論文紹介~食事と健康~
今回は、栄養素と非感染性疾患(Non-communicable diseases : NCDs)の関係に関するシステマティックレビューをご紹介します。
Health effects of dietary risks in 195 countries, 1990-2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017
GBD 2017 Diet Collaborators. Lancet. 2019;393(10184):1958-1972.
DOI: 10.1016/S0140-6736(19)30041-8
GBDとはthe Global Burden of Disease Study(世界の疾病負荷研究)のことで、四半世紀前に世界銀行が初めて発表しました。その後もGBDは各国の複数施設が参加する共同研究として、疾病による死亡や障害などに及ぼす影響を定量化して発表されています。
GBD2017では食品や栄養素の摂取と非感染性疾患の関連についてまとめられています。195か国の25歳以上が摂取した15の食品と栄養素について分析が行われました。
その結果、リスクが高い食事は果物が少ない、野菜が少ない、豆類が少ない、全粒粉が少ない、ナッツや海藻が少ない、牛乳が少ない、赤肉が多い、加工肉が多い、砂糖入り飲料水の摂取が多い、食物線維が少ない、カルシウムが少ない、ω3脂肪酸が少ない、多価不飽和脂肪酸が少ない、トランス脂肪酸が多い、塩分が多いものと発表されました。
健康に良い栄養素の摂取量(図1A)は全体的に最適水準よりも少なく、特にナッツ類、牛乳、全粒粉は少なさが目立ちました。
逆に健康に良くない栄養素の摂取量(図1B)は全体的に過剰で、特に砂糖入り飲料水はかなり多かったです。
国別の死亡率に対する食事の全影響に関して、全体ではエジプトが最多(人口10万人あたり552人)、日本が最少(人口10万人あたり97人)でした。また、心血管系疾患は中国が最多(人口10万人あたり299人)、日本が最少(人口10万人あたり69人)、癌は中国が最多(人口10万人あたり42人)、エジプトが最少(人口10万人あたり5人)、2型糖尿病はメキシコが最多(人口10万人あたり35人)、日本が最少(人口10万人あたり1人)でした。(図2)
死亡率に対する影響は、食塩が多い、全粒粉が少ない、果物が少ない、食事の順に多いという結果でした。(図3)
東アジアと高所得アジア太平洋では食塩の多い食事が死亡の主なリスク因子でした。食塩の多い食事は中国、日本、タイの死亡のリスク因子でした。(図4)
感想
日本は世界的に見れば死亡率は低いわけですが、予想通り死亡のリスク因子は塩分の多い食事でした。食事は毎日のことなので習慣を変えることは大変かもしれませんが、逆に毎日だからこそ意識的に食塩を減らすことができれば死亡のリスク因子を下げられる可能性があります。
患者さんと接する中で、食習慣を見直すきっかけを提供できると良いかもしれませんね。
文責:平山 果歩(自治医科大学附属病院 総合診療内科)
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