ドラマ「何かおかしい2」上村さんの計画と行動について考察・まとめ

ネタバレあります。

ドラマ「何かおかしい2」の上村さんの計画と行動について考察していきます。

「何かおかしい2」は多彩なヒトコワが毎回違ったアプローチで描かれていて、毎週楽しみに観ていました。全編を貫く上村さんの企みが今回のシーズンの特徴であり、異様な執念と周到な罠に惹き込まれました。

しかし上村さんの行動には、一貫性を欠いたりターゲットに逃げ道を残したりと不自然な部分が見られます。

ここまで各話の出来事について考察記事を書いてきましたが、今回はシーズンの根幹を成す上村さんの計画に注目し、行動やその背後にあるものを考えていきたいと思います。

結論を先に書くと、
・第1話の田中シューさんへの復讐で、上村さんの当初の目的は達成されていた。
・第2、3話で番組打ち切りを画策したが失敗したので、それ以降は「スピリチュアルな時間ですよ」関係者に順番に復讐していくことにした。
・第10話の京極マリアさんで「スピリチュアル〜」の直接の関係者への復讐は完了。
・サイバーネットジャパンの不祥事で本格的に番組の終わりが見えたので、最後にヤラセの根本的解決のため視聴者を狙った。
・エンディングが「Suki Lie」の回は上村さんが積極的に動いている。


①第1話「てるてる坊主」

復讐回。メインターゲットは田中シューさん。動機は弟を自殺に追い込んだ恨み。協力者は弟の元婚約者。

サブターゲットは河園監督。河園監督はオビナマへの注目を集め、田中シューさんへのダメージを大きくするためにゲストに呼び、弟の元婚約者からの協力を取り付けるためにハラスメントへの復讐に手を貸しました。

もしかしたら土屋さんもサブターゲットに含まれるかもしれません。最終話で上村さんは、弟の復讐を第一の目的としてオビナマneo を立ち上げたと話しています。上村さんはこの回でオビナマneo が打ち切りになると思っていたのではないでしょうか。

そうなるとオビナマneo の関係者には痛手。特にディレクターの責任は重い。罪もない人にそんな損な役回りを押し付けるのは気が引けるので、過去のヤラセ番組の因縁があり、不謹慎ネタが好きな土屋さんを呼んだと推察されます。

第1話の考察記事で書いた通り、田中さんと河園監督にはこの復讐を回避、あるいはダメージを軽減できるポイントが複数ありました。上村さんたちは入念に計画を練ったはずなので、これは穴ではなく良心や慈悲でしょう。初めてかつ最初の復讐実行だったがゆえの優しさではないでしょうか。


②第2話「おだいこさま」

最終話で上村さんはゲストのサトシさんを「オビナマを終わらせるために呼んだ」と話しています。つまり第1話の時点で当初の復讐は完了していたことになります。

ここで気になるのが、サトシさんの悪事に上村さんが手を貸している点。しかもあろうことか狂言自殺。

上村さんは決して社会正義に則って行動する常識人などではないと窺えます。この後、過去のヤラセ番組関係者に制裁を加えて回りますが、ヤラセそのものを許せないわけではないようです。サトシさんの自殺未遂騒動もヤラセといえばヤラセですから。

ただし、サトシさんの場合は当事者であるサトシさん自身が乗り気でした。お金のために仕方なく偽霊能者をやっていた高橋千鶴子(千里眼ヒーラー麻里子)さんとは別と言えば別かもしれません。


③第3話「ぷろばびりてぃ」

プロばあちゃんもオビナマを終わらせるためのヤバい人枠で採用したそうです。

この回には「スピリチュアルな時間ですよ」出演者のヒカリさんも登場しますが、彼女は酷い目に遭うどころか過去の罪を首尾よくプロばあちゃんに擦り付けることに成功しました。

ヒカリさんは高校時代、友人のトモちゃんに水仙を食べさせて車椅子生活にしてしまいました。そんな人ですから、「スピリチュアルな時間ですよ」のヤラセ問題が発覚した時も責任をよそへ押し付けて逃げていてもおかしくない。

上村さんがヒカリさんに協力した理由としては3つ挙げられます。

1つ目は、プロばあちゃんのインパクトを全面に押し出すため。ヒカリさんの過去の悪事よりもプロばあちゃんの連続殺人の方が、圧倒的に罪も衝撃も大きい。

だからオビナマ打ち切りと忌々しいサイバーネットジャパンへの打擲のために、プロばあちゃんを優先した。

2つ目は、もっとトモちゃんに期待していたから。嫌味を言うだけで済まさず、トモちゃんがもっとヒカリさんにいろいろ言うなり何なり頑張ってくれると思っていたから、上村さん自身は特に手を打たなかった。

3つ目は、この時点では「スピリチュアルな時間ですよ」にあまりこだわっていなかったから。ヒカリさんは単なる出演者の1人で、ヤラセへの関与は少ないはず。だから最初から復讐する気に乏しかった。

もしかしたら、ここでヒカリさんと再会して運命的なものを感じて「スピリチュアルな時間ですよ」関係者への復讐を本格的に決意したのかもしれません。そうでなければもっと早く、10年も待たずに復讐を計画・実行していたはず。


④第4話「にせ雨穴」

復讐回です。ターゲットは土屋さん。実行者は梶川さん。動機は過去のパワハラ。上村さんは場所提供や中継誘導などで復讐のお膳立てをした。リポーターの樋口さんは完全な巻き添え。

この回から、上村さんによる「スピリチュアルな時間ですよ」関係者への復讐が始まります。土屋さんを最初のターゲットとしたのは、当時のディレクターであり、ヤラセの主犯といえるから。

てるてる坊主の一件でも番組が打ち切りにならないくらい、サイバーネットジャパンは倫理的にゆるい。ですがしょっちゅうトラブルを起こしていては、いずれ処分が下るでしょう。だから、恨みの深い相手から先に成敗することにしたのでは。

逆に「スピリチュアル〜」関係者でありながら、梶川さんとは協力関係を結んでいます。上村さんは当時の関係者全員を憎んでいるわけではなく、ヤラセへの関与や対応、当時の被害や現在の境遇で対応を決めているのでしょう。

梶川さんに実際の制裁を任せたのは、梶川さんがやる気だったからというのは勿論ですが、オビナマへのダメージを最小限にしたかったからと考えられます。

ディレクターのパワハラ発覚は番組の傷になる。河園監督失脚でも続いたオビナマですから、そのくらいは大丈夫でしょう。でも暴露を仕組んだのがプロデューサーとなれば大問題で、オビナマが終わりかねない。

その梶川さんが流血沙汰を起こしてしまったのは上村さんにも予想外でした。それにもかかわらず、オビナマが続いたのは奇跡的です。上村さんの「この番組は持ってる」は良くも悪くも本心でしょう。


⑤第5話「カワイバコ」

復讐回です。ターゲットは小手さん。実行者はキッチンゆめまぼろしの店主と仲間たち。動機は口コミ代行で大事な店を閉店の危機に追い込まれたから。上村さんは復讐に手を貸しました。

小手さんも「スピリチュアル〜」の出演者でした。土屋さんの次に標的にされたところを見ると、ヤラセへの関与が深かったか責任転嫁が酷かったものと推察されます。

復讐が続きます。上村さんは「スピリチュアル〜」関係者に制裁を加えると決意したようです。実際の制裁をゆめまぼろし店主に任せたのは、自分が表に出たくないからでしょう。

上村さんが姿を見せれば、オビナマ被害者の共通点に気づく人が現れるかもしれない。そうなれば他のターゲットに警戒されたり、上村さん自身の身が危なくなったりするおそれがありますの。

⑥第6話「猫又様」

復讐回。ターゲットはリポーターの谷口さん。実行者はバスト山内さん。動機はペットの猫への虐待。上村さんは山内さんをけしかけて、番組内で谷口さんに制裁を下すよう仕向けました(第6話考察記事参照)。

谷口さんも「スピリチュアル〜」の出演者でしたが、当時は若くそれほどヤラセに関与していなかったのではと思われます。上村さんは、もはや少しでもヤラセ批判から逃れた人を片っ端から狙っているように見えます。

そしてやはり自らは手を下しません。とはいえ慈悲の心も垣間見えます。谷口さんには小手さんと違って制裁回避の術がありました。

ただし、最終話に出てきた「スピリチュアル〜」関係者一覧に書かれている人がすべてとは限りません。タイミングから、あの書き込みは上村さんによるものと思われます。自分の真意が伝わるように、復讐対象者と協力者の名前だけ挙げたのでは。リサーチャーが花岡さん1人なわけないですし。


⑦第7話「ほんもの」

復讐回。ターゲットは峯岸作さん。実行者は高宮エリカさん。上村さんは花岡さんとともに復讐の舞台を用意しました。

異色の回です。峯岸さんも高宮さんも「スピリチュアル〜」関係者ではありませんし、ヤラセ云々の恨みがあるはずの花岡さんを協力者としています。

上村さんは最終回で、一連の復讐の協力者として高宮さんを挙げています。しかし、この回ではどちらかと言えば高宮さんの復讐に上村さんが協力しているように見えます。

もしかしたら上村さんはこれまでの復讐に、エキストラやSNSのサクラのような形で、高宮さんの力を借りていたのかもしれません。そう考えると「協力者」の意味が通ります。そして峯岸さんへの制裁を手伝ったのは、それまでの協力への返礼。

花岡さんと手を組んだのはなぜでしょう。理由はいくつか考えられます。

1つ目は、後で叩き落すためにこの段階では一旦上げておくことにした。ナーハー砲がヤラセだと気づいていた場合はそれを暴露すればいい。ヤラセだと気づいていなかったケースでも、秘密を暴露された人たちに訴訟を呼びかけて花岡さんを追い詰めるという手があります(というか、こっちが正攻法ですが)。

2つ目はヤラセと気づいている/いないに関わらず、番組への注目を集めるために利用しただけ。用済みになったら適当に切り捨てるだけでも、プライドの高い花岡さんにはダメージになるかもしれません。


⑧第8話「めいこん」

ターゲットはアヤさんとマナミさん。実行者はメグさんとそのお母様。上村さんはアヤさんとマナミさんを、メグさんへ人身御供として差し出しました。

「スピリチュアル〜」でアヤさんとマナミさんがどんな役回りだったのかは明らかにされていませんが、一出演者なら責任転嫁合戦に加わったかいち早く逃げた程度でしょう。

上村さんもそれを承知しているためか、今回の流れにはあからさまな違和感がいくつもありました。アヤさんとメグミさんへの逃げ道です。2人が生贄になったのは欲に目が眩んだから。ひょっとすると上村さんも少しは罪悪感があり、そこから目を背けるために2人に非があるような構図にしたかったのかもしれません。


⑨第9話「ひきこさん」

ターゲットはカオリン。実行者は七北市議とその取り巻き。動機はいじめ撲滅。上村さんは制裁の様子を中継しました。

カオリンも七北市議も「スピリチュアル〜」出演者ですが、かたや引き摺られて大怪我、かたやイメージアップ。この差はなんでしょう。

④と同じく、ヤラセ被害の程度や当時の態度によると考えられます。ドラマ内で上村さんは七北市議について、ヤラセ番組のアナウンサーをしていたために落ち目になったと同情的に語っています。過去のバッシングやネットでの中傷といじめを重ねて、いじめと闘う彼女にシンパシーを覚えた可能性もあります。


⑩第10話「マッチング」

メインターゲットは京極マリアさん。京極晴人さんは連座あるいは前振り。協力者は2人の息子の謙信君。謙信君については、最終回で上村さんが番組終了のための所謂ヤバい人枠であると語っています。

久しぶりにオビナマ打ち切りのためのキャスティングが出てきました。書き込みに名前があった「スピリチュアル〜」出演者はマリアさんで最後です。上村さんとしても、これで一段落というつもりだったのでしょう。

花岡さんはまだ制裁を受けていませんが、この回の最後でナーハー砲がヤラセである証拠となる会話を録音されています。それがあれば、オビナマに拘らず花岡さんを潰せます。

それでもオビナマは終わりませんでした。上村さんのサイバーネットジャパンに対するヘイトの一端はここに起因するのではないでしょうか。報われない努力と、企業のバズり至上主義的な倫理観。


⑪第11話「人探し」

ターゲットは花岡さん。協力者は内山さんと田島さん。巻き込まれてとして力也さん。

「スピリチュアル〜」関係者でヤラセへの関与があり、なおかつ勢いに乗っている唯一の人です。しかも人の弱みや秘密を使って人気を得ている。どちらかと言うと、過去のヤラセよりも現在の悪事から、上村さんは花岡さんを憎んだのではないでしょうか。暴露はネットでの中傷を招きます。ヤラセがばれて世間から叩かれた嫌な記憶と繋がってもおかしくありません。

元男子生徒Aかもしれない人を探したのも、番組がもはやどうなっても良かったから。暴露や復讐はお目溢しいただけても、重大犯罪はBPOやセンシティブな方々もいますから扱いづらい。

ガセネタを掴まされて恥をかかされた程度では花岡さんはくたばらず、元男子生徒Aの素顔を映したのにオビナマは問題にならなかったのですが。


⑫第12話「お化け屋敷」

ターゲットは「スピリチュアル〜」視聴者。実行者は上村さんと高橋さん(a.k.a 千里眼ヒーラー麻里子)。動機はヤラセにおいて一番悪質で一番無責任な視聴者に恐怖を味わわせたかったから。

サイバーネットジャパンが顧客情報悪用で危ないと知り、上村さんは番組の終わりが近いと悟りました。だからもうヤラセをしようと思う人や、ヤラセを求める人がいなくなるような根本的解決を目指しました。

サイバーネットジャパンと花岡さんも大打撃を受けていますが、おまけやついでのようなものでしょう。(第12話考察記事参照)。


*エンディング曲の使い分けについて

前半は奇数回がSuki Lieで偶数回がIntersolid 、後半は逆になっています。単に初回と最終回にシーズン2オリジナルであるSuki Lieを流したかっただけかもしれませんが、私はSuki Lieが使われたのは上村さんが積極的に動いた回だと考えます。

1話と12話は言わずもがな。3話ではプロばあちゃんを殺害し、5話ではカワイバコをスタジオに仕掛けています。8話ではメグさんたちと結託してアヤさんとマナミさんをめいこんに送り出し、10話では謙信君を協力者に引き込むとともに、花岡さんとマリアさんの密談を録音しています。

シリーズ構成の面から見ても、上の仮説は理に適っています。何かおかしい2は奇数回のみ無料で先行配信されました。前半は上村さんの暗躍をちらつかせて視聴者の関心を引き、後半は敢えて見せないことで配信されていない回への興味を高める。

そうなると自然とSuki Lieが流れる前半の奇数回は上村さんが積極的に動き、後半は鳴りを潜めることになります。


というわけで結論。
・第1話の田中シューさんへの復讐で、上村さんの当初の目的は達成されていた。
・第2、3話で番組打ち切りを画策したが失敗したので、それ以降は「スピリチュアルな時間ですよ」関係者に順番に復讐していくことにした。
・第10話の京極マリアさんで「スピリチュアル〜」の直接の関係者への復讐は完了。
・サイバーネットジャパンの不祥事で本格的に番組の終わりが見えたので、最後にヤラセの根本的解決のため視聴者を狙った。
・エンディングが「Suki Lie」の回は上村さんが積極的に動いている。


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