。
ただこれは筆者のポリシーというか拘りでもあるのだが、誰かの噂話はしないに越したことはない。その人自身にも自分自身にも害しかないからである。これが筆者が大半の会社の飲み会は時間の無駄で、むしろ有害だと考えている理由の1つである。
7.社交不安障害である旨は事前に伝え、乾杯の挨拶等は可能な限り回避する
筆者は社交不安障害という病を抱えている。具体的には大人数の前でのスピーチの時や、視線が自分に集まる際に得体の知れない恐怖に襲われる。対人恐怖といって差し支えない。
このような症状を抱えているので、可能な限り人前でのスピーチは避けたいところである。
以前執筆した記事にも記載したが、このような持病に関しては事前にメンバーに伝えておくのが無難である。こうすることで自分自身も急に当てられることは無くなるし、相手も地雷を踏む可能性を回避できるからである。言ってみればこれも一種の処世術の一つなのかもしれない。
8.仕事の悩みを個人的に相談をして時間を稼ぐ
筆者が唯一、飲み会の場で特段緊張することなく会話出来るのが仕事の話である。仕事の話の場合はお互いにバックグラウンドも分かっている上、論理的な話で終始するので非常に話しやすい。やはり仕事以外の日常生活の話とか、ちょっとした雑談のほうが遥かに難易度は高い。生成AIも論理的な話は得意であるが、ちょっとした雑談になると突然性能が落ちるのと同じだろう。
このような仕事の悩みの話等は特に上司の方は親身になって話を聞いてくれる。ある意味飲み会の場は本来はそれが一つの目的の一つでもあるからだ。
これは普段の悩みの話をする絶好のチャンスでもあるし、相互理解も深まる。また何より時間稼ぎに有効であるのが何よりも大きなメリットである。
9.お酒を注ぐ、注文を取る等のアクションに時間を使う、気を遣う
発達障害はマルチタスクが苦手である。
発達障害にとっては、お酒を注ぎながら、会話をするのは非常に難しい。そのため、筆者は飲み会中はできるだけお酒を注いだり、注文を取る等のタスクを積極的にこなしている。自分からあまり話をせず、これらのタスクをこなしているのと、その逆で話はしているがタスクをこなさないのでは明らかに後者のほうが印象は悪い。最悪タスクを自分から率先して行えば、減点されることはない。
そのため筆者は飲み会中はまずはタスクをこなすことに集中し、次に何とか会話を少人数で出来るような体制とし、そして相手の話を可能な限り傾聴する。これをしていれば並の評価は得られると考えている。
以上のような方法で筆者は会社の飲み会を乗り切ってきた。
正直、会社の飲み会が終わった後はいつもぐったりしている。飲み会の経験は職務経歴書には書けないし、自分の経験として何も残らない。思い出が残るという意見もあるかもしれないが、筆者の場合は発達障害特有の反芻思考があるので、飲み会中の失言や発言がフラッシュバックしてしまうのであまり良い思い出にはなりにくい。
反芻思考によって、その日の寝付きは悪くなる。飲み会に行くくらいなら正直仕事をしていたい。これなら職務経歴書にもきちんと書けるし。
今の環境は飲み会があまり無いので助かっているが、そのような慣習が残る部署も未だに存在する。そういう部署を引かないように普段の業務をこなし、職務経歴書をアップデートしていくことが身を守るためにも重要なことだと感じる今日この頃である。