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短編集

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カクヨム2020に応募するため、規定のテーマに沿って1200〜4000字で短編小説を書きます
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#病院

佐々木先生

佐々木先生

「佐々木さん、どうぞ」
「失礼します」
 促されて中に入る。精神科の診察室というが、真っ白な壁と床に机と椅子、それから先生の真正面ではなく横に置かれた患者用の椅子があるだけの、そっけない空間だ。窓がなくて天井が低い。
「今日はどうされましたか」
「最近眠れなくて…」
 井上先生は丸顔にめがねをかけた、穏やかそうな男性だ。怖そうな印象はない。ワイシャツとスラックスに白衣を羽織っている。
「そうですか

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