どこで生まれ育ってもルーツからは切り離されない
私は日本人として外国で生活していたが、様々なタイプの日本人と交流があった。
ハーフでほぼ現地に染まっていて日本には興味がないタイプ
日本が合わなくて出て来た日本人で、日本の悪口ばかり言ってるタイプ
ハーフで両方にルーツを感じてはいるけれど、日本のものが好きで羨ましがっているタイプ
日本で育って来た日本人で自分の馴染み深い文化が恋しいタイプ
今回は後者2タイプの人たちの話をしよう。
BLM真っ盛りの頃「なんでアメリカ人なのに自分のルーツにそこまでこだわるの?」という疑問を見かけたのでちょっと解説してみたいと思う。
私の周囲での鉄板ネタ
私がまだ帰国する前、ドラマ「ごくせん」が全盛期だった。今やすっかり悪いニュースばかりになってしまったが、当時ジャニーズの若いタレント達が出ていて女子に人気を博していたのは間違いない。ただそれ以上に年齢的に「刺さる」ものがあったらしい。
私たちは中高生だった。中学生といえば、まあ反抗期真っ盛りで、男子もこぞってヤンキーにちょっと憧れたりもして、先生のことはドラマの真似をして影で「先公」と呼んだものだった。俗に言う中二病ってやつだ。
私の日本語補習校の後輩のハーフの弟君は「お父さんに日本の学ランを買ってもらった!」とよくみんなの集まりの時に着ていた。当時男装していた私はちょっと、いや、かなり羨ましかった。
数年前、JO1のMVが出た時「学ランヤンキーコンセプトは古いよ…」という意見をいくつか見たが、国際的に見ると日本の学ランを着たヤンキーは本当にロマンなので、古びるということはあまりないと思う。
明らかに異質な髪型の幼馴染の男子達
現地校に通っていた同年代男子はヴィジュアル系にどっぷりだった。the GazettEやアリス九號.が大流行りだった。男子は髪を今では珍しくない派手色に染め、髪を伸ばし、トップが高くなるように一生懸命セットしていた。
現地校に通うメンバーで同窓会のような集まりを催したことがある。そのヴィジュアル系にハマりにハマった男子がロシア人が経営する怪しげなバーのバックヤードを抑えてくれた。よく一緒に日系のべらぼうに高いカラオケに行く仲だったので、アリス九號.の曲の歌い方について彼と熱く語り合った覚えがある。
その中でも一番盛り上がった会話がこれだ:
「こないだ親父(研究職)がパソコンで音楽聴いてて。何聴いてんだろと思って見たらナイトメアだったわwwwww」
「ナイトメア!?やべえ!!!マジか!!!親父さんカッケぇ!!!wwwwww」
ナイトメアといえば当時アニメ「DEATH NOTE」の主題歌に漕ぎ着けていた頃だっただろうか。
ヨーロッパ人な私が想像するアメリカ人の気持ち
ここからする話はある程度想像の話なので、もし実際にアメリカ人の方で「いやいや、全然わかってないね」ということであればお気軽にコメントいただきたく存じます。
そもそもアメリカには人種間に格差が間違いなくあって(そこに構造的差別があるかという議論は一旦さておき)それぞれのコミュニティがあり、日本で縄文人と弥生人が一緒になって暮らしているような状態ではないということは抑えておきたい。
どこで暮らしていようとも特定の国の親を持つ限り、その文化から完全に切り離されることは基本的にない。そして大人になるにつれ自分のルーツを自覚するようになり、それについて知ったり、情報を得ようとする人たちが少なからずいる。その文化に誇りを感じるようになる人もいる。むしろアメリカになるとそのルーツの一部、例えば言語を喪失していることを悔やむ人もいる。自分の祖母と会話ひとつできない人もいるのだ。
2000年代以降のアメリカでのK-Popはアジアほど巨大なマーケットではないが、現地のアジア系の人々が持ち込んだ側面があるし、従来から存在していた日本オタクの延長ような人々が主な客層に含まれる。
同じ頃、日本でタピオカが流行するだいぶ前に「ボバティー」が世界で流行していたが、あれもアジア系の移民が店を経営していたのである。
多分アメリカの人は常に差別に直面してるので、「他の人に自分たちのことを知ってもらおう」という側面もあるだろう。しかしそれだけではなくて、「自分は〇〇系に生まれたことが悪いわけじゃない」と自分に言い聞かせてる部分がありそうだなと感じることはある。
私の幼馴染に日本クオーターがいるが、彼女が携帯電話にたくさんのストラップをつけていると、クラスの男子に「うわあ、典型的日本人。」と怪訝な顔をされたと愚痴っていたことがある。「でもいいじゃんね。日本人なんだから。余計なこと言うなよな」と彼女は続けた。
ストラップだらけの携帯電話は私たちの自己表現だったし、学ランは学校生活に反抗する心への憧れであり、ヴィジュアル系ヘアメイクは「外国系」という苦しい立場の中で生きる私たちの心の傷をコンシーラーで隠すものだった。
どこにいようと、ルーツへの繋がりは切れない。例えそれが人種の"melting pot"と呼ばれるアメリカであっても。
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