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利他は自利にもつながると信じている

老人ホームでの一日は、慌ただしく、時に心が折れそうになることもある。
けれど、私はこの仕事が好きです。

なぜなら、「人のためにすることは、巡り巡って自分のためにもなる」と信じているからです。

介護の仕事をしていると、「利他の精神」が必要だと痛感しています。
相手の気持ちを汲み、寄り添い、自分の時間や労力を惜しまずに尽くす。

けれど、時には「こんなに頑張っているのに報われない」と思うこともあります。

では、本当に「利他」は「自分の損」なのでしょうか?

私は、そうは思いません。
誰かのために尽くすことが、実は自分自身の心を満たし、人生を豊かにしてくれます。

今日は、そんな私の思いを綴ってみたい。

「ありがとう」が自分を支えてくれる

介護の仕事をしていると、「ありがとう」と言われることがあります。

もちろん、すべての入居者様が感謝の言葉を口にしてくれるわけではありません。

認知症の方の中には、私のことを忘れてしまう人もいるし、
中には理不尽なことで怒りをぶつけられることもあります。

だけど、ふとした瞬間に「ありがとう」と言われると、不思議と心が温かくなる。

ある日、寝たきりの入居者様の体を拭いていたときのこと。
その方は普段、あまり表情を変えず、言葉を発することも少なかったのです。
けれど、その日はぽつりと「気持ちいいね、ありがとう」と言ってくれました。

たった一言。

でも、その一言がどれほど私の心を救ってくれたことか。
自分がしたことが、相手の心に届いたと実感できる瞬間。

それこそが、介護士としての原動力になります。

「誰かのため」は「自分の成長」にもつながる

介護の仕事は、決して楽ではありません。

身体を使う仕事だから、腰を痛めることもあるし、夜勤明けはヘトヘトになることもあります。

感情的にきつい場面も多くみられます。

入居者様やそのご家族との関係に悩むこともあれば、スタッフ間の人間関係に疲れることもあります。

だけど、そんな経験のひとつひとつが、私を強くしてくれました。

最初はできなかったことが、少しずつできるようになります。
苦手だったことが、いつの間にか当たり前にこなせるようになります。

そして、入居者様の「ちょっとした変化」に気づけるようになります。

介護の仕事を通して、私は「人の気持ちを汲み取る力」を少しずつ磨いてきました。

「この方は今、寂しいのかな?」
「今日はいつもより元気がないな」

そんな小さな変化を見逃さずに寄り添うことで、信頼関係が生まれます。
その力は、介護の現場だけではなく、自分の人生全体に活きてきます。

人との関わり方が変わり、家族や友人との関係もより深いものになっていきます。

「誰かのために」という気持ちが、いつの間にか「自分の成長」につながっています。

「してもらう側」から「してあげる側」へ

人は皆、最初は「してもらう側」として生まれます。
赤ちゃんの頃は、親や周りの人に世話をしてもらいながら育ちます。
でも、大人になるにつれて「してあげる側」に変わっていく。

介護の仕事をしていると、「人は皆、いずれ介護を受ける立場になるのだ」と実感しています。

今、私が支えている入居者様も、かつては誰かを支える側でした。
子どもを育て、家族を養い、仕事をし、社会を支えてきました。
そして今は、支えられる側になっています。

いつか、自分も年をとります。

そのとき、私はどんなふうに支えられたいだろうか?
そう考えると、今、私が入居者様にしていることが、
未来の自分に返ってくるような気がします。

「誰かのため」は「未来の自分のため」

利他の行為は、回り回って自分のためになる。
誰かを笑顔にすることで、自分も笑顔になれる。
誰かを支えることで、自分の心も強くなれる。
誰かに優しくすることで、優しさが自分に返ってくる。

もちろん、介護の仕事は大変です。

理想と現実のギャップに苦しむこともあるし、報われないと感じることもあります。

でも、「人のために動くこと」は決して無駄にはなりません。

むしろ、それが自分自身の人生を豊かにしてくれます。
私は、そう信じています。

だから、今日もまた、ユニフォームに袖を通し、入居者様のもとへ向かいます。

「誰かのために」と思いながら。
そして、気づくことがあります。

それが、自分自身のためにもなっているのだと。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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