宗教や信仰についての雑記 #152
◯「遂げる」
先日ふと、「遂げる」という言葉が気になりました。
「遂げる」という言葉には主に、 目的を達する、果たす、なしおえる、といった意味があります。
ですからこの言葉は、思いを遂げる、志を遂げる、成長を遂げる、飛躍を遂げる、変貌を遂げるといった使い方がよくなされるようです。
私が気になったのは、この言葉が「非業の死を遂げる」という使い方もされることです。
「非業」とは前世の業因によらないことという意味だそうで、「非業の死」とは前世の善因を受けない死のことのようです。不慮の死や理不尽な死のことなのだと思います。
そのような死になぜ「遂げる」という言葉が使われているのでしょう。
「遂げる」という言葉には、最後にそういう結果となるという意味もあるので、おそらくこの場合はそういう意味で使われているのでしょう。
ただ一方、「往生を遂げる」という使われ方もあります。「往生」とは現世を去って仏の浄土(極楽浄土)に生まれることです。
つまり「往生」とは仏教徒にとって主たる目的のひとつとも言えます。それ故この場合は、目的を果たしたという意味で「遂げる」という言葉が使われているのでしょう
そう考えると、「非業の死を遂げる」という言い方の中の「遂げる」には、現世では前世の善因を受けられず、志半ばにして亡くなってしまったけれど、浄土に生まれて煩悩の苦しみを克服したのだと、そのような意味が込められているようにも思えます。
その「遂げる」とは、そのような願い、あるいは祈りとしての言葉であるような、そんな気もするのです。