NATEC NAR100+NAR-HTレビュー
NATECさんのATUエレメントNAR100とキャパシタンスハットNAR-HTが数量限定で無料レンタルできるとのことで申し込みました。その翌日には発送して頂き、翌々日には届きました。
自宅マンションは管理規約が色々と厳しいのでベランダでの使用についての記述はちょっと差し控え、移動運用での使用感などをレビューしたいと思います。
簡単な自己紹介
かく申す私、今年の5月に開局したばかりのアパマンハムです。自宅マンションのベランダへの構造物の設置が管理規約で禁止されているため、自宅では三脚に乗せたフィールドアンテナのMLA・MK-7AMを運用時のみベランダに置いて運用しています。
その反動という訳ではありませんが、休日はPOTAアクティベータとして近隣の公園で移動運用を行っています。先日は同一UTC日付内に30公園それぞれで10QSOを成立させてPOTA Rover Lionアワードを獲得しました。
最近は専ら愛車のN-ONE RS 6MTのルーフにマグネット基台でモービルホイップアンテナのHF40CLを設置し、駐車場から40m FT8で運用することが多いですが、公園敷地内に機材を持ち込んで運用することもあります。POTAアクティベータ運用の詳細についてはnoteの記事を参照して下さい。
また、DXCC獲得を目指して自宅からもQRVしています。この記事を執筆時点でWorkedがようやく100を越え、Confirmedも90目前という状況です。
準備
POTAだからといって特別なことはありません。ざっくり言えば、運用地として登録されている公園で移動運用し、10QSOすることでこの公園をアクティベートすることができ、達成した内容に応じてさまざまなアワードを獲得できる、というルールです。
今回はこのNAR100とNAR-HTの組み合わせで近所のJP-1997 三木総合防災公園から運用することにしました。
開梱
プチプチでアンテナとキャパシタンスハットが梱包された状態で届きました。梱包を解いて内容物に問題のないことを確認しました。
給電ケーブルの加工
ATUエレメントに給電するためのケーブルが同梱されています。このケーブルの一端には丸型の圧着端子が接続されていますが、もう一端は何の加工もなされていません。こちらは使用する環境に合わせて加工する必要があるとのことで、Y字の裸端子 (ニチフの2Y6) を圧着しました。Φ1.25用の裸端子では銅線が太くて圧着できませんのでご注意を。
エレメントのパッキング (袋)
エレメントはいわゆるロッドアンテナ状で、短かくすると70cmになります。他社製品との比較になりますが、CQオームのカーボンロッドアンテナもほぼ70cmです。さすがにカーボンに比べると重いですが、持ち運びする際にはそんなに気にするほどではないでしょう。
このATUエレメントを裸で持ち歩くのはアレなので、今回はカーボンロッドアンテナの袋を流用しました。サイズはピッタリです。ハットエレメントもこの袋に納めておきます。
マウント金具・三脚
事前にマニュアルを読みながらマウント金具を組み立ててみて、運用時に慌てないようにしておきます。一度組み立てれば、以降はマニュアルはなくても大丈夫かと思います。
三脚は手元にあったSIRUI製のものを使いますが、三脚に直接マウントすることはできませんので、コメットの簡易アルミマストCP-035Plusを繋ぐことにします。
トランシーバー
今回はシンプルに運用したかったので、ATU内蔵のKX2を選択しました。電源はポータブル電源・Jackery 240 Newとし、送信出力は10Wにします。
一般的にはATUエレメントは屋外用の外付けチューナーと併用するようですが、ElecraftのKXシリーズは後述のオプションがあるように、ロングワイヤーアンテナをリグに直結しての運用も想定されています。なので今回は外付けATUは用意していません。
BNC-バナナ変換
KX2に給電ワイヤーとカウンターポイズを接続するため、BNCP-バナナ変換コネクタを用意しました。KX2の純正オプションもありますが、Amazon等で購入できる普通のもので問題ないかと思います。
1:9 un-un
KX2の内蔵ATUではチューニングを取り切れない可能性もあるため、念の為に1:9のun-unも用意しました。この製品は100W PEPなので、FT8運用時は1/5の20Wが目安になるかと思います。BNCP-MPの接続ケーブルも忘れずに。
POTAアクティベータ運用 24/09/29(日)
前日の晩にDX狙いで夜更かしした結果、寝坊してしまい、昼前からの運用となりました。
セットアップ
三脚を広げ、マウント金具を組み上げて三脚にマウントし、エレメントをセットし、給電ワイヤーを接続すればOKです。
グラウンド側にはCQオームの新製品のカウンターポイズを張りました。5mのラジアルが5本接続されている軽量モデルです。ラグがM型コネクタ用の大型のタイプなので、ラジアルケーブルのジョイントセットも併用しています。
40m
まずは7.041MHzでFT8運用です。WSJT-Xでバンドを選択したらKX2のATUボタンをポチッと押すだけでチューニングが取れます。SWRは1.3程になりました。
CQ POTAコールを出すとすぐに応答があり、10分ちょっとで10QSOが成立してアクティベートに成功しました。40mでの運用時間が短かかったからかも知れませんが、国内は1エリアを中心に、4・5・9エリア以外と交信できました。
20m~10m
15mのみ、内蔵ATUではSWRが2.0程度までしか下がらず、un-unを接続して1.0まで下げることができました。精査が必要ですが、キャパシタンスハット込みのエレメント長が、半波長に合致してしまったのかも知れません。
他のバンドは内蔵ATUのみ・un-unなしでSWRを1.0まで下げることができました。
私の自宅からはアジアロシア~中国~インドネシア~オーストラリア方面が開けていることが多いですが、この日は北米の東海岸も開けていたようで、多数のアメリカ局とQSOできました。
ここしばらく自宅からは10mが調子よかったのですが、この日は15mの方がよく飛んでいたようです。この日の海外局との交信状況はこんな感じでした。
アメリカ: 16 (うちアラスカ: 3)
中国: 9
韓国: 2
アジアロシア・インドネシア・カナダ・アルゼンチン・メキシコ: 1
基本的にはこちらからはCQ POTAコールし、応答してもらった形です。カナダとメキシコとの交信は、自宅からは結構苦労した記憶があるのですが、この日はこちらから呼んだらすぐあっさりと交信できてしまいました。
ロケーションとアンテナが違うと大分違いますね。これまでのPOTA運用でもこれほど海外局から呼ばれることはなかったかと記憶しています。また、今回はヨーロッパ方面が開けていなかったので、また別の日時に挑戦してみたいです。
80m
さすがに3.5MHzは内蔵ATUではチューニングが取れませんでした。ここでun-unの出番です。un-unをATUエレメントとKX2の間に挿入することで無事にチューニングが取れ、SWRを1.0まで下げることができました。
ただし日中の時間帯で運用中の局がいなかったらしく、入感はありませんでした。このバンドはまた時間帯を改めて挑戦してみたいですね。
QRT
11:30過ぎから15:30前まで4時間ほど運用してQRTしました。最終的には5つのバンドで63QSOが成立し、うちPark-to-Parkは8QSOでした。
感想
セットアップ
後述の改善点はありますが、基本的にはシンプルな構造なのでセットアップは楽です。
QSY
上述の通り、WSJT-Xでバンドを選択してリグのATUボタンをポチッとするだけで即QSY・即QRVできるのは大きな魅力です。
移動運用時はV型ダイポールを愛用していますが、モノバンドのため、QSYの度にアンテナを下げてエレメント(コイル)を交換してアンテナを上げてSWRを確認してアンテナを下げてエレメント長を調整してアンテナを上げて、を繰り返していましたが、この手間が省けるのは大きいです。
もちろん、ATUエレメントは無指向性でV型ダイポールは指向性なので、DX局にアンテナを向けたりノイズ源にヌルポイントを向けたり、といった芸当ができないことは考慮する必要があります。
エレメントのしなり
ATUエレメントが想像以上によくしなります。急に風が吹いて重心が崩れるなどの不測の事態に備えるべく、三脚を利用する場合は可能な限り足を広げた方がよさそうです。風の強い日など、場合によってはステーを張ることも視野に入れた方がよいと思います。
受信性能
受信性能については可もなく不可もなく、でしょうか。
送信性能
実はPOTA運用中に複数のDXCCの未交信エンティティがCQを出していたので応答しましたが、どこからも拾ってもらえませんでした。今回は10Wでの運用でしたので、単に出力不足だったのかエレメントの送信性能に原因があるのか判断に迷うところです。
ただ、CQ POTAに応答してくれた海外局とは10Wで問題なく交信できましたので、ATUエレメント側に特に問題があるとは思っていません。
改善点
※部品を交換しました。記事末尾の追記をご確認下さい。
組み立てにレンチとプラスドライバーの二つの工具が必要な点は、改善の余地があるかと思います。強度の点で検証が必要ですが、常設ではなく移動運用と割り切った場合は、Uボルトを固定する六角ナットを蝶ナットに交換してしまうのがよいかも知れません。
また、給電ケーブルを固定するのがプラスネジなのはちょっとNGです。ここ一箇所のためだけに、運用時にプラスドライバーを用意しなければならないのは微妙かも知れません。これを蝶ボルトに替えることも検討の価値がありそうです。
マニュアル
耐入力以上の電力で運用しない旨が記載されていますが、ATUエレメントの仕様上、耐入力は設定されていないそうです。この点はナテックさんに問い合わせ済みで、マニュアルの文言を見直して下さるとのことでした。
24/10/25追記: 耐圧についてマニュアルに追記されているようです。
チクチクしない
本文中にも登場しているカーボンロッドですが、剥離してほぐれたカーボン繊維が肌に刺さってチクチクムズムズすることがあります。そのため、設営時は軍手等が必須です。
ステンレス製のNAR100は当然チクチクムズムズしません。敏感肌の方は助かるのではないでしょうか。
24/10/17 追記
購入
レンタル品を購入することにしました。何よりQRV・QSYの楽さが気に入りました。
DXCC
レンタル期間内にWorkedが20, Confirmedも10以上増え、DXCC 100エンティティを達成することができました。
部品交換
マウントのU字ボルトを止めるナットを蝶ナットに交換しました。また、給電ワイヤーを固定するプラスネジも蝶ネジに交換しました。設営に工具が不要となり、荷物が減って運用が楽になりました。
蝶ボルトは10mmだと長過ぎるため、7〜8mmのものが適当かと思います。
24/10/25追記
80m, 160m
KX3に1:9のun-unを接続し、80mと160mの両バンドについて内蔵ATUでチューニングが取れ、QSOもできることを確認しました。
50W運用
50W運用時はポケットバランではなく、大進無線のデジタル50W出力対応のun-unを使っています。
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