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これぞエンタメ!池上永一は楽しい!

『シャングリ・ラ』(池上永一著。2005年角川書店刊)はおもしろかった。

 池上永一は沖縄出身の作家です。デビュー作は『バガージマヌパナス』(一度で覚えられる?)。日本ファンタジーノベル大賞を受賞しました。私、この賞からでた作家さんがけっこう好きです。池上作品で有名なのは『テンペスト』かな。NHKのドラマにもなりました。主演が仲間由紀恵さん。ドラマにすると池上作品のドタバタ感(いい意味での)やぶっ飛び感(いい意味での)が薄れちゃうような気もしますが。

 その他、『風車祭』、『レキオス』、『ぼくのキヤノン』、『トロイメライ』、『ヒストリア』、『海神の島』等、いろいろとご執筆。ほぼ全ての作品の舞台が沖縄です。

 私のように沖縄とは縁もゆかりもない(と思います。たぶん)人間から見れば、沖縄には独特の歴史と文化があります。小説家は文化と美意識を武器に、沖縄の過去と現在と未来を描き出します。
 我々にできるのは、ただ読むこと。作家が作りだした世界をまずは受け取ること。外の理屈ではなく、中の感覚を知ること。沖縄を巡る極めて今日的な問題を考えるために、そこから始めたいと思います。

 さて、『シャングリ・ラ』は、実は池上さんには珍しく沖縄を離れた、東京が舞台の作品です。とはいえ、21世紀半ば、第二次関東大震災後の東京で、貧富の差が恐ろしく激しく、炭素が経済を動かす世界。とても現実味がある世界とは言えませんが・・・。おっと、これ以上は申しません。読んでね。
 
 マンガやアニメにもなっていますが、ゴメン見たことがない。見たいねえ。でも、なんとなく私の頭の中には、作品世界の風景があります。読書って、自分が映画監督になったような気分になれるところがありますよね。ないですか?『シャングリ・ラ』はSFでスペクタクル、ロマンスでコメディで社会派。実写化はできませんが。(いやいや、いまはCGが発達してるから、誰かやっちゃうかも?それはそれで見たいような気もする)池上作品の中でも屈指の重厚壮大さ。登場人物もいっぱい出てくるのに全然ややこしくない。ここはどっぷりとこの世界観を楽しみましょう。
 
 さて、池上作品の女性はスーパー・ガール、スーパー・ウーマンばっかり出てくる。まっすぐに前を向いて突き進んで行く女性たちの物語は、心地いいねえ。池上永一さんお得意のトリビアな知識も盛りだくさん。軍事、ファッション、グルメ、サイエンス。よく調べるなあ。やっぱり、ウィキ・・・と仲良しなのかな?

 池上作品は読み出すと止まらない。私、この間から『ヒストリア』と『海神の島』を読みふけっております。そんな時間があるのかって?なあに、仕事さえさぼれば、時間なんていくらでも・・・

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