忘れられない患者さん
医者になって最初、初期研修医の4月
私は腎臓内科のローテだった。しかもその中の膠原病のチームで、メンバーは私、医者4年目、講師の3人だった。
受け持ちの中に、SLEを患っているおばあちゃんがいた。
その人は朗らかでちょっと面白い人で、いつもご主人が付き添っていた。
病室に行くと
「あら先生、来てくれたの。お顔が見れて嬉しいわ。」
とニコニコしながら言ってくれた。
その患者さんはしょっちゅう動脈血ガスの検査があった。
ナースは静脈血の採血はできるが、基本的に動脈血の採血はできない。
ほんでもって、するのはワタシ。。
足の付け根の大腿動脈から採るのが一般的なのだが
(何故なら太くて簡単だから)
左手の人差し指に動脈の拍動を確認。
左手の中指に動脈の拍動を確認。
その間を右手に持った針で垂直にぶすっ。
そうすると逆血があるはずなのだが。
が。
。。。
血が上がってこない。。。
患者さんも、患者さんの旦那さんも見ている。
私は冷や汗ダラダラ。
やり直してみる。
また失敗。。
「すみません、すみません。」
と謝る私に、患者さんは
「先生は悪くないの。私の血がないのが悪いのよ。ごめんね。」
と。
「いいえー、◯◯さんには血が通っているんですー。
私が下手なだけなんですー。」
と心の底から詫びた。
どうしようもないので、上級医に半べそを書きながらコール、ということが度々あった。
その患者さんの状態は良くなってきたので、転院することになった。
上級医は、私とその患者さんがいい関係だと知っていたので
「じゃあ先生、転院先まで一緒に行く?」と言ってくれ
その予定だった。
でもその直前に容体が悪化し、転院は延期。
そして私は腎臓内科の2ヶ月のローテが終わり、その患者さんの受け持ちを外れた。
その後また落ち着いて転院した、と上級医の先生が教えてくれた。
それから3ヶ月ほど経った日のこと。
腎臓内科の上級医だった先生からPHSに電話がかかってきた。
「◯◯さん、転院先で亡くなったんだって。転院先からお手紙もらったから、先生の机に置いとくね。」
すごいショックだった。
よくなってたのに。。
居室に戻り、そのお手紙を読んだ。
転院して割とすぐにまた悪化し、そのままお亡くなりになったようだった。
なんだか悔しくて泣いたのを、今でも鮮明に覚えている。
そして、そうこうするうちに私は動脈血ガスの採血をマスターした。
動脈血ガスの採血をする度に
「◯◯さん、私できるようになったよ。」
と思い出し、
「あの時はありがとう。」
と感謝するのであった。
きっと誰でも忘れられない患者さんがいる。
患者さんに育ててもらって、大きくなるのよね。
私は放射線科医になり
今アメリカに住んでいて
患者さんを診ることもないが
ふと思い出したので、書いてみたよ。
私ができなかった、大腿動脈穿刺のコツを説明したYou Tube見つけました。
こういうの、私が研修医の時なかったからね。
まぁあってもできなかったかもしれないけどね笑
最後まで読んでいただきありがとうございます❤︎
これからもどうぞよろしくお願いします!
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