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皮肉
殺されなかった。
死なない程度に追い詰められるのが一番辛いのに…。
また日常が戻ってきた。
虐待される日々が。
もう、誰も何も信じられない。
母と男の元を離れるまで、一生これが続くんだ。
そうだ、高校卒業と同時に家を出よう。
そのためには商業高校に行って就職しなきゃ。
できれば推薦がいいな。
頭はそこまで良くないから…。
生徒会長とかやったら推薦もらいやすくなるんだっけ。
よし、やろう。
こうして私は、なるべく家に居なくて済むよう、部活動や色んな委員会に入り、生徒会長も2期務めた。
なぜか先生達からも好かれており、テストの点はそんなに良くないのにも関らず、成績がそこそこ良かった。
側から見たら学生生活を楽しんでいるように見えただろう。
中学3年生の時、あまり見かけない先生に呼び出された。
「ポロロンさんが”他の模範になる生徒”に選ばれたから、ガイシまで表彰されに行っといで。」
1校につき1人選出されるらしく、私が選ばれたとの事だった。
(家に居たくないからやってただけなのに、本当、皮肉だなぁ)
地元の新聞にも顔写真が載った。
わざわざ母が写真館まで連れて行き、撮ったものだ。
母は元々いじめられっ子で、陰キャだったため、私みたいなのが自分の子供だということが、さぞ、誇らしかったのだろう。
卒業式で答辞を読んだ時も
「隣のお母さんから、お子さん立派になられましたねぇって言われたけど、誰?私、アンタの事知らんけどって感じだったわ。笑」
と、私がどうではなく、周りからどう見られていたかを嬉々として話していた。
うんざりしていた。
心底どうでもよかった。