承認欲求モンスターの日常④【超ショートショートまとめ】
堀田絵里は上司から「体調が悪いなら」と早退を持ち掛けられた。
きっかけはその日何度もオフィスに響いていた堀田絵里の咳払いだった。
咳払いは風邪気味の堀田絵里が同僚から心配されるためのアピールであり、早退の提案はそれを見抜いた上司の遠回しの叱責だった。
咳払いは止まった。
〈堀田絵里のプロフィール〉
【承認欲求モンスターの性別ごとの特徴】
参考:
「私絶対、演技性パーソナリティ障害」
堀田絵里は同僚の側で馬鹿デカい独り言を言った。
それは聞きかじった病名を言って人の気を引こうとする堀田絵里の常套手段であり、本心から自分を病人だと思ったことはなかった。
しかし同僚は目を丸くして言った。
「あ、それは本当かも…」
「え」
「ファッション障害者」
洞窟に入ると、旅団は腰を屈めて進んだ。
重荷を背負う者にとって、その体勢は苛烈なものだった。
大半の者は見て見ぬふりをしたが、数人が重荷を背負う者を支えた。
すると空箱を背負って人を騙し、注目を集めたり楽をしたりしようとする者が現れた。
皆は本当に重荷を背負う者に手が回せなくなってしまった。
【承認欲求モンスターが該当する可能性のあるパーソナリティ障害】
自己愛性パーソナリティ障害:自己を過大評価し見た目、才能、努力などにおいて自己評価通りの評価を求める
演技性パーソナリティ障害:派手な外見・演技的行動で注目を集めたがる
参考:
堀田絵里は嘘松ツイートをネタにしたポストを投稿し、嘘松を皮肉った。
これは嘘松と同じ承認欲求による行動だった。
「承認欲求を承認欲求によって非難する」
眩いオーラを放つスターがいた。
群衆は押し潰しそうな勢いで詰めかけたが、スターは偽物だった。
チョウチンアンコウが餌をおびき出そうと疑似餌を光らせていたのだった。
その事実は他のスターが傍に立ち、醜悪な本体を照らしたことで明らかになった。
他のスターも疑似餌であるが。
【嘘松に関する情報まとめ】
□嘘松とは
反響を得ることを目的にSNSに投稿された真偽不明で嘘や誇張まじりの体験談・目撃談、またはその投稿者を指すインターネット・ミームである。
□語源
嘘松の元ネタは、2016年頃に「アニメの『おそ松さん』そっくりな人に出会った」という内容のX(当時Twitter)への投稿である。
嘘であると見抜いた5ちゃんねる(当時2ちゃんねる)のなんJ民が、投稿に登場する「おそ松さん」そっくりな人を指す言葉として嘘松を使い始めた。
やがて「おそ松さん」のキャラクターをアイコンにしているXアカウントに、嘘をついて注目を集めようとする共通性が見られたことで、そのようなアカウント・投稿を嘘松と総称するようになった。
□特徴
〈主な特徴〉
知り合いの話や盗み聞きなど、語り手が第三者である
登場人物による対話形式、自身の心の中のツッコミ
居合わせた人々が過剰に称賛する(拍手喝采、思わず握手した、一同感動など)
事後にオチがある(何かに目覚めた、爆笑しながら何かを殴るなど)
腐女子がイケメンの萌え言動に悶絶する
オタクがマニアックな趣味を肯定される
横暴な人物を正論で成敗する
家族の感動・爆笑エピソード
一文で事の顛末を書き切る
登場人物の分かりやすいキャラ化(ギャル、外国人など)
電車や学校、マックなどが舞台
心の中でツッコミ入れる
〈定番フレーズ〉
「聞いた話なんだけど」
「寝ぼけてたんだけど」
「外国人の友達が言ってたんだけど」
「~って話、する?(したっけ?)」
「それでは聞いてください」
「現場からは以上です」
「拍手喝采」
「お互い握手した」
「スタンディングオベーション」
「何かに目覚めそうになった」
「実はアレ、私です」
〈定番シチュエーション・登場人物〉
鋭い洞察を披露する公共交通機関で遭遇した幼児
颯爽と現れクレーマーを撃退するイケメン・美人・外国人
マックやスタバなどで遭遇した女子高生・サラリーマンの会話
日本を礼賛する外国人の友達、 日本を批判する外国人の友達
萌えミリ(美少女×軍事)に理解のある元帝国軍人
幼稚園・学校で子供がしたとされる巧妙な会話
キレると手が付けられなくなるという危険人物アピール(記憶がなくなる、笑いながらボコるなど)
若い頃の有名スポーツ選手に勝ったなど、過去の経歴を利用した自慢
□関連用語
本当松……嘘松の対義語。本当のことを発信するアカウント・その投稿。
盛松……嘘とはいえないまでも、盛っていると判断されるもの。
参考:
堀田絵里は「女優を脱ぐ」ことにした。
それまで彼女が入り込んでいた50代の某女優は、30歳と言われても遜色ない美貌を保っていた。
が、朝の情報番組にドラマの番宣で出演している女優の頬にくっきりと浮かび上がるほうれい線。
堀田絵里は冷めて背中のファスナーを下ろしてしまった。
「実在する有名人になった妄想をして承認欲求を満たす人」
スポットライトを浴びているトラを着ぐるみにして中に入り、トラに向けられる称賛、羨望、嫉妬を自分への評価と前向きに錯覚して楽しむが、スポットライトに照らされなくなった途端、トラを脱ぎスポットライトを浴びている他のトラを着ぐるみにする、本来の姿では見向きもされないキツネ。
参考:倫理用語集
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