ドラマ「何かおかしい2」第10話「マッチング」について考察・感想(後編)

ドラマ「何かおかしい2」第10話「マッチング」
ネタバレあります(最終話含む)。

考察前編がこちら↓
主に生放送前の仕掛けについて書いてます。


続きに入ります。ここからは主に放送開始後の出来事です。


⑩番組内での病んでるズ紹介

後の謙信君による衝撃の告白のための前振りです。

ところで病んでるズビジネスって、晴人さんのマッチングサイトに着想を得たものだそうですが、ずっとうまくできていますよね。

晴人さんのマッチングサイトは
・利用者は自力で辿り着くか他のユーザーに紹介してもらわないといけない。
・仲介料をユーザーが自分で用意しないといけないので敷居が高い。
・運営者である晴人さん自身もユーザーの身元がはっきりとはわからない。
・薬物や海外逃亡など、ユーザーの希望に合わせた相手を晴人さんが探さなくてはいけない。
……など欠点や課題も多いです。

謙信君の病んでるズビジネスでは、これらが悉く改善されています。
・アイドルはSNS上でスカウト。アイドルが広告塔となるため、ドクター(ファン)はSNSやライブから容易に集まる。
・アイドルはアイドル活動でお金を稼げるので、仲介料を別に用意しなくて済む。お金が必要なのはゴッドハンド志望のドクターのみ。
・SNSの過去の投稿から、アイドルやドクターのプロフィールがだいたい把握できる。
・カルテを見たドクター側が勝手に相手を選んで勝手によろしくやってくれる。

話を戻します。サブ室に現れた花岡さんが、内山さんを病んでるズの「オペ待合室」と称するチャットに招待します。暴露タイムで運営者=謙信君とスムーズに通話できるように準備です。

気になったのですが、チャットアプリ「Shine Chat」のShineって英語読みのシャインで良いんですよね? まさかローマ字読みじゃないですよね……


⑪花岡さんが晴人さんの過去を追及

花岡さんはサブ室から持ってきた古い週刊誌のインタビュー記事をもとに、デアッター以前のビジネスについて晴人さんを問い詰めます。雑誌を直前までサブ室に置いておいたのは、スタジオにあると晴人さんに警戒されかねないから。

これもあくまで闇ビジネス暴露に繋げるための前振りでしょう。有る事無い事書き立てる週刊誌は尋問の材料として弱い。晴人さんからは猛反論に遭い、マリアさんには若さゆえの盛りエピソードと誤魔化されました。

マリアさんがここで晴人さんのフォローに回ったのは、花岡さんとの繋がりを隠すためと推察されます。

それでも花岡さんはわざと無理な追及を続けます。土屋さんを苛立たせ、話を打ち切らせるためです。

案の定、土屋さんは花岡さんを遮って強制的に次のコーナーへ進めました。サプライズゲストで謙信君が登場する次のコーナーへ。このスムーズな視点移動を実現したのは、花岡さんの構成作家としての腕ですね。


⑫謙信君による暴露その1

サプライズゲストとして登場した謙信君が、晴人さんの闇マッチングサイトと、自身の病んでるズプロデュースを暴露します。

親の愛に飢えたエピソード → 父を敬愛し父のような仕事をしたい → 晴人さんの闇マッチングビジネスをメール履歴付きで公開 → 自分も似たような事やってます → 病んでるズプロデュース告白。きれいな流れです。花岡さんも適宜アシスト。

謙信君の話し方も上手です。父の部屋、父のような仕事をしたい、などと晴人さんにリスナーの注目を集めています。教育面での責任は夫婦2人にあるはずですが、闇マッチングの暴露と相まって晴人さん1人が悪人のように映ります。

わざわざこんな話し方をしたのは、花岡さんに協力するフリと、次の暴露へ向けてマリアさんを油断させるため、そして親の犠牲アピールで世間の同情を買うためでしょう。

ダメ押しの「パパ、ママ、褒めて!」は圧巻。この台詞を聞いたら誰も謙信君を責めようとは思いません。むしろ被害者として精神的ケアなど支援の対象になるかもしれません。少なくとも将来への影響は、普通に病んでるズの件がバレた時と雲泥の差。

「パパ、ママ、褒めて!」は謙信君の心の叫びではなく、計算尽くの台詞だと推察されます。謙信君の親の呼び方が「パパ、ママ」「お父さん、お母さん」「父、母」の3通りで揺れているのがずっと気になっていました。TPOに応じた呼び分けはあるにしろ、公私で2通りが普通ではないでしょうか。

登場時の挨拶や出演者との会話から、謙信君にとって公的な場での親の呼び方は「父、母」。少し砕けた時や京極夫妻への声かけから、私的な場での呼び方は「お父さん、お母さん」だと推測されます。「パパ、ママ」は前の2つの呼び方に比べて幼い、逆に言えばイノセントな印象。

だから親に心酔するあまり壊れた息子ちゃんとして憐れを誘うために、わざと普段と違う「パパ、ママ」呼びをチョイス。晴人さんはそれどころではなく、マリアさんは計画がうまくいって浮ついているので些細な違和感に気づかない。そもそも月に2回程度しか会わないそうなので、呼び方などもともと把握していなかった可能性も大ですが。


⑬収録後の花岡さんとマリアさんの密談

ここで花岡さんがマリアさんの事務所に許可を取った上で晴人さんに関する暴露をしていたこと、マリアさんが晴人さんと謙信君の裏情報を提供していたことがわかります。

花岡さんの暴露がヤラセである証拠として、この会話の音声データを上村さんが最終話で持ち出してきます。上村さんはどうやってデータを手に入れたのでしょうか。

2人のうちどちらかのスマホに録音アプリが仕込まれていたと考えるのが自然。おそらく、謙信君がマリアさんのスマホに細工を施したのでしょう。

スマホのロック解除にもアプリのインストールにも通常、パスコードや指紋認証が必要です。花岡さんのをクラックするのは困難でしょう。一方の謙信君なら、母であるマリアさんのパスワードを推測したり、後ろから覗き見たりするのは簡単です。

謙信君が上村さんにデータを提供した理由としては2つ考えられます。親への復讐と自身の闇ビジネス清算のお膳立てをしてくれたお礼と、上村さんに恩を売ることで後々の面倒を避けるため。

上村さんがこの音声データを求めた理由も2つ。花岡さんのヤラセの証拠を掴んで追い詰めるためと、マリアさんを確実に失脚させるため。

スズネさんの失踪は過去の話です。スズネさんがマリアさんのケータイを勝手に使って自殺した、など言い逃れができないこともありません。だいぶ苦しいですが。

だから上村さんは現在進行形の悪事を捉えようとした。昔の事件と合わせれば、反省も後悔もしないマリアさんの利己的な姿にイメージは失墜。再起は不可能。


⑭謙信君による暴露その2

花岡さんと通話するマリアさんに、マネージャーらしき女性が動画を見せてきます。謙信君がスズネさん失踪の真相と、晴人さんとの裏の繋がりについて語っています。

ここでやっと、上村さんと謙信君の当初の計画が果たされました。上村さんにとっては真の標的への制裁、謙信君にとっては自分を愛してくれなかったもう1人の親に対する復讐になります。

動画の下には「UCCHIE&TA-JIチャンネル」と表示されており、内山さんと田島さんも出演しています。2人も上村さんの協力者と考えて差し支えないでしょう。動画チャンネルの立ち上げには時間がかかります。事前の準備無くしてあのスピーディーな配信はあり得ません。

上村さんが内山さんと田島さんを巻き込んだのは、リスナーの注目を集めるためと、花岡さんに仕込みを悟らせないようにするため。

若い内山さんと田島さんの方が喋りも上手でノリも良く、視聴者も食いつきそうです。さらにオビナマにおいて上村さんは立場こそ上ですが、ずっとサブ室にいてリスナーには認識されない。

一方、内山さんや田島さんは放送のアシストや中継でリスナーの耳目に触れる機会があります。謙信君の暴露がオビナマの延長であることをはっきり示すため、上村さんは2人に配信を頼んだのです。

さらに、この配信を見て花岡さんは「知らなかった」と状況を呑み込めない様子。もし動画に上村さんが出演していたら、花岡さんならしてやられたと察したはず。そこにいたのが内山さんと田島さんだったから、2人がいつどこで謙信君と繋がったのかと混乱した。

1人で活動しており、信頼できる相手のいないであろう花岡さんに、仲間と協力するという発想はありません。全て上村さんの描いた絵図であると気づけない。

内山さんと田島さんは危ないネタを面白がるタチですから、上村さんからの動画出演依頼を二つ返事で引き受けたことでしょう。

マリアさん、SNSの凸部隊に取り囲まれて写真を撮られていましたが、あの後どうなったのでしょう。視聴者たちの雰囲気からして、もし1人が車を蹴りでもしたらたちまち暴動に至りそうです。


あらためて結論です。
・上村さんは謙信君と協力して京極一家三人全員の秘密を暴露した。動機は過去のヤラセ番組のトラブルでマリアさんに恨みがあったため、アクシデントでオビナマを終了させるため、ついでに花岡さんを出し抜いてヤラセの証拠を掴むため。

・花岡さんはマリアさんと協力し、謙信君を利用して晴人さんと謙信君の闇ビジネスを暴露した。しかし全ては上村さんの掌の上。動機はただ面白そうだったからと、自身の動画チャンネルのフォロワー集め。

・謙信君は上村さんと結託。マリアさんと花岡さんに協力するフリをして、晴人さんと自身の闇ビジネスを暴露。さらに内山さんと田島さんと一緒にマリアさんの妹失踪の真相も暴露。動機は自分を利用するばかりで愛してくれなかった親への恨みと闇ビジネスの清算。

・マリアさんは花岡さんと結託。晴人さんと謙信君の秘密を売った。動機は自分の野心のため。最後には自身の後ろ暗い秘密も暴露されてネットの凸部隊に襲撃された。過去のヤラセ番組の関係者。

・晴人さんは妻や息子の企みを知らずオビナマに出演し、過去の闇ビジネスを暴露された。マリアさんの妹の失踪に関与し、謙信君の闇ビジネスのモデルにもなっている諸悪の根源。

・内山さんと田島さんは謙信君と一緒にマリアさんの妹失踪の真相を暴露。動機は上村さんの指示と、単に楽しそうだったから。

シーズン1も含めて、花岡さんの焦り顔を初めて見た気がします。笑ってるかつまらなそうにしているかがデフォルトな印象なので新鮮です。

「相手の了承を得ても殺人は犯罪です」という当たり前過ぎるテロップはウケました。

書いている本人も驚くくらい長くなりましたが、お付き合いいただきありがとうございます。

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