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詩/小雨

 
  彼は人の気持ちが分からない
  無意識のうちに人を傷つける
  そのことにすら
  彼は気付いていない

  彼は世界に興味がない
  なんのニュースも関心がない
  その都度の目的を果たせば
  もうなにもすることがない
  もうやりたいこともない

  彼はまるでにわか雨
  刹那の生き物
  誰かをひととき不快にして
  誰かをひととき喜ばす
  そして止まらずに去ってゆく

  僕は時々
  彼という雨を乞う
  乾ききった退屈が
  分かり合えないコミュニケーションを求める
  ほしいのは彼だけ
  理解なんかいらない

  どこにも行き着かないボート
  手放したオール
  もうこのまま
  無常で無情なニードルの雨に
  うたれていたい

  灰色の空の
  灰色の海で
  灰色の瞳の彼と
  灰色の夢を見ながら


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わたりどり通信
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