so sad(佐渡 太宰治)
新潟出帆。午後二時。
何しに佐渡へなど行く。十一月十七日。雨が降っている。私は紺の着物、袴、安下駄をはいて甲板に立っていた。船は信濃川を下る。川岸に並ぶ倉庫は、つぎつぎ私を見送る。これから日本海に出る。港を見捨て、白い毛布にくるまって寝た。船酔いしないよう神に念じた。
何しに佐渡へなど行くのだろう。昨日、新潟の高校で下手な講演をした。その翌日、この船に乗った。佐渡は淋しいところだと聞いている。前から、気になっていた。心に余裕が出来たら関西をまわりたい。いまは地獄が気にか