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HSP(繊細さん)の日常③【超ショートショートまとめ】

「自慢話ばっかりするのやめてください。皆が嫌がってるので」

新入社員の発言に空気が凍りついた。

指摘された部長は、雄弁を振るっていた口を開けっぱなしで固まっている。

新入社員いわく、

「だって本人に言うのが一番手っ取り早いじゃないですか」
とのこと。

だけど、そうだけど……。

俺には新入社員がこう見えた。

架空の現代人、薄井一彦(うすい かずひこ)の日常を描いた超ショートショートのまとめです。
薄井一彦はHSP(繊細さん)です。人の言葉や光や音など、外部からの刺激に敏感な体質を持っています。
人付き合いにダメージを負いやすい薄井一彦ですが、体質に合わない営業職の仕事をしています。
なぜ薄井一彦が営業マンになったのか。詳しい経緯は〈薄井一彦のプロフィール〉にて。

冠鳥天狗より

〈薄井一彦のプロフィール〉


俺の頭の中にはいつメンがいて、誰かがお決まりの台詞を言うと、他のメンバーが次々とお決まりの台詞を発する。

例えば前の会社の上司が「逆に何ができるの?」と言うと、昔のバイト先の先輩が「このレベルか…」と言い、母親が「私の育て方が悪かったね」と言う。

いつメンは年々増えている。


人混みに入ると気疲れしてしまう。

(沢山の人に知覚されている)と思うだけで自意識が張りつめ、体が削られるような感覚になるのだ。

この前、信号に引っかかって多くの人に囲われたとき、ゲームで気を紛らわせようとスマホを開いた。

しかしニュースアプリを開き、読んでいるフリをしてしまった。

こちらを見ていないと分かってはいるが、チラチラと見てしまう周囲の人々。

小便器で用を足していると、後から上司が入ってきた。

「お疲れ~い」「お疲れ様…え、ちょ…」

上司は他にも空いているのに俺の隣に立った。

そして俺の股間を覗き込み、
「やっぱり太ってると小さいんだなぁ!」と笑った。

上司の小便が跳ねて俺の靴を濡らした。

次からは個室を使おう。

次の日、個室で用を足していると、上司が俺の股間について他の社員に話している声が聞こえた。小便器を使った方がマシかもしれない。

HSP(Highly Sensitive Person)とは 『生まれつき神経が細やかで感受性が強い人』を指します。
HSPには具体的に『DOES』と呼ばれる4つの特徴があります。
D(Depth of Processing):深く処理をする
O(Overstimulation):過剰に刺激を受けやすい
E(Emotional response and empathy):感情への反応が強く共感力が強い
S(Sensitivity to Subtleties):些細な刺激を察知する
参考:https://t.co/S6dP8QeyNM

HSPに関するメモ

苦手な客の家が近付くにつれ、薄井一彦は自分の神経が鋭敏になるのを実感していた。

人の機嫌を伺うための神経が、本人の意思とは無関係に準備運動をしているのだった。

ふと、通りがかった駐車場に停めてある車のドアの凹みが目に留まった。

薄井一彦はその持ち主の不手際に心を砕いた。


読んでいただきありがとうございました。
あなたの心に、ゴワゴワのタオルのような厚かましい優しさで人が触れませんように。

冠鳥天狗より

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