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ほんとうに好きな対象には距離を少し取ってしまう話(が、どの程度ほんとうに「理解できる」って感じてもらえるのかはちょっとわかんない)

中村一義という音楽家・アーティストがいる。

彼のその鮮烈なデビュー時から、強い強い感情をぼくに抱かせた。

憧れ。(ビートルズのメンバーと同じ楽器を揃え、演奏を独学で身につけ、宅録多重録音で衝撃的なデビュー作をひっさげ世に、あるいはロッキングオンJAPANの誌面に登場してきた感じ)

羨望。(彼のスタジオ=「状況が裂いた部屋」の写真を見ると、ぼくが所有する枚数のゆうに数十倍のCDを持っていそうだった。そして、彼の内面としてはきっと大変だっただろうが、デモテープ作成ライフ3年余りでメジャーレーベルと契約に漕ぎ着けているのは、ある意味「順風満帆」にも思えた)

才能への畏敬(「天才」という彼のキャッチフレーズを、ぼくは額面通り「そうだ、そうだ」とするっと受け止めた。)

嫉妬心。(当時思った、「えっ、ぼくもこんなふうになりたかった!」)

97年のデビュー時、ぼく自身も音楽以外の道で「修行の身」だった。

おこがましくも、「同志」のような気持ちも、あったと思う。


発表されるシングル群を追い(買い)、生み出す音楽世界に衝撃を受け。
それはファーストアルバム『金字塔』でピークに達した。
めちゃめちゃ聴いていた。オナニーするのも忘れて。いや文字通り。
家ではCDで、あるいは外ではMDに入れて。

妹や友人には「声がちょっと……」と受け入れてもらえなかったが、そうしたことも逆にのめり込む要因になったのかも。

「俺だけが、彼の音楽の凄さをありのままにわかってる男だぜ」

と。

(そうは言っても、何もかにもパラレル、同時並行的に魅力を感じ楽しみたいぼくだったので、97年ごろは一義氏だけじゃなくミスチルも民生もサニーデイも、ビートルズもビーチ・ボーイズもオアシスもローゼズもスウェードも、ソフトロックというジャンルの神曲群も、分け隔てなく聴いていたのだけど。)

一義については、2nd『太陽』があまり感覚にフィットしなくて。

3nd『ERA』が出た99年当時は、ぼくは修行をやめて別業界で就職し、一人暮らしをしていた。
一人でふらっと行った冬の吉祥寺のCDショップで『ERA』を見かけ、でも手に取れなかった。

長い長い月日が流れ、結婚し最初の子が生まれる直前の時期、地元のTSUTAYAでレンタルで借りた。

どハマりした。通勤の電車でも、残業帰りの帰路の道でも、ジャンキーが如く聴いていた。発表当時から10年とか、それくらい経っている。

で、また『ERA』を聴かなくなって。

2015年の春ごろ、やはり10年以上遅れで「セブンスター」という曲に大ハマり。

で、またプッツリ聴かなくなって。

2025年初頭の今、バンド100s名義でのアルバム『世界のフラワーロード』に大ハマりしている。2009年のアルバム。やっぱりリアルタイムじゃない。


ライブには、2回行ったことがある。2015年ごろかな。セブンスターきっかけで、(ぼくの中で)復活した時期。
「まちなかオンリー」という、ギタリスト町田氏との企画ライブツアー。
さいたま新都心の方の小さなライブハウスと、鶯谷の東京キネマ倶楽部、だっただろうか。

……いや普通に聴けよリアルタイムで(イラ)

って思いますでしょ?ぼくも思う。不思議に。どうしてこうなんだ。

生来のあまのじゃく気質、ひねた性格ってのも、一つ要因なのかな。

けど、どちらかというと、こっちかなと思うのが……
言い方アレだけど、ぼくは中村一義を本当に崇拝しそうになった瞬間があるのだと思う。
自分が向き合っていることを放り出して、同じようにギブソンのアコギ(ジョン)、エピフォンのギター(ジョージ)、ヘフナーのベース(ポール)、中にタオルを詰めたドラム(リンゴ)を買い揃えたいと願った瞬間が。
そして、それを諦めた瞬間が。

だから、どこかで、のめり込めない。

離れていなきゃ、また引き込まれるって暗示をかけている。

でも、人生どこかでトチ狂ったように彼の音楽、彼の存在に吸引されていく。


子供たちは、韓国のアイドルグループに夢中だ。
ニコニコ眺めながら、でも、ぼくはどこかで思っている。
「ほんとうにのめり込んでいないから、安心して追えるのかもね」って。

この話に普遍性があるのか、「スキ」を押してくださるかどうかと関係なく「まさにこれ私にもある!完全に理解できる」と自分ごとに感じてくださる方が世界の中にどれくらいいるのか、ちょっとわからない。

リアタイで聴いてこなかったこと、10年ぐらいずれて作品を鑑賞しているスタイルなのは申し訳ないけど、ぼくは一義とすべてのクリエイターに言いたい。

「素晴らしい作品は、その時の売れ線とかそういうのとまったく関係なく、心地よくハマることができています。生み出して届けてくれて、ありがとう」と。

 
note始めた最初の頃からずっと書きたいと思っていて(↓記事中でも書いていた)

ついに中村一義について考えがまとまって、書くことができたー。

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山本蛇内
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