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セーラー服の掟。

およそ半世紀も前、私が通った中学校では、セーラー服に関して「掟」がありました。もちろん、生徒手帳には書かれていません。

一年生。セーラー服の上着の裾を上げてはいけない。スカートのひだを過度に整えてはいけない。上着の袖はまくってはいけない。カフスもきちんと留めておくこと。これには二年生が目を光らせていて、目を付けられると、取り囲まれて「生意気だ」と焼きを入れられる。「焼き」というのがどんななのか、知らんけど。

二年生。セーラー服の上着の裾を5センチほど上げても良い。カフスは一折しても良い。スカートの丈は、ウエストで一折分、短くしても良い。スカートのひだは整えても良い。

三年生。セーラー服の上着の裾をウエストまで上げても良い。袖は自由に折っても良い。スカートはウエストで二回折って短くしても良い。スカートのひだは完璧に整える。スカーフを自由にアレンジしても良い。三年生にもなって、スカートのひだが崩れているのは名折れである。

これが「掟」でした。

一年生のうちは、もっさりした状態でした。二年生で、やっとスッキリした感じの着こなしになります。3年生は行きすぎ感が漂いますが、それが格好良く見えたものでした。私などは、出来合いのセーラー服を買ってもらったため、袖丈が10センチほど足りず、一年生のうちは、袖の中で腕を折ってカフスを留めねばならず、苦労しました。手足がでかいだけではなく、腕も長かったのかも知れません。

この「掟」がどこから発生したのかはわかりません。私は病気の都合で6月になってから中学に通い始めたので、その辺の事情が分かりませんでした。
長い入院生活を終え、主治医の指導で、2カ月は学校を休むように言われていましたが、退院の翌日から通い始めました。そんなに長々と休んではいられないと考えていました。退院して帰宅した日に、幼なじみが家にやってきて、セーラー服の「掟」を教えてくれました。疑問はあったのですが、親が用意してくれたセーラー服を、そのまま着て通学すれば良いだけなので、気にしないことにしました。

3年生になると、毎晩、布団の下にスカートを、丁寧に仕込んで、寝押しをしていました。寝押しにしくじると、半泣きで、アイロンをかけていました。スカートのひだを整えておくために、椅子に座るときには細心の注意が必要でした。

今思うと、あれは何だったんだと思います。ほかの学校でもそんな「掟」が横行していたのでしょうかねぇ。セーラー服特有の「掟」だったのでしょうか。

そういえば、他県の高校に行った子が、ブレザーの袖口から、ブラウスが1㎝出るように、朝礼の時に校長から指導され、みんなでブーブー文句を言ったら「可愛い子たちの袖口を見ると、幸せを感じるのだ」と言われたそうで、みんなで校長を愛していたので許したとか、そんなことを言っていました。あ、そうか、それって女子校か!  いやはや。



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