[つれづれなる大石橋劇場] お通し否定派ふて腐れ飯。
学生時代の知人と久々に会い、近所の、僕の行きつけの居酒屋へ行った。
個人経営の小さな店だ。
スタッフのお姉さんが注文を取りに来た。
ビールの一杯目は僕はいつもドライビール。
モッタリとした重みが無い辛口の爽快感は、これから脂っこい揚げ物をたらふく詰め込むという、胃袋への合図にピッタリ。
知人はハイボール派だ。
注文後、知人の口から、ネットか何かに毒されたな・・と思われる言葉が出てきた。
「ああ、お姉さん、お通しはいらないから!」
ドヤ顔で画像検索すると出てくるような、テンプレ的ドヤ顔でお姉さんに言い放つ彼。
そう、彼はとても気の良い男だったが、少し拗らせていた。
世の中の色々に文句を言い、自分の中の正論をひたすら相手に押し付ける一面がある。
そして、思い切り行動に移してしまう事がままあった。
僕が「友人」と書かず、ひたすら「知人」と書くのは、その一面が僕は苦手で少し距離をあけているというのがある。
今回の彼の行動は、「勝手に出してくるお通しなんかに金は払わねえぜッッ、そんな悪習断ってやる!」という、本人的には「オレ言ってやった、カッコいいぜ」なものだったと思われる。
しかし、この手のお客が最近多いのか、お姉さんは慣れた口調で
「あー、はい、かしこまりましたー☆
当店では、お席代を頂いた一部をお通しとしてお客様に還元しております。お通しは一膳でよろしいですかー?」
ドヤってしまった手前、彼は「やっぱりくれ」とは言えず。
少し待つと、小皿ではなく、1枚の中皿に盛られた多めのお通しとビール、そして、「お通し」ではなく、「店主からの無料サービス」として、中華料理に添えてある平たいエビせんが皿に盛られて出てきた。
空きっ腹にお酒は良くない。客へのサービスに格差はつけない。という店主の粋な気遣いなのだろう。
でも、彼は終始不機嫌。
舌が肥えているらしく「あそこの店の方が美味い」やら「もっと美味い店知ってる」。
さすがにイカンな・・と思った僕は、やんわりと伝える事にした。
あのね、不愉快な気分になったのも分かるし、不要なものにお金を払いたくない気持ちもわかるけど、お通し自体は、お店の純粋なサービスなのよ?
ただ席代をもらうんじゃ粋じゃない&来てくれてありがとうの善意だと思うよ?
しかし、それにもぶつくさ。
結局、彼は最後まで、この調子で不機嫌を通していた。
知識としての納得はできたが、自分の芯になっている己の正義をなんとしてでも通したかったのかな。
と、そんな漫画でした。
お通しは頼んでないんだから、金を取るのはおかしい。
お通しが不味かったらさらに文句。
そんな意見の人がホント多い。
何でも言えるのと何でもいっていいのは違う。
友人のお気に入りのお店で、失礼な態度をとるのも、どうかと思う。
そして何より、ひさびさの友人との呑みは楽しい気分で飲みたかったなぁ。
と、休日の夕方に一人ドライビール片手にぽつり。
うん、やっぱり僕はお通しが好きです。